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2005 85J 核兵器使用60周年にあたり、改めてその実態、非人道性を直視するよう日本国民と日本政府に訴える

2005年4月20日
アピール WP7 No. 85J
2005年4月20日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小柴昌俊
事務局長 小沼通二

 2004年末にインド洋沿岸諸国をおそった津波は、多くの生命、財産を奪いました。被害はそれだけにとどまらず、医学的、物理・化学的、さらには社会的、心理的な面にも及んでいます。この惨害は、多くの人びとが年末休暇を過ごしていた国際的リゾート地を被災地に含んでいたこと、発生が週末の午前中だったことにより、かつてない量の痛ましい映像記録を残し、全世界は、テレビ、インターネットを通して自然の脅威を目の当たりにしました。

 振り返れば、60年前に広島・長崎を壊滅させた核兵器の惨害は、規模においてこの津波の被害を超えるものでした。放射線の影響は、60年たった今日もなお消えておりません。しかも、核兵器による被害は、津波のような天災ではなく、人間が生み出した災害です。

 今や日本国内でも、この時代を経験しない人が3分の2を超えました。一般に、残忍なものは見たくも聞きたくもないとの心理がはたらくため、核兵器の残忍性は、忘れられかけています。ところが21世紀の今日の世界でも、核弾頭を搭載した数千発のミサイルが直ちに発射できる態勢に置かれています。核保有国は核兵器を使用可能にする戦略を立て、新型核兵器の研究も行うに至りました。核兵器を持つ国も増加し、核不拡散体制は危機に瀕しています。このような風潮の中で、日本の核武装についての議論が、わずかずつにせよ増加しています。

 核兵器の非人道性、特にそのむごたらしい被害についての情報は、日本に集中しています。核兵器を廃絶させるため、日本の市民には、これを直視し、世界にむかって発信する責務があります。

 私たちは、日本の心ある市民一人一人が、将来の世代と、全世界の人たちに、最も残虐な原爆被害の姿を大胆に展示することを含め、「人類は核兵器と共存できない」という信念をもっと広める努力をするよう訴えます。

 これと同時に日本政府が、新アジェンダ連合(1)などとの連携を一層強めるとともに、“核の傘”(2)に依存した政策を改め、日本を含めた東北アジアの非核兵器地帯(3)を実現させるための努力を速やかに開始し、多国間の平和的協議を積極的に推進するよう求めます。

注:
(1)新アジェンダ連合とは、核兵器廃絶を目指し、推進する中堅クラスの7つの国家、アイルランド、スウェーデン、エジプト、南アフリカ、ニュージーランド、メキシコ、ブラジルの連合をいう。2000年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議では、世界のNGOの強い支持を受けて、核保有国から「保有核兵器の完全廃棄を達成することを明確に約束する」との合意を取り付ける成果を上げた。

(2)核の傘とは、非核兵器国が核兵器保有国の核抑止力に依存する状態のことである。日本は、最近では「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン、1997年)の中で、「日本は自衛のために必要な範囲内で防衛力を保持し、米国は核の抑止力によってそのコミットメントを達成する」として米国の核の傘の下にあることを明白にしている。日本のほか、NATOの非核兵器国や韓国なども同じ政策を取っている。 

(3)東北アジア非核兵器地帯については幾つかの提案がある。その一つ「スリー・プラス・スリー」案についていえば、韓国と北朝鮮による「朝鮮半島非核化宣言」(91年12月)に日本の非核三原則を組み合わせ、これら3カ国からなる非核兵器地帯を設置し、核保有国である中国、ロシア、米国の3カ国は、これら3カ国に対しては核攻撃をおこなわない(消極的安全保障)という法的約束をおこなうのが骨子となっている。
 実際に、非核兵器地帯は世界各地に拡がっている。第1は、1968年に発効したラテンアメリカ核兵器禁止条約であり、今日ではラテンアメリカの全ての国が参加し、核兵器保有5か国すべてがこの地域で核兵器を使用しないことを約束している。1986年には、南太平洋非核地帯条約が発効し、核兵器だけでなく、核廃棄物投棄も禁止している。東南アジア非核兵器地帯条約も1997年に発効した。アフリカでは、まだ発効していないが、1996年に、非核兵器条約調印が行われた。モンゴルは1991年に、非核兵器国であることを宣言し、1998年には国連によってこの地位が承認された。南極地域では、1961年以来あらゆる軍事的措置が禁止されている。

