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2024 159J 腐敗政治と力依存の政策からの脱却を

2024年1月16日
アピール WP7 No.159J
2024年1月16日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進 酒井啓子

自民党の派閥が政治資金パーティーの収入の一部を裏金化したとして、有力派閥の幹部議員の多くが政治資金規正法違反容疑で捜査を受け、逮捕される議員も出た。元首相の安倍晋三氏が長を務める派閥だったが、その安倍政権の下で、森友学園への格安の国有地売却や内閣総理大臣主催の桜を見る会における地元有権者の優遇など幾つもの疑いがかけられていたことが思い起こされる。違法行為が疑われても権力の座についていれば、処罰を免れることができると考える人も多かった。

2012年以来の第2次安倍政権だが、立法機関である国会を軽視・無視するばかりか、その後半以後、河井克行元法相夫妻が公職選挙法違反に問われて法相辞任さらに国会議員を失職あるいは辞職に追い込まれるなど、与党政治家の腐敗摘発が後をたたない。また、旧統一教会と自民党との癒着やもたれ合いも注目を集め、あからさまな利用し合いの関係が露わになってきた。宗教を隠れ蓑に違法な活動を行ったり、信徒から途方もない金額の献金をむさぼり取るなどしてきた教団である。その教団が、政治家の政治活動や選挙運動で献身的な奉仕活動を行う見返りにそのお墨付きを得て、身を守り勢力を拡張することができたのだった。

このような腐敗が進む政権の下で、特定秘密保護法が制定され、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定が行われ、急速な軍備増強が行われ、沖縄県の軍事基地の増強や殺傷武器の輸出の容認が進められたりしてきている。民主主義政治への信頼を掘り崩すような行為が進む事態と、力で異論を抑え込んだり、対外的な力の誇示に向かったりする政策の推進は無縁ではない。権力をもったものがほしいままに支配力を行使することを是とし、多様な立場の尊重と信頼関係に基づく合意形成を軽んじる姿勢が背後にある。

このような力任せの政治は東アジアでは古来、覇道とよばれてきたものである。現代世界では、これは日本だけで目立っているわけではない。核兵器の使用をほのめかし他国を侵略するプーチン大統領のロシア、多数の子どもや女性がいる人口密集地域を攻撃するイスラエル、イスラエルの市民虐殺を支持する米国などにも同様の傾向が見られる。ソ連時代の独裁体制から脱したはずのロシアが新たな力の支配を代表する国になり、中東地域で民主主義体制を代表すると見られていたイスラエルや、世界の民主主義を牽引する国と見られてきた米国で、力任せの支配をよしとする姿勢が顕著である。プーチン、ネタニヤフ、トランプのような政治指導者は罪に問われる人物であり、その地位にふさわしくないと考える人々が国の内外にきわめて多いのに、その地位から退けることができない。

これは市場経済による競争が社会の活力を高めるとして、格差是正や社会的公正を目指す政治を軽視する新自由主義と、それに対応する資本主義の負の側面の肥大化の弊害と関わりがある。市場経済の勝者がほしいままに富を蓄積し権力を行使するのをよしとする体制の下で、選挙による民意の反映というシステムが、力の支配を抑制する方向でではなく、排外主義と結びつく力の支配に屈するような方向で働くような事態が世界各国で見られる。

民主主義が適切に機能していないということだが、このような現代政治の危機を脱していくには何が必要なのだろうか。力任せの政治を許さない世論を形成し、選挙と立憲政治・議会政治に反映させていくことが求められるが、これが現在容易でない。だが、国内でも国際社会でもそうした変化を進めることが必要であり、国連では人権を重視し、力任せの大国に対する批判の国際世論を反映させる傾向が強まっている。国連重視を掲げてきた日本はこの線に沿って外交を進めていくのでなければならない。国内では、速やかに腐敗した政治手法をなくしていくことが不可欠である。これは政治への信頼を取り戻すための第一歩になる。

グローバル化が進む現代世界では、国際政治と国内政治とが影響し合う傾向が増している。平和を目指す政治は、また信頼を尊ぶ政治でもある。

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2023 158J イスラエルはガザへの攻撃を直ちに中止すべきである

2023年11月4日
アピール WP7 No.158J
2023年11月4日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進 酒井啓子

私たちは、イスラエルの非人道的な完全封鎖の下でパレスチナ人が住むガザに対しておこなわれているイスラエルの連日の空爆と地上からの攻撃によって、多数のパレスチナ人が殺され傷つけられていることに、深い悲しみとともに強い憤りを覚えている。イスラエルは、ハマスのテロ行為に対する自衛だと主張しているが、多数の子どもたちを含むパレスチナの人々を無差別に殺し傷つける行動を正当化することはできない。

