インドが第六の核保有国に加わったことは、極めて憂慮すべき事態であるとわれわれは考えます。現在、潜在的核保有力を持つ国が少なからず存在している状況のもとにおいて、米ソ両大国をはじめ多くの国ぐには、力の均衡による平和維持の政策を固持しています。しかしこの種の均衡は極めて微妙なものであって、一つの均衡の破れは、それが如何に小さなものであっても、脅威を感ずる他の国に大きな影響を与え、何らかの歯止めが存在しない限り、それは必然的にとどまるところのない核の拡散をもたらすものと思われます。
このような核拡散の連鎖反応が、現在の危機を打開する真の解決をますます困難なものにすることは、すでに多くの人びとの指摘するところであります。
ジュネーブ軍縮委員会で、わが国の西堀大使がインドの核実験を、核兵器の拡散を防止したいとする国際的努力と世界世論に反するものであるとして、遺憾の意を表したのも、以上のことを考慮されたからであろうと思います。
われわれは、この憂慮すべき状況を打開するために、わが国のとるべきみちは、非核三原則をあくまで堅持し、一日も早く核拡散防止協定を批准することであると考えます。そしてさらに進んで、現在何らの国際的取りきめもなく放置されている地下核実験に関しては、大国小国を問わず、そのほしいままな遂行が国際協定によって一切禁止されるべきことを、また大国に対しては自らの核軍縮に向って積極的に取り組むべきことを、国連はじめあらゆる場、あらゆる機会に主張することにあると考えます。
われわれは政府が、すべての国に率先して、このことの実現のために格段の努力をするようここに強く要望致します。
1974年5月25日
世界平和アピール七人委員会
上代 た の
茅 誠 司
大河内 一 男
朝永 振一郎
植村 環
湯川 秀 樹
事務局長 内山 尚 三
上代 た の
茅 誠 司
大河内 一 男
朝永 振一郎
植村 環
湯川 秀 樹
事務局長 内山 尚 三
内閣総理大臣 田中角栄殿