2005 86J 核不拡散条約再検討会議に際し、核軍縮への具体的努力を求めるアピール

2005年4月20日

ジョージ ブッシュ アメリカ合衆国大統領殿
ウラジーミル プーチン ロシア連邦大統領殿
アンソニー ブレア 英国総理大臣殿
ジャック シラク フランス共和国大統領殿
胡錦濤 中華人民共和国国家主席殿

コピー:核不拡散条約再検討会議議長
セルジオ・ドゥアルテ大使殿

アピール WP7 No. 86J
2005年4月20日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小柴昌俊
事務局長 小沼通二

 核不拡散条約(NPT)が発効して今年で35年になります。本条約には、核兵器保有5カ国の核保有を認める一方で、その他の加盟国の核兵器保有を禁止するという不平等性を持っているとの批判が根強くあります。しかし、現在すでに約190カ国が批准書を寄託している、核軍縮をめざす唯一の重要な国際条約であります。
 2005年5月の再検討会議を目前にして、この条約における「核廃絶の約束」が、死文化させられかねない状況に陥っていることに、私たち世界平和アピール七人委員会は深い危惧を感じております。
 私たちの世界平和アピール七人委員会は、50年前の1955年に、核兵器開発競争が深刻に進む中で、ラッセル・アインシュタイン宣言に呼応して結成され、60年前の被爆国・日本から、世界に向かって平和を訴え続けてきました。
 私たちは、今年5月のNPT再検討会議に際し、核兵器廃絶に向けての実質的な成果を生み出すために、核兵器保有5カ国が真摯な努力をされるよう、次の通り要請します。

1 条約交渉における国際的約束の履行を
 1995年5月に核兵器保有5カ国は、核不拡散条約再検討会議において全会一致で採択された文書「核不拡散と核軍縮に関する原則と目標」に述べられているように「第6条に書かれている核軍縮の交渉を誠実に行う」ことを再確認しました。また2000年5月の再検討会議では「保有する核兵器の完全廃棄を明確に約束する」との最終文書にも合意しました。 これら一連の約束は、政権が代わっても、国際的、道義的に順守されるべき性格のものです。私たちは、その忠実な履行をあくまで求め、核兵器完全廃棄の確認を求めます。
 
2 核不拡散のためにも核軍縮を
 最近、「対テロ戦争」の名の下に、核兵器保有国の中に核拡散防止の重要性のみを強調し、核軍縮への努力を軽視する風潮があることに、私たちは強い憂慮の念を抱きます。
 核保有国自体が核兵器依存の政策を改めない限り、一部の非核兵器保有国がこれを見倣い、あるいは対抗することによって、核兵器の拡散はむしろ増大すると考えるからです。核兵器保有国が率先して核廃絶への具体的な道筋を示すことこそ、何よりの核拡散防止策なのです。私たちは、核兵器保有国が時期を明示した核兵器廃絶への道筋を明らかにするよう求めます。

3 「後戻りしない」核軍縮政策の確認を
 私たちは冷戦終結後の現在でも、核兵器保有国が戦略核兵器を使用可能な状態におき続けると共に、「使える兵器」としての小型核兵器の研究と開発を進めていることに抗議し、直ちに中止するよう求めます。
 核不拡散条約には、重要な原則として、核軍縮の不可逆性を守ることが謳われています。米国やロシアによる新たな小型核兵器の研究や米国での地下核実験再開に向けた動きは、明らかにこの趣旨に逆行するものです。私たちはそうした計画を永久に破棄することを求めます。