元来、パレスチナの地には、宗教や出自が異なる多様な民族が共存していた。1948年にこの地にイスラエルが建国して以来、多くのパレスチナの人々が生活してきた土地から追い出され、基本的人権を無視された難民となった状態が75年も続いてきたことを忘れるべきではない。ガザ地区に生きるパレスチナ人たちは、狭い地域に閉じ込められ、厳しい検問や監視のもとに置かれ、度重なる攻撃によって苦しんできた。ガザが「天井のない監獄」と言われる状況にあることは、世界に広く知られている事実である。

今回、ガザの隔壁を越えて行われたハマスの攻撃に際しての民間人殺害や人質作戦は決して許されるものではない。しかし、その報復だというイスラエルのガザへの総攻撃が、子どもたちを含む多数のパレスチナ人に死を強要していることは明らかであり、人間として、決して正視できないジェノサイドに等しい。パレスチナ人もイスラエル人と同じ人間であり、パレスチナ人を非人間のように扱うことは許されない。

暴力に対して暴力をという報復の連鎖では、何らの解決にならないということは、人類の歴史を見れば明らかである。パレスチナ人にも、あらゆる迫害・殺戮から解放され、安全に暮らす人間としての権利がある。

私たちは、10月26日の国連緊急特別総会で採択された決議「民間人の保護と法的・人道的義務の遵守」を支持する。イスラエルとパレスチナ双方の当事者に、人類社会の多様性を認め、真の「人間同士」として、その尊厳を尊重し合い、武力に頼らないで相手と対話をすることを求める。それは当該地域の長期的な平和のために、大きな一歩を踏み出すことになる。

私たちはまた、日本政府を含む世界各国の政府がそのために積極的な支援を行い、貢献することを心から望んでいる。とりわけ平和憲法をもち、中東地域諸国と長年、友好関係を培ってきた日本政府は、多くの生命が失われ、多くの人々が日々苦しむ現在の当該地域の事態から目をそらすことなく、人道的な観点を尊びつつ平和のための支援に最善の努力を行うことを求めたい。

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2023 157J 汚染水の海洋放出を強行してはならない

2023年4月6日

このアピールには英文版があります。
英文アピールはこちら

アピール WP7 No.157J
2023年4月6日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進 酒井啓子

東京電力福島第一原子力発電所(以下原発)の炉心崩壊事故によって核燃料が剥き出しとなり、今でも、そして今後も長期間にわたり絶えず供給しなければならない冷却水に加えて、大量に地下水および雨水が原子炉建屋に流入し続けている。その結果多量の放射能を含んだ汚染水が絶えず原発の敷地から発生し、現在までに約130万トン分が1000基以上のタンクに回収されている。
東京電力は敷地内に保存するのは限界と訴え、それを受けて政府は、今年の春か夏にも沖合1㎞の海洋に海底トンネルを通じて放出を開始する計画を1月13日に正式に閣議決定した。政府と東京電力は2015年に「関係者の理解なしには、(汚染水の)いかなる処分もしない」と文書で約束註1していて、いまだ理解は得られていないことは、無視されている。このような状況の下で現在海洋放出の工事が急ピッチで進められている。この計画は、科学的・社会的なさまざまな問題を抱え、国際政治にも悪影響を及ぼすと懸念されている。
科学的見地から言えば、セシウムやストロンチウムなど62種類の放射性物質をアルプス註2で基準以下になるまで取り除くとしているが、これらがなくなるわけでなく、化学的に通常の水素と区別できないトリチウム(三重水素)は、放射性元素でありながら除去できない。そのためトリチウムを含んだ水を海水で薄めて海洋に投棄するという。トリチウムは通常の原発の運転時にも環境に放出されていて、トリチウムから放出される放射能(ベータ線)はエネルギーが低いから環境に放出されても安全であり、水や食料にも含まれていて日常的に接していても問題が起こっていない、と言われる。しかし、事故炉の剝き出しの核燃料に触れた処理水と通常運転時の排水を、同様に考えることはできない。そして水とともに体内に入ったトリチウムからのベータ線はDNAを破損させる以上のエネルギーを持っているので、内部被ばくの被害を引き起こす可能性がある。原発周辺地域で子どもの白血病の発生率が高いとの疫学調査結果もある註3。要するに、トリチウムのみならず低線量の放射線被ばく問題には科学的決着がついていない。これは、明確な回答を与えきれない現在の科学の限界を示している。
このような場合に私たちが採るべき方策は、科学以外の判断原則に準拠して当面の行動を決めることである。ここで私たちが主張したいのは「安全性優先原則(予防原則)」である。これは生じる問題について危険性が否定できなければ、安全のための措置を最優先に講ずる、という原則である。この原則に照らせば、トリチウムについて危険性があるとの指摘があるのだから、安易に環境に放出してはならないことになる。
さらに汚染水の海洋放出は、本格操業への希望をつないできた福島県をはじめ広範囲の漁業者たちに今後長年に及ぶ打撃を与える可能性が高いだけでなく、国際的な信義の問題をも引き起こす。既に、韓国や中国など近隣諸国からの反対の意思表示がなされている。海の汚染は局地に留まることなく、拡散して漁場に悪影響を及ぼす可能性があり、海流に沿った海域を生活の場とし長く核汚染に抗ってきた太平洋諸島の人びとも、全当事者が安全だと確認するまでは放出しないことを求めている。
以上のように科学的・社会的・国際的にさまざまな問題点を孕む汚染水の海洋への放出計画を強行してはならない。トリチウムの半減期は12.32年だから、保管を続ければ、タンクの放射能は時間と共に確実に低下する。必要ならさらに場所を確保すればよい。その間に、汚染水の発生量を出来るだけ減少させ、その一方で固化させるなどの研究開発を一層強化することも考慮に入れるべきである。放射能とのやむを得ない取り組みは、拙速を避け時間をかける以外ない。

