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2026 172J いまこそ核廃絶と非戦への意思を明確にせよ
東京都西東京市にて 2026年8月25日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子 藤原辰史
高市内閣は4月21日に防衛装備移転三原則の運用指針を見直し、武器輸出の目的を限定してきた条件を撤廃する閣議決定をした。戦後、日本が「平和国家」の理念のもと守ってきた殺傷能力のある武器輸出の制限を取払い、全面的に解禁したことになる。一方で、日本政府はアメリカと同盟関係にあることを理由に、核のない世界は遠い未来の抽象的な理想に留め、アメリカの核軍備と核抑止の考えを追認してはばからない。さらに度重なる核実験の被害を訴えてきた国々の声に対し沈黙したままであり、「唯一の戦争被爆国」も「核保有国と非保有国の橋渡し役」もまったくの看板倒れである。
私たち世界平和アピール七人委員会は、このような高市政権の施政方針に同意できず、とくに核抑止の考え方に賛同することはできない。かつて広島と長崎に原爆が投下されて以降、戦争において核が一度も使用されなかったというが、それは核抑止が有効であることの証明にはならない。現に、その間も多くの戦争が行われ、核保有国の核が平和のために貢献したとは言えない。ここ数年のウクライナ戦争やガザ攻撃・イラン攻撃はそのことを如実に示している。他方、核実験が多くの犠牲者を生んできたという事実も忘れてはならない。
日本国憲法の前文と第九条にあるとおり、第二次世界大戦後の日本は非戦を国是としてきた。ところが、武器輸出を解禁することによって海外の戦争へ関与し、核持ち込みを容認することで核抑止論に積極的に加担し、自ら戦火に手を貸し、ひいては加わる可能性を大きく広げることになる。
世界の現状では、核保有国が必要と判断すれば核は使われ得る状況であり、政治家がそれを考慮に入れて行動していることも確かである。であれば結局のところ、核抑止論は核の実戦使用の可能性を前提とするもので非人道的と言うべきである。そして、ひとたび核が使われるなら、確実に地獄絵図になる。このことを日本は、戦争における唯一の被爆国として実際に経験したのであり、そうであればこそ何をおいても私たちは非戦の立場を確認し、世界に向かって核廃絶を訴える義務があるのではないか。
世界各地でいつ核兵器が使われてもおかしくない状況が続く今、日本は核抑止によりかかる世界に向かって核兵器廃絶を訴えなければならない。当面の危険性を除去するため本年2月に失効した新START(新戦略兵器削減条約)に代わる核兵器管理の枠組みの提案を各国と協力して積極的に呼びかけるとともに、核兵器廃絶に進むため核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を果たすべきである。
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アピール「地下資源に過度に依存する文明を超えて」を発表
2026 171J 地下資源に過度に依存する文明を超えて
2026年6月25日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子 藤原辰史
2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃は、ホルムズ海峡の封鎖を招き、世界的なエネルギー危機を生じさせた。ようやく停戦合意が成立したが、今後、化石燃料の安定供給が長期にわたって実現すると確信をもてる事態ではない。世界的には、エネルギー供給の構造が大きく変化しているとの認識が強まっている。このエネルギー危機を、深刻な問題として受け止め、地下資源に強く依存した現在の大量消費・大量廃棄社会のあり方を根源から見直す大きなチャンスが、いま私たちの目の前にある。
たとえば今回、ナフサが不足し始めるやいなや、直ちにインク・医薬品・プラスティックなど、ナフサを原料とする様々な必需品が不足し始めた。また、スマートフォンや電気自動車などハイテク産業で用いられるレアアースの供給不足が問題となっているが、その採掘・精製によって生じる小さくはない環境汚染が懸念されていることを忘れるべきではない。このように、現代文明は地下資源に依拠しており、世界平和が崩れて円滑な結びつきが損なわれると、すぐに暮らしが成り立たなくなるという脆弱性をはらんでいる。
ところがいま、国際法を無視した侵略、無辜の民の虐殺、そして核装備の拡大が、当然のごとく進められている。これらは、国際連合憲章でも、日本国憲法でも確認されている基本的人権の尊重を根本から否定するものだ。いうまでもなく戦争は、最大の環境破壊であるとともに、最大の資源浪費である。
気候変動も含めて現在の地球が陥っている危機は、大量の消費にのめり込み、軍需産業を後押しし、戦争という破壊的で人間の尊厳を踏みにじる営みから抜けられない先進経済諸国の社会の実相を表している。危機の時代にあればこそ、一切の戦争を避け、再生可能エネルギーにシフトさせる歩みを力強く進めたい。