 以上、核兵器保有5カ国が、NPT再検討会議において、平和を願う世界の人々のこころをこころとし、真摯に課題に取り組み、歴史的な成果を上げられるよう要請します。

以上

2004 83J 武力行使・敵対行為の犠牲になる市民の安全の擁護と紛争の平和的解決を求めるアピール

2004年4月26日
アピール WP7 No. 83J
2004年4月26日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小柴昌俊
事務局長 小沼通二

イラクとパレスチナにおける紛争は混迷の度を加え、子供を含む市民がおびただしく犠牲となり、多くの市民の拘束・隔離が続いています。この事態を黙視することは許されません。
私たち世界平和アピール七人委員会は、日本国内および国際社会に対し、以下の通り訴えます。

1 武力行使・敵対行為の犠牲になる市民の安全の擁護を
非国家組織によるか、国家によるかにかかわらず、市民を無差別に殺傷し、拘束・隔離する一切の軍事暴力を即時停止し、人権擁護・法の支配・民主的統治の推進を重視する人間安全保障の原則(1)に従うことを求めます。私たちはすべての国家に、この原則に違反する一切の政策を放棄することを求めます(2)。
特に、米国主導のイラク占領軍によって、ファルージャなどで展開された軍事的威嚇および制圧行為が二度と繰り返されないことを求めます。

2 紛争の平和的解決への国連の役割の強化を
国連憲章第2条3,4は、すべての加盟国が、国際紛争を平和的手段によって解決し、武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならないとしています。これは、戦争放棄と紛争の平和的解決を取り決めた1929年のケロッグ・ブリアン条約(3)の精神を引き継ぐものです。
イラクにおける混乱は、軍事力はなにも解決しないことを示しています。私たちは、全ての外国軍隊が撤退し、国連がイラク国民を助けることを求めます。私たちは、国連と加盟諸国が、国際ならびに国内紛争解決のための手段としての、一切の戦争の放棄を宣言し、違反者に対する処罰を規定した新しい不戦条約を締結するよう訴えます。

3 平和憲法の先駆性の確認を
日本国憲法の戦力および交戦権の否認と、コスタリカ憲法(4)の常備軍の禁止は、国連憲章とケロッグ・ブリアン条約に沿った先駆的な行動であることを、国際社会が確認し、支持し、ハーグ平和アピール市民社会会議(5)も述べているとおり、他の国々がこれに続くことを求めます。

注:
(1) 「人間安全保障」は、国家全体の安全保障ではなく、個々の人間の安全保障を問題にする。1990年代に国連で使用されはじめ、国連事務総長の任命した緒方貞子、アマルティア・センを共同議長とした「人間の安全保障」委員会が報告をまとめた。2003年5月に国連に提出され、全加盟国に配布された人間の安全保障委員会報告書では、「人間安全保障は、すべての人々の生命(生活)の死活に関る中核にあるものを、人間の自由と達成度とを高める方向で守ること」としている。わかりやすくいえば、すべての人間の命と生活の不安をなくし、恐怖と欠乏から自由にすることである。
 この報告書は、国家の行動について、「国家と国際社会の安全保障論議を席巻しているのが『テロに対する戦争』である。軍事行動ばかりでなく、資金や情報、人間の移動を追跡し(阻む)といった手段にも大きな関心が向けられている。また、情報の共有など、新しい分野での多国間協力も進んでいる。しかしながらこうした手段は、テロリストへの資金提供や政治的・軍事的支援を断ち切り、危険人物を事前に拘束することで攻撃を阻止するという、短期間の強制的戦略が主眼になっている。それと同時に、国家支援型テロへの対応がなされていないし、専制政治への批判を封じるために合法的な団体がテロ組織の烙印を押される場合がある。そして、人権擁護や法の支配と民主的統治の推進よりも、テロとの戦いが優先されているのが現状である。」
「ある国家の行為が他国やその国民に影響を与えることを考えれば、国家が国益のみに執着し主権を無制限に振りかざすことはもはや許されない。・・・・・一方的な行動を起こすことは、国家間の違いを埋める平和的な解決手段とはなりえない。」としている。
(2) いわゆる反テロ戦争の余波を受けて、異常な監視の対象とされ、恒常的な不安状態に置かれているマイノリティに対する、人間としての安全保障、尊厳の尊重と人権の擁護も、特にアメリカ、イスラエル、ロシアにおいて問題である。日本における在日韓国人・朝鮮人への差別的な動きや、欧米におけるイスラム排斥と反ユダヤ主義の相互激化などの一切の排外主義を退けることも重要である。
(3) ケロッグ・ブリアン条約は、不戦を誓い、戦争放棄を定めた条約であって、1928年署名が行われ、1929年に発効して現在も有効である。 日本は最初に署名した9か国の一つである。この条約は
第1条 (戦争放棄) 締約国は、国際紛争解決のため戦争に訴えることを非とし、かつその相互関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することをその各自の人民の名において厳粛に宣言する。(日本帝国政府は「その各自の人民の名において」は日本国に限り適用なきことを宣言する。)
第2条 (紛争の平和的解決)締約国は。相互間に起こることあるべき一切の紛争または紛議は、その性質又は起因の如何を問わず、平和的手段によるの外これが処理又は解決を求めざることを約す。
と規定している。それにもかかわらず20世紀の間に2度にわたる世界大戦が起こったのは、罰則と制裁規定がなかったために日本をはじめとして各国がこの条約を無視したことと、各国が自衛権を主張したためである。実際には、現代の戦争は全て自衛権を理由にして行われている。