註1 政府と東京電力による、関係者の理解なしでは汚染水のいかなる処理は行わないとの文書による約束
(1) 2015年8月24日 経済産業大臣臨時代理国務大臣高市早苗から福島県漁業協同組合連合会野﨑哲代表理事会長あて文書「東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等排出に関する要望書について」の説明 高市早苗のコラム(2021年4月14日)
https://www.sanae.gr.jp/column_detail1307.html
(2) 2015年8月28日 東京電力株式会社代表執行役社長広瀬直己から全国漁業協同組合連合会(全漁連)代表理事会長岸宏あて文書「東京電力福島第一原子力発電所のサブドレン及び地下水ドレンの運用等に関する申入れに対する回答について」
東京電力福島第一原子力発電所のサブドレン及び地下水ドレンの運用等に関する申し入れに対する回答について (tepco.co.jp)
(3) 2022年4月5日 JF全漁連はALPS処理水の取り扱いについて、岸田首相、萩生田経産大臣の求めに応じて面談(萩生田大臣がJR全漁連を訪ねて文書回答を手渡し、岸会長は、回答は精査が必要と述べ、その後萩生田大臣と共に首相官邸へ)
https://www.zengyoren.or.jp/news/press_20220405_02/
(4) 2023年3月13日 福島県内堀雅雄知事 記者会見
知事記者会見 令和5年3月13日(月) – 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)

註2 アルプスは、多核種除去設備の英語名であるAdvanced Liquid Processing System を縮めた名称ALPS。放射能を含む汚染水がこの設備を通ると、放射性物質の種類に応じて、化学的変化を起こして沈殿したり、吸着剤によってろ過されたりして、放射能が減少する。ただしトリチウムや炭素14などは、この装置では除去できない。

註3 疫学調査(えきがくちょうさ):集団を対象にして、健康障害の頻度、障害の状態、影響する因子などを統計的に調査する学問。

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2022 156J 軍事力拡大でなく外交力こそ真の安全保障である ―防衛政策の根本的転換は認められないー

2022年12月9日
アピール WP7 No.156J
2022年12月9日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

岸田文雄首相は、安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画)の改定に向けて、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を認め、2027年度の防衛予算をGDPの2%(約11兆円)とすること、そのため2023~27年度の防衛費を過去最高であった2019~23年度実績の27兆4700億円の1.5倍以上の総額約43兆円とすることを閣議決定する予定で、防衛相や財務相に指示した。
これらは、周辺国の軍備増強への対処の名のもとに、これまで国是としてきた専守防衛方針を大転換させて、攻撃兵器を装備するという軍事力拡大路線である。攻撃をうけての反撃にとどまらず、相手が攻撃準備に着手したと判断すれば、その基地も司令部も攻撃するというもので、周辺国を刺激して軍備拡大を誘発することは間違いない。これにより際限のない軍備拡充の悪循環を招く恐れがあり、戦争のリスクを増大させるものである。
現在の日本は、国家財政の巨額の赤字が累積し、少子高齢化のひずみが広がっている。エネルギー・食料の自給率も低く、国土も狭隘である。このような国が、軍事力を強化することによって安全を求め、いざとなれば戦争に訴えるという途は、国民の安全を真に保障することにはならない。
かつての日本は、国家のためとして国民と諸外国に大きな犠牲を強いてきた。敗戦を経ての反省の上に立って、日本国憲法のもとで平和主義を掲げ、対立や齟齬があった場合には外交交渉で粘り強く解決を図る路線を歩んできた。その結果として、諸外国から戦争をしない国と見られてきたのである。
今回の防衛政策の根本的転換を推進するにおいて、これが国民に対して安全・安心を強化する方策だという丁寧な説明は一切なく、諸外国の理解を得る努力をした気配もない。
私たち世界平和アピール七人委員会は、いかなる状況にあろうとも、日本として外交力によって解決を図る国であり続けることを強く求めたい。

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