平和への道と地下資源文明からの脱却とは表裏一体である。戦後日本は、軍事に傾斜する科学や産業のあり方を是としなかった歴史と同時に、世界でも最も悲惨な公害を経験した歴史をもつ。この日本からこそ、地下資源と戦争に依存する文明からの脱却を世界へ呼びかけたい。
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アピール「米国とイスラエルのイラン攻撃は許容できない ―世界史的な危機を克服するためにー」を発表
2026 170J 米国とイスラエルのイラン攻撃は許容できない ―世界史的な危機を克服するためにー
2026年3月16日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子
最高指導者アリ・ハメネイ師の虐殺を含む、2月28日に開始されたイスラエルと米国によるイラン攻撃の拡大が続き、収束のめどがつかない。攻撃の目的も次々に大きく揺らいでいてあいまいであり、道理を欠いている。米国とイスラエルはイラン攻撃の非を認め、直ちに停止するとともに、多数の死傷者をもたらし人道に背くイスラエルのガザ攻撃の過ちをも認め、この地域での対外攻撃をやめ、イスラエルは占領地から撤退すべきである。
第二次世界大戦終了後、早くも1945年10月24日に国際連合が発足して、国際的なすべての対立・紛争は戦争に訴えることなく対話と交渉と協力によって解決することを取り決めた。それと同時に、力によって他国を支配する植民地主義を克服し、自国の運命は自国で決める各国の主権への不干渉や領土保全を尊重する国連憲章の下で世界は動き始めた。以来、国連憲章違反が起これば、さまざまな紆余曲折はあっても、国連の仲介の下で戦争を抑止し暴力が支配しない世界へ向かおうという意思はかろうじて共有されてきた。
しかし、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの一方的侵攻以来、剥き出しの力に頼る論理があたかも正論であるかのように横行するようになってきている。イスラエルのガザ攻撃、米国のベネズエラ攻撃と続き、この度のイラン攻撃である。世界一の軍事力と経済力を背景にした米国がその威を借りるイスラエルとともに、また西半球では単独で、次々と犯す暴挙に対し、ロシアのウクライナ侵略を非難した欧州諸国はそれを強く非難できず、国連を中心とした世界世論は戦火の拡大を抑えることができずにいる。世界の歴史は一気に2つの世界大戦に先立つ帝国主義の時代に戻ってしまった感がある。
このまま暴力支配に地球が覆われていくなら、植民地主義と世界大戦の時代を超えてようやく確認し合うかに見えた人類的な平和への共同意思が失われてしまう。今や、多様性を認め、互いの人権を尊重し合い、平和を尊ぶ文明が破壊され、人類の未来が危うくなる危機的状況である。私たちは、暴力で支配されてしまう地球で人は安らかに生きていくことはできない。国際法を無視して他国に攻撃を仕掛けているロシアやイスラエルや米国に対して、また、武力による他国や他地域への攻撃・支配に反対し、すべての関係国が国際法を遵守して対話と交渉という平和的な手段による解決を図ることを求めたい。
日本政府は、平和主義と人権尊重を掲げる憲法に基づき、力の支配に屈しようとする世界の動向に異議を唱え、平和を求める役割を果たすべきである。現在の日本の政府と与党にはその自覚がほとんど見えず、米国への従属を強める姿勢では、国際的な評価は低下するばかりである。日本が目指すべきは世界史的視野に立った平和のための政治であり、そのことを具体的な行動で示していくべきである。
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アピール「米国のトランプ大統領に抗議する」を発表
2026 169J 米国のトランプ大統領に抗議する
東京都西東京市にて 2026年1月4日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子
私たち世界平和アピール七人委員会は、米国による昨日のベネズエラ首都攻撃と大統領拘束、米国への連行、米国によるベネズエラ「運営」との方針に強く抗議する。
これは公海上における無抵抗の民間人の殺害に続き、国際法と国連憲章を完全に無視し、自国の欲望を求めるために、正当な理由なく、他国の政府を力で排除する暴挙である。これは悪しき前例になり戦争を引き起こす途であって、許すことはできない。
米国大統領は直ちに原状に復帰させ、ベネズエラへの干渉を止めなければならない。
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アピール「核兵器依存・軍備増強をやめ、対話重視に基づく安全保障を」を発表
2025 168J 核兵器依存・軍備増強をやめ、対話重視に基づく安全保障を
2025年12月29日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子