(4) コスタリカ共和国憲法 第12条
恒久的制度としての軍隊は禁止する。公共秩序の監視と維持のために必要な警察力は保持する。
大陸間協定により若しくは国防のためにのみ、軍隊を組織することができる。いずれの場合も文民権力にいつも従属し、単独若しくは共同して、審議することも声明・宣言を出すこともできない。
(5) 第1回ハーグ国際平和会議100周年を記念して開かれたハーグ平和アピール市民社会会議(1999年5月11―16日)の最終日に採択され、国連に提出されて、全加盟国に配布された「公正な世界秩序のための10の基本原則」は、その第1として、「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」をあげている。

2004 84J 核兵器への依存の即時停止と速やかな廃絶を求めるアピール

2004年4月26日
アピール WP7 No. 84J
2004年4月26日
世界平和アピール七人委員会

 人類は、第2次世界大戦直後の1940年代後半と、冷戦終結後の1990年代に、核兵器廃絶の好機を逸しました。その結果、世界はいまだ安定からほど遠く、核拡散の危険性が増大しています。 
 この状況の中、本日からニューヨークにおいて、2005年の核不拡散条約再検討会議に向けての準備委員会が開かれます。
私たち世界平和アピール七人委員会は、日本国内および国際社会に対し、以下の通り訴えます。

1 明白に約束した核兵器の完全廃棄に向けての速やかな行動を
 核不拡散条約上の核保有5か国は、2000年の再検討会議において明白に約束した核兵器の完全廃棄に向けて、2005年の再検討会議までに、小型核兵器を含めて、逆行できない計画の提示と行動を取ることを求めます。

2 核武装と核拡散に反対する明白な意思表示を
 日本を含む核武装可能と見られている諸国と、イスラエルなど核兵器を保有していると見られている諸国が、核武装と核拡散に反対する明白な意思を表明し、行動することを求めます。

3 中東と東北アジアに非核兵器地帯を
 私たちは、中東地域の混乱を憂慮し、イスラエルの核兵器保有を確認したうえで、速やかに中東地域を非核兵器地域にすることを、関係諸国と国連とに提案します。
私たちはまた、北朝鮮の核問題について検討している6か国が、東北アジアを非核兵器地帯とすることに合意し、実現させることを訴えます。
いわゆる反テロ戦争のなか、中東と東北アジアにおいて、非核兵器地帯化についての交渉が開始され、実現されることこそ、平和に大きく資するものと考えるからです。

