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1975 75Ja 核拡散防止条約の早期批准を求める三木武夫首相あて要望書(要旨)

1975年2月27日

 永続する真の世界平和を樹立するために、われわれはこれまでいくつかの訴えを行ってきた。とくに、昨年インドが地下核実験を行った時、核拡散の連鎖反応が激化する危険性を憂慮し、わが国のとるべき道に関し、われわれの考えを述べ、政府がすべての国に率先して努力するよう田中首相に要望した。一日も早く核拡散防止条約を批准することが平和に関するわが国の国際的立場を明確にする上で必要不可欠であることを主張した。核拡散防止条約再検討会議は目前に迫っている。核拡散防止条約のもつ問題点については、ほとんど解決済みであり、原子力委員会、原子力産業会議も早期批准を政府に要望している。

 ジュネーブ軍縮委員会の加入になみなみならぬ努力をはらった三木首相は、今こそ決断を下すときであると考える。そのことは日本の首相として核兵器に関する世界の流れを変えるための第四歩を踏み出すことであると思う。平和憲法を有し、非核三原則を掲げるわが国は、国際社会において核軍縮への主導的役割を果たすべきであるということをわれわれは信ずるものである。

(1975年2月27日付朝日新聞)

1974 72J 米国の地下核実験は極めて遺憾

1974年7月12日

 核兵器の被爆を現実に受けた国民として、われわれはいかなる国のいかなる核実験にも反対の立場をとりつづけており、これまで貴国の行った核実験に対しても、大気圏実験たると地下実験たるとを問わず、その都度抗議してきました。

 しかるに貴国は今回また地下実験を強行しました。われわれはこれを極めて遺憾とするものであります。先般行われました貴国とソ連の首脳会談において、一九七六年三月三十一日以降地下実験を一五〇キロトン以下に制限する合意に達したことは、われわれもそれなりに評価するものであります。しかしわれわれの主張するところは、現在何らの国際的取り決めもなく放置されている地下核実験に関し、大国小国を問わずそのほしいままな遂行が時期を失せず国際協定によって]切禁止されるべきことであり、さらにまた貴国とソ連とがみずからの核軍縮に向って積極的に進むことであります。最近インドおよびイギリスの地下実験、フランス、および中国の大気圏実験などによって顕在化しつつある核拡散のおそれは、貴国ならびにソ連の超二大国みずからが速かに、自粛の範を示すことによってこそ有効に防止されると、われわれは信ずるのであります。

1974年7月12日

世界平和アピール七人委員会
      上代  た の
      茅   誠 司
      大河内 一 男
      朝永  振一郎
      植村    環
      湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

アメリカ合衆国 大統領 リチャード・ミルハウス・ニクソン殿

1974 73J ソ連の地下核実験は極めて遺憾

1974年7月12日

 核兵器の被爆を現実に受けた国民として、われわれはいかなる国のいかなる核実験にも反対の立場をとりつづけており、これまで貴国の行った核実験に対しても、大気圏実験たると地下実験たるとを間わず、その都度抗議してきました。

 しかるに貴国は今回また地下実験を強行しました。われわれはこれを極めて遺憾とするものであります。先般行われました貴国とアメリカ合衆国との首脳会談において、一九七六年三月三十]日以降地下実験を一五〇キロトン以下に制限する合意に達したことは、われわれもそれなりに評価するものであります。しかしわれわれの主張するところは、現在何らの国際的取り決めもなく放置されている地下核実験に関し、大国小国を問わずそのほしいままな遂行が時期を失せず国際協定によって一切禁止されるべきことであり、さらにまた貴国とアメリカ合衆国とがみずからの核軍縮に向って積極的に進むことであります。最近インドおよびイギリスの地下実験、フランス、および中国の大気圏実験などによって顕在化しつつある核拡散のおそれは、貴国ならびにアメリカ合衆国の超二大国みずからが、速やかに自粛の範を示すことによってこそ有効に防止されると、われわれは信ずるのであります。

1974年7月12日

世界平和アピール七人委員会
      上代  た の
      茅   誠 司
      大河内 一 男
      朝永  振一郎
      植村    環
      湯川  秀 樹
事務局長  内山  尚 三

ソビエト社会主義共和国連邦 首相 アレクセイ・ニコラエビチ・コスイギン殿

1974 71J 英国の地下核実験に抗議する

1974年6月28日

 今回貴国は九年の沈静を破り、米国ネバダ州において地下核実験を強行しました。このことは最近相ついで行われたインド・フランスおよび中国の実験と伴い、あらためてわれわれを深く憂慮させるのであります。