日本では核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」との非核3原則が1967年に佐藤栄作首相によって表明され、1971年から度重なる国会決議によって、この原則が国是とされてきた。しかるに、核兵器持ち込み、核兵器共有、独自の核兵器保有など核兵器への依存を強める考えを唱える複数の政治家があらわれるに至っている。その中で、高市早苗首相に対し安全保障政策に意見具申をする立場の首相官邸幹部が、「日本は核兵器を保有すべきだ」と報道陣に対して12月18日に述べたと報じられた。
この発言に対して厳しい抗議の声が続き、国外からも批判が出されている。国外からは、日本が原子力発電所の使用済核燃料から再処理によって取り出したプルトニウムを40トン以上所持していることに対して、核兵器保有への意図があるのではないかとかねてから危惧が持たれてきた。今回の発言は、日本政府が核兵器禁止条約に距離を取り続けていることと併せて、国際的な危惧を著しく強めるものになる。それにもかかわらず、この報道を当事者は取り消しておらず、首相も沈黙を続けている。沈黙は否定しないという意思を表すものととらえられている。
日本では、広島・長崎への原爆による残虐な被害、ビキニ核実験による広範囲な被ばく被害を経験し、今後世界のどこであっても絶対に核兵器が使われてはいけないという決意が共有されてきた。世界を見れば、核兵器禁止条約が発効し、署名国が95、批准国が74に達している。しかし一方で、核兵器保有国と核の傘といわれる拡大抑止政策に依存する日本を含む国々もある。ここでよく考えてみれば、「核兵器は安全を保障するのであって、いかなる場合であっても使用することがない」というのであれば、核兵器を保有する意味は完全になくなるのである。したがって、核兵器に依存する政策は核兵器使用を認めることなのである。これは絶対に許すことはできない。核兵器禁止条約の内容は、先入観を持たずに読めば、日本の大多数の国民が希求してきた考えと完全に一致している。
日本は、核依存からの脱却を目指すという姿勢を後退させるべきではない。非核三原則は、留保なく明確に守らなくてはならない。核兵器禁止条約への参加を目指すべきである。
戦後80年といわれた1年が終わろうとしている2025年は、広島・長崎への原爆投下と国連発足から80年、核兵器と戦争の廃絶を訴えたラッセル-アインシュタイン宣言や同様の趣旨でノーベル賞受賞者の会が翌週発表したマイナウ宣言、そして国連の抜本的改革を提案した私たちの世界平和アピール七人委員会発足から70年の年であった。
残念なことに、地球上では現在も非戦闘員にまで甚大な非人道的被害を与える戦火がなくなっていない。核兵器禁止条約が発効したにもかかわらず、ほかの大量破壊兵器禁止と異なり核兵器は公然と保有されている。すでに述べたように、核兵器を抑止力として安全を保障しようという国も存在している。対人地雷など戦後の長期間にわたり被害を与え続ける非人道兵器も、禁止条約が存在するにもかかわらず、なくなっていない。1977年のジュネーブ諸条約第1追加議定書(56条)によって、ダム、堤防、原子力発電所のように攻撃の対象にすることが禁止されている施設の戦場化も行われている。力の行使と威嚇によって世界に君臨しようとする大国が、地球に暗い影を落としている状況が続いている。
戦後に発足した国連の理念を提示した国連憲章は、20世紀の二つの世界大戦を踏まえて、「言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」、「武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保」するとその前文に記している。「国際の平和及び安全を確保すること」、「国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること」が国連の目的であり、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない」とも述べている。こうした国連憲章の文言は、戦後80年を経た現在も色褪せておらず、人類社会が共有すべき平和の理念を指し示している。
そのうえで日本国憲法を見れば、その理念は国連憲章に一致するのみならず、さらに戦争の放棄、戦力不保持、交戦権を認めないことまでも宣言している。この理念は将来にわたって変更してはならないものである。ところが昨今の日本では、安全保障について安倍政権以来、専守防衛政策を放棄し、日本国憲法から逸脱した反撃能力・敵基地攻撃能力の獲得を掲げ、軍備拡充を政府の政策として執っている。これは国力を疲弊させ、周辺国に軍備増強の口実を与え、武力による威嚇を引き起こすことに繋がるものであり、日本の安全を強化することになっていない。意見が異なる相手であれば、なおさら対話と交流を深め信頼醸成を目指すべきである。
少子高齢化、財政赤字であって、食料・エネルギー自給率の低い日本が軍備強化に走れば、国力が低下することは自明である。脅威を与えなければ、脅威を受けることも減少し、なくなる方向に向かうことは歴史の教訓である。戦後90年に向かう第一歩の新年を迎えるにあたり、国連憲章と日本国憲法に記された平和と、戦後に積み重ねられてきた核兵器に依存しない世界への意思を持続させ強化させることを訴えたい。
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