4 日本の核兵器依存政策の転換を
 世界、なかでも東北アジアにおいて持続可能な平和な社会を確立するため、日本の政権が、いわゆる核の傘として、アメリカの核兵器を中心とした武力に依存している政策を放棄し、変更することを求めます。

1996 82J 包括的核実験禁止条約(CTBT)の年内締結と核兵器禁止条約の早急な審議開始を

1996年5月25日

 包括的核実験禁止条約(CTBT)は、核兵器の廃絶に向けての第一歩として、国連の創設以来全世界が待ち望んできた核軍縮処置であります。幸い、冷戦の終結と軍縮を求める国際世論の高揚を背景に、最近急速にこの条約終結の機運が高まり、1994年以来国連軍縮会議(CD)での審議がジュネーブで続けられ’、昨年五月にニューヨークで開かれた核不拡散条約(NPT)の再検討・延期会議での決定に従い、CTBTの今年度内の締結を目指して最終案の作成が精力的に進められております。私たちはその努力を多とするとともに、各国が九月から開催される第51回国連総会の切迫に留意し、条約の精神に沿って協調を計り、ぜひとも期限内に合意を達成されるよう切望いたします。

 また、この条約の締結は、あくまでも核兵器の全面的な禁止に向けての確実な第一歩でなければなりません。それを保証するため、私たちは条約の前文に、「この条約は核兵器の廃絶を早急に実現する努力の」環として締結するものである」ことを明記するよう要望いたします。そしてまた、核兵器禁止条約の締結こそ、この条約の締結に引き続く最も重要な課題であることを国際社会が改めて認識し、その審議を直ちに開始するよう求めたいと思います。

 ところが残念ながら現在の公認核保有五力国は、いずれもCTBT成立後もなお核兵器を保有し続ける意図を表明しており、現有の核兵器の保守や点検、安全性の確保、改良などを理由に、条文に抵触しない限り、さまざまな実験や研究を進めようとしております。このような姿勢は、これらの国々がCTBTを支持する真意が核廃絶の追求とは程遠い核拡散の阻止、言い替えれば核兵器の独占的保有の維持に過ぎないのではないかとの疑問を抱かせます。

 核兵器国のこのような政策の背景には、既得権益に固執する軍産複合体などからの強い圧力の存在が感じられますが、さらにその背後には冷戦終結の今なお、残念ながら核兵器の軍事的有用性や核抑止力の必要性を信じる国民や政治家が少なくないという事情
があると思われます。

 しかし、冷戦の終結後、核兵器の軍事的効用や核抑止力の安全保障上の役割は事実上消滅したことを、かつて米ソなどの国防長官や軍事戦略での政府顧問を務めた多くの専門家までが一致して認めております。まして大部分の非核非同盟諸国や、パダウォッシュ会議などの平和を目指す多くの非政府組織(NGO)の間では、「核兵器のない世界」はもはや単なる理想ではなく、近い将来に達成できる極めて現実的な目標とさえ見られております。私たちはすでに化学兵器や生物兵器の禁止条約を次々と成立させました。間近に迫った二十一世紀を文字どおり核兵器の脅威から解放された時代とするために、私たちはまずCTBTの今年内調印を実現し、続いて直ちに核兵器禁止条約の審議を開始すべきであると考えます。そしてその実行を各国に促すためには、核兵器による災害を自ら経験した唯一の国であるわが国が、進んで力を尽くさなければならないとの思いが切であります。私たちのこの思いが日本国民全体の声となることを願って止みません。

1996年5月25日

世界平和アピール七人委員会
京都大学名誉教授    田畑 茂二郎
元日本YWCA会長     関屋 綾 子
東京大学名誉教授    隅谷 三喜男
法政・札幌大学名誉教授 内山 尚 三
前東京芸術大学学長   平川 郁 夫
元日本学術会議会長   伏見 康 治

1991 81J 湾岸戦争の平和解決を訴える

1991年2月14日

 われわれが恐れた湾岸戦争は、イラクへの経済封鎖をこえて遂に戦争に突入し、しかも長期化の様相を呈している。そのような状況の下で、日本経済はアメリカに対し、多国籍軍のための90億ドルに上る追加援助を約束し、さらに難民輸送などを名目として自衛隊機を派遣しようとしている。

