1972 64J 北爆再開に強く反対する

1972年12月20日

 パリ会談が妥結し、インドシナ半島全体にわたり戦闘が停止されることは、全世界の人々の強い念願でありました。

 しかるに貴国は、北ベトナムをして速かに停戦協定を受諾させるために、北爆を再開致しました。力の政策が問題打開の有効な手段ではありえないと考えるわれわれは、これに対し強く反対致します。

 そもそもジュネーブ会談以来の経過をみてもわかるように、力の行使は常に双方の不信を強め、戦争をエスカレートするだけでありました。

 それによって戦争の悲惨さは、言語に絶するものにまでなってきたのであります。現在の膠着状態を打開するために再び力を用いることは、解決をうながすことにはならず、却ってそれをおくらせ、事態をますます悪化させると思います。

 そしてさらに最悪の場合には、収拾できない泥沼状態に陥るであろうことを、深く憂慮せざるをえません。

 われわれは、かねてから力の政策にもとづく北爆は、ベトナム戦争を解決することにはならないことを主張してきましたが、ここにあらためて訴えざるをえません。

 貴国が即時北爆を停止し、十月二十六日発表案の線にたちもどり、ベトナム和平を実現すべく、理性と人道の立場に立って、話し合いを再開されることを要望致します。

1972年12月20日

世界平和アピール七人委員会
      上代 た の
      茅誠   司
      朝永 誠一郎
      植村   環
      湯川 秀 樹
事務局長 内山 尚 三

アメリカ合衆国大統領 リチャード・ミルハウス・ニクソン殿