 核兵器の被爆を現実に受けた国民として、われわれは真の平和は核競争によっては決してもたらされず、それは核兵器の全面的廃棄によってのみはじめて実現されること、したがって大国、小国を問わずいかなる国のいかなる核実験もその方向に逆行するものとして常に反対してきました。

 以上の理由によりわれわれはここに今回貴国の行った核実験に対し、強く抗議いたします。

1974年6月28日

世界平和アピール七人委員会
       上代  た の
       茅   誠 司
       大河内 一 男
       朝永  振一郎
       植村    環
       湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

連合王国首相 ハロルド・ウィルソン殿

1974 69J フランスの核実験に抗議する

1974年6月20日

 われわれは貴国が南太平洋で核実験を行おうとしたとき、その都度その中止を強く要望してきましたが、貴国は国際世論の反対にもかかわらずそれを強行してきました。

 今回貴国は再三国際世論を無視し、あえて実験を行いましたが、われわれはそれを極めて遺憾とするものであります。核兵器の被爆を現実に受けた国民として、われわれは真の平和は核競争によっては決してもたらされず、それは核兵器の全面的廃棄によってのみはじめて実現されること、したがって大国、小国を間わず、いかなる国のいかなる核実験もその方向に逆行するものとして反対せざるをえません。

 以上の理由によってわれわれはここに今回貴国の行った核実験に対しくり返し反対を表明し、それに強く抗議いたします。

1974年6月20日

世界平和アピール七人委員会
       上代  た の
       茅   誠 司
       大河内 一 男
       朝永  振一郎
       植村    環
       湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

フランス共和国大統領 バレリー・ジスカール・デスタン殿

1974 70J 中国の新たな核実験に抗議する

1974年6月20日

 核兵器の被爆を現実に受けた国民として、われわれは真の平和は核競争によっては決してもたらされず、それは核兵器の全面的廃棄によってのみはじめて実現されること、従って大国、小国を問わず、いかなる国のいかなる核実験もその方向に逆行するものとして反対してきました。

 しかるに貴国はこれまで数度の実験に加えて今回また新たな実験を行いました。このことはさきに行われたインドの実験、およびフランスのそれと伴い、あらためてわれわれを深く憂慮させるのであります。

 われわれはこれまで貴国の実験に対してその都度反対を表明してきましたが、今回のそれに対してもまた反対し抗議せざるを得ません。それとともに、貴国がかつて声明されたようにすべての核保有国が、最初に核兵器を使用しないと宣言すると同時に、最終的にはその全面的廃棄を実現するよう、貴国の積極的努力を重ねて要望いたします。

1974年6月20日

世界平和アピール七人委員会
      上代  た の
      茅   誠 司
      大河内 一 男
      朝永  振一郎
      植村    環
      湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

中華人民共和国首相 周恩来殿

1974 68J 政府は核拡散防止協定を批准せよ

1974年5月25日

 インドが第六の核保有国に加わったことは、極めて憂慮すべき事態であるとわれわれは考えます。現在、潜在的核保有力を持つ国が少なからず存在している状況のもとにおいて、米ソ両大国をはじめ多くの国ぐには、力の均衡による平和維持の政策を固持しています。しかしこの種の均衡は極めて微妙なものであって、一つの均衡の破れは、それが如何に小さなものであっても、脅威を感ずる他の国に大きな影響を与え、何らかの歯止めが存在しない限り、それは必然的にとどまるところのない核の拡散をもたらすものと思われます。

 このような核拡散の連鎖反応が、現在の危機を打開する真の解決をますます困難なものにすることは、すでに多くの人びとの指摘するところであります。

 ジュネーブ軍縮委員会で、わが国の西堀大使がインドの核実験を、核兵器の拡散を防止したいとする国際的努力と世界世論に反するものであるとして、遺憾の意を表したのも、以上のことを考慮されたからであろうと思います。

 われわれは、この憂慮すべき状況を打開するために、わが国のとるべきみちは、非核三原則をあくまで堅持し、一日も早く核拡散防止協定を批准することであると考えます。そしてさらに進んで、現在何らの国際的取りきめもなく放置されている地下核実験に関しては、大国小国を問わず、そのほしいままな遂行が国際協定によって一切禁止されるべきことを、また大国に対しては自らの核軍縮に向って積極的に取り組むべきことを、国連はじめあらゆる場、あらゆる機会に主張することにあると考えます。