たとえ難民輸送を目的とするとしても、自衛隊機を戦場付近に送ることは、これを契機として自衛隊の海外派兵に途を開く恐れがないとはいえない。それを危惧する声は、アジア諸国で急速に高まっている。そのような重大な結果を伴う措置を、法律の改正によらず、自衛隊法施行令の拡大解釈という姑息な手段によって実施しようとするのは、議会制民主主義の精神を踏みにじるものであり、われわれは容認することができない。

これに加えて、90億ドルの支出は、その名目が何であれ、実態は戦争の当事者の一方に対する経済的支援であり、日本はこれによって実質的に戦争に参加することになる。そのためイラクのみならず、アラブをはじめ広くイスラムの人々からも、日本はアメリカを中心とする多国籍軍の側に立つ敵対国と見なされるようになり、非難の対象となっている。それは今後平和解決に向けて努力する上で、日本自身の立場を著しく困難にするといわなければならない。

このように大きな影響を持つ重大な事態に対し、日本の世論、あるいは国会の議論は、昨年秋の国連平和協力法案の場合と比べ極めて低調のように見受けられる。すでに戦争状態に入った以上、これに反対することはもはや意味がないとして手をこまねくことは、われわれ日本国民が太平洋戦争に突入していく過程で取った姿勢と同じであり、その過ちを今日再び繰り返してはならない。

われわれは戦争支援のために90億ドルを支出するのではなく、戦後の被害復旧、世界の友好関係回復のためにこそ、必要な資金の提供を約束すべきではないか。難民輸送のためには、自衛隊機ではなく、民間航空機などを活用する途も開かれている。日本は平和国家として、戦禍を拡大する地上戦への突入に反対し、戦争の早期終結を訴え、国連安全保障理事会などで平和交渉の推進に努め、平和解決に向け全力を傾けなければならない。

1991年2月14日

世界平和アピール七人委員会

1990 80J 国際連合平和協力法案についての要望

1990年11月6日

 わが国が国際連合に協力し、国際の平和と安全の維持のために国際的な責任を果たす必要があることは申すまでもありません。しかし、現在国会に上程されております国連平和協力法案については、重要な点に疑義があり、国民の意向を尊重し、ご考慮いただくように要望いたします。

 とくに問題となるのは、法案の第三条の一号において、国連決議に基づく場合だけでなく、「国連決議の実効性を確保するため」、「国際連合加盟国その他の国」が行う活動も、「国際の平和及び安全の維持のための活動」とされ、それについてもわが国が協力
し、平和協力隊を派遣することとされ、しかも、その平和協力隊に自衛隊が部隊などとして参加することを認めるとしていることであります。どのような措置が具体的に「国連決議の実効性を確保するため」のものとされるかについては何ら限定がなく、拡大解釈がなされる可能性があり、現に国会における政府側の答弁では、現在中東湾岸に派遣されている多国籍軍の軍事行動も、国際連合の経済制裁決議の「実効性を確保するため」のものと解釈されているかの印象を強く受けます。そうした多国籍軍の軍事行動に、自衛隊が「平和協力隊」として協力することは、たとえ後方支援だとしても、従来政府が憲法第九条の下において認められないとしていた集団的自衛権の行使にあたるとみざるをえないわけであって、これまでわが国が堅持してきた基本方針の重大な変更をもたらすものであります。

 法案の第三条の二号には、「平和協力業務」として、「停戦の監視」や、「紛争終了後の議会の選挙住民投票等の監視又は管理」などがかかげられていますが、これらは国際連合が最近重視しているいわゆる「平和維持活動」(PKO)にかかわるものであって、国連中心主義をとるわが国としてこの種の国際連合の活動には積極的に参加し、国際的な責任を果たすことがぜひ必要であると考えます。しかし、この種の活動は戦闘を目的としない非軍事的な業務であって、軍事的に訓練をうけた自衛隊を参加させることは適当ではなく、そのための平和協力隊の構成については、自衛隊をそのまま移行するのではなく、別途考慮されますことが適当であると考えます。

 以上、法案の問題点についてわれわれの見解を述べ、ご再考を要望する次第であります。

1990年11月6日

世界平和アピール七人委員会
田畑 茂二郎
井上   靖
関屋 綾 子
隅谷 三喜男
内山 尚 三
久保 亮 五

内閣総理大臣 海部俊樹殿

1988 79J 天皇の皇位継承行事に関する要望書

1988年11月7日

要望書

 戦後、今日までの日本の歩みを省みるとき、わが国が、世界の中にあって、経済的分野をはじめとし、確乎たる地盤を築きえたことは、政府はもとより各分野における、国民の並々ならぬ努力の賜物であると思います。

 ところで、昨今私どもは、いつの日か昭和の終わりを迎えることへの心備えを、しなければならぬ時に至っていると心痛致しておりますが、このことはまた、国内は勿論、国際世界から、日本の姿勢が間われる、重大な時であると、思わざるをえません。

 政府におかれては、国会に籍をおく全議員の意見をも傾聴され、このときにあたり、戦後新たにされた、日本国憲法の原理に基づいて、関係諸行事を取り決め、国政の責任を果たされるよう、要望致します。

1988年11月7日

世界平和アピール七人委員会
茅  誠 司
田畑 茂一郎
井上   靖
関屋 綾 子
隅谷 三喜男
内山 尚 三

内閣総理大臣 竹下登殿

1978 77J 首相は自ら軍縮総会に出席して全面完全軍縮を訴えよ

1978年2月27日

 国際連合は、きたる五月二十三日から軍縮特別総会を開催致します。軍備縮小を主な討議議題として国連が特別総会をひらくのは、この世界最大の国際機構が創設されてから未だかつてありません。われわれは軍縮特別総会をまことに意義深いものと考え、心から開会を歓迎致します。

 ところで、平和憲法をもち唯一の被爆国であるわが国として、軍縮に対する強い熱意を示すために、この際、全日本国民を代表して総理みずから会議場に赴き、世界の国々に軍縮の必要性を説かれることは、大きな意義をもつと思います。

 国際情勢はいま転機に立っています。戦後永く対立抗争してきた米ソは現在、平和共存の考えをとっているとはいえ、軍縮討議の内容は後退し、軍備管理の取り決めをめぐり足踏みしている状況であります。その間、兵器は効率化し、核兵器はミサイル兵器となり、その対抗手段の対抗手段を生み、戦術兵器、戦略兵器を問わず、その量と質とはすでに無限の破壊力をもつに至り、核の拡散も無視できない状態となっております。このような傾向を今にして止めなければ、第三次大戦を招き、それは人類と文明の終焉を意味するでありましょう。

 軍縮特別総会の開催は、非同盟諸国の提案により、総会本会議でも全会一致をもって採択されました。この事実は、軍事費を増大することは、国の財政を破綻させ、また発展途上諸国の援助も公約どおり果たせないという経済状勢に対し、世界の国々が大きな恐れと不満を示したものと思われます。

 私どもは総理が自ら出席され、全面完全軍縮を強く訴えられ、それに向う最初の一歩として、米ソ両国を始めとするすべての国が核兵器の廃棄に向って決断するよう、積極的に働きかけることを要望致します。

1978年2月27日

世界平和アピール七人委員会
      上代  た の
      茅   誠 司
      大河内 一 男
      朝永  振一郎
      植村    環
      湯川  秀 樹
事務局長 内山  尚 三

内閣総理大臣 福田赳夫殿

1976 76Ja 被爆者援護法の早期制定を求める要望書を三木首相に提出(要旨)

1976年7月29日

 被爆者に対する援護は医療や生活補償の面ではいくつかの進展があったが、国家補償の精神に立つ被爆者援護法はいまだに実現していない。援護法制定は日本政府が国が内外に被爆者を再び出さないという決意を示すことだ。

(1976年7月29日付中国新聞)