 われわれは政府が、すべての国に率先して、このことの実現のために格段の努力をするようここに強く要望致します。

1974年5月25日

世界平和アピール七人委員会
      上代  た の
      茅   誠 司
      大河内 一 男
      朝永  振一郎
      植村    環
      湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

内閣総理大臣 田中角栄殿

1973 67J 田中角栄首相への要望書

1973年7月28日

 総理は明日アメリカを訪問し、ニクソン大統領と会談されようとしています。またそれに続いて秋には欧州諸国及びソ連の首脳との会談が行われるとのことであります。

 われわれは総理の健闘を期待するとともに、この機会に次のことを要望致したいと思います。何よりも先ずわが国が世界にまれな憲法を持っていることを想起したいのであります。このたびの会談においても、今や大きく成長したわが国の分担すべき国際的責任が論ぜられることと思いますが、アメリカから言われるまでもなく、わが国の憲法の精神からみても、わが国は世界の平和のため、また世界各国国民の幸福のため、積極的に努力し、特に開発途上国の生活向上、福祉増進のために、手をさしのべる責務があると考えます。

 といいますのは、わが国が軍備を拒否し、不戦の決意を憲法に明記したのは、単に戦争によって諸国民を不幸におとしいれない、という消極的な意味を持つだけでなく、例えば軍備を拒否することによって生じた大きな余力を私しすることなく、進んで世界各国、とくに開発途上国のために、無償の奉仕として提供するという、積極的な行為がそれに伴うべきだと、われわれは考えるからであります。なぜならば憲法にかかげられた「国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う」という念願は、この努力があってはじめて達せられると信ずるからであります。

 この前提にたって、とくにアメリカとの関連について言いますならば、わが国民の大きな関心事の一つである、わが国内の米軍基地、とくに沖縄に於ける基地の問題があります。これらの基地の存在が周辺住民の生活に与える好ましくない影響から、日米両国の親善関係が損なわれることをわれわれは憂慮せざるをえません。さらに日本国民の中に、これらの基地がベトナム戦争に用いられ、多くのベトナム人を泥沼のような戦争にまき込んだことを見て、基地の存在が果たしてアジアの平和のために役立つのであろうか、という疑問を持つものが少なからずおる、という事実も忘れることはできません。われわれは、この様な国民感情がアメリカによって正当に理解されるよう、総理のご努力をお願いしたいのであります。

 ところで以上のことと関連して、かつて大平外相が卒直に言われたように、アメリカのわが国に対する理解が十分でないという問題があります。しかし、この点については、わが国がそのためにこれまでどんな努力をしたかということを考えるとき、アメリカのみを責めることはできないと思います。

 言うまでもなく、異なる文化や伝統を持ち、したがって異なる価値観をもつ国々が、互いに理解し合うということは、一朝一夕にできるものではありません。政治や経済上の問題についての相互理解も、相互の国の価値観のちがいを理解することなしに達することはできないと考えます。そういう理由で、多くの国々は自国の文化について、他の国の正しい理解を得るために大きな努力をしております。

 わが国は、貿易のためには諸外国に宣伝に努めてきましたが、文化にかんする正しい理解を得ることについては、努力が足らなかったように思われます。総理はこの問題について十分考慮されていると聞いておりますが、なお一層のご努力を要望致したいと思います。

 重ねて申しますが、世界にまれな憲法をもつわが国は、国際社会において独特の立場で寄与すべきであるということを、われわれは信ずるものであります。

1973年7月28日

世界平和アピール七人委員会
       上代  た の
       茅   誠 司
       大河内 一 男
       朝永  振一郎
       植村    環
       湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

内閣総理大臣 田中角栄殿

1973 66J 中国の核実験に強く抗議する

1973年6月28日

 いかなる国、いかなる形のものであろうと、核実験に対し、常に反対してきた私どもは、貴国がこのたびあえてした大気圏内の核実験に強く抗議致します。

 言うまでもなく、大気圏内の核実験は、世界平和を脅すばかりでなく、地球環境の汚染に拍車をかけるものであります。

 さらにまたフランスの核実験予定に対し、国際世論は激しく反対しており、国際司法裁判所も中止を要請しています。

 貴国のいうように、すべての核保有国がいかなる時、いかなる状況のもとでも、最初に核兵器を使用しないと宣言すると同時に、最終的には核兵器の完全禁止と全而的廃棄を実現するよう、要望致します。

1973年6月28日

世界平和アピール七人委員会

中華人民共和国首相 周恩来殿