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2008 95J インドを特例扱いするNSGガイドライン変更にあたっての声明

2008年9月9日

(アピール No.95J)
 9月6日まで延長された原子力供給国グループ(NSG)の臨時総会において、最終的に、インドを例外として扱うガイドラインの変更が決定された。すなわち、核拡散防止条約(NPT条約)の枠外で核兵器開発を進めたインドに対し、NPT条約が求めている国際原子力機関(IAEA)による包括的保障措置を受けないで原子力取引を認めるという例外的扱いが認められたのである。今回の決定は、NPT体制の基盤を大きく揺るがす可能性を秘めるものであり、到底容認できない。

 本年7月、洞爺湖サミットにおけるアメリカのブッシュ大統領と、インドのシン首相による米印原子力協定促進の合意以後、急激に事態が進展した。8月1日には、IAEA理事会によるインドとIAEAとの部分的な保障措置協定の承認が行われ、その後、8月21日、22日には、IAEAによる包括的保障措置を受けている国以外との原子力取引を禁じたNSGのガイドラインについて、インドに例外措置を認めるかが議論されるに至った。NSGの臨時総会においては、アイルランド、オーストリア、オランダ、スイス、ニュージーランド、ノルウェーといった各国から強い異論が出された。そのため9月4日、9月5日にも再度議論がなされ、6日まで延期された。しかし、最終的に、アメリカの強い圧力により、インドを例外扱いにするガイドラインの変更が認められてしまったのである。

 日本の政府は、被爆国の政府でありながら、広島、長崎という被爆地の被爆者団体、両市長、両県知事、更には市議会や県議会の決議、その他多くの地方自治体決議、永年にわたって核兵器廃絶運動に携わってきた全国の被爆者団体や反核団体を含む平和市民団体の一致した要求、更に最近では超党派の国会議員の中にも起こりつつあった反対の声を無視して、NPT体制への打撃を最小限にする努力さえせず、インドを例外扱いにする米印原子力協定を容認したのである。われわれは、被爆国の国民としてこのような政府を持ったことに対し、慚愧に絶えない思いである。
 今後われわれは、今回核不拡散と核兵器廃絶のためにともに戦った人々とともに、日本政府が今回のNSG会合でどのような対応をしたのか、納得のいく説明を求めるとともに、米議会内には反対を表明する議員も多いことを踏まえ、今後は米国議会において本協定が承認されないよう引き続き努力をつづけていく。そして、日本政府にはあらためて核兵器を違法として明確に核兵器廃絶をめざし、そのための多国間協議を早急に開始するイニシアティブをとることを強く求めていく所存である。

2008年9月9日
インド・パキスタン青少年と平和交流を進める会
 世話人代表 森瀧春子
核兵器廃絶市民連絡会
 連絡責任者 内藤雅義
核兵器廃絶ナガサキ市民会議
 代表 土山秀夫
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
 共同代表 岡本三夫 河合護郎 森瀧春子
原子力資料情報室
 共同代表 伴英幸
原水爆禁止日本国民会議 (原水禁)
 議長 市川定夫
原水爆禁止日本協議会(日本原水協)
 事務局長 高草木博
原水爆禁止広島県協議会
 筆頭代表 大森正信
世界平和アピール7人委員会
 事務局長 小沼通二
日本原水爆被害者団体協議会
 事務局長 田中煕巳
日本国際法律家協会
 会長 新倉修
日本反核法律家協会
 事務局長 大久保賢一
日本YWCA
 会長 石井摩耶子
NO DU(劣化ウラン兵器禁止)ヒロシマ・プロジェクト
 代表 嘉指信雄
広島県被爆者団体協議会
 理事長 坪井直
広島県被爆者団体協議会
 理事長 金子一士
(財)広島平和文化センター
 理事長 スティーヴン・リーパー
ふぇみん婦人民主クラブ
 共同代表 設楽ヨシ子

 PDFアピール文→ 95J.pdf

「宇宙軍拡」「軍需産業拡大強化」を許すな

2008年8月26日

「宇宙基本法の監視を」とアピール
「宇宙開発戦略本部」発足に当たって国民に訴え

世界平和アピール七人委員会は、26日午後、池田香代子、小沼通二両委員が記者会見し、27日に内閣府の「宇宙開発戦略本部」が発足するのを前に、「『宇宙基本法の監視を』-国民に訴える」とのアピール(全文参照)を発表した。
七人委員会は昨年11月、「宇宙基本法案の再検討を」と題するアピール(参照)を発表、各方面に訴えかけてきた。ところが、同法案は、当初、与党案として提出されたものが突然撤回され、与党、民主党のプロジェクトチームによる協議による民主党を含めた形の議員立法として提出され、わずか2週間、短時間の審議でほとんど国会での論議がないまま、両院を通過し成立した。これに基づき、戦略本部発足へと進んできたため、「宇宙空間を平和利用に限る原則を改めて国民に訴えたい」とアピールを発表することになった。

 記者会見で、池田委員は衆院の審議記録を手に、「たとえば衆院ではわずか2時間の審議で、可決されている。与党案と変わったのは『日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ』という言葉が入っただけといっていい。審議はプロジェクトチーム同士が話し、まるで『おしゃべりの場』のようで、印刷しても25枚にしかならない程度のひどいものだ。産業が軍事に傾けば必ず衰退する。産業界にとってもプラスではない。本質的な問題を捉えて踏みとどまってほしい、と本当に思う」などと述べた。

 

 また、小沼委員・事務局長も「提案理由の説明はわずか909字しかなかった。そこで言われているのは、安全保障情勢が変化しており、宇宙の開発は国家戦略にしなければならず、安保に貢献する、といったことだけだった。現在の宇宙航空研究開発機構についても『平和利用に限る。平和利用とは非軍事だ』という原則は、当然見直すとされ、議論の中では『安全保障は何より大事だ』と強調されている。『日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ』といいながら、『平和利用』と『公開』を崩していくような道を許してはならない。国会の議事録は短いものだから、直接皆さんも当たってほしい」と強調した。

アピール文→  wp7-94j.pdf
またはこちら→ [アピール「宇宙基本法の監視を」―国民に訴える]

2008 94J 「宇宙基本法の監視を」―国民に訴える

2008年8月26日
アピール WP7 No.94J
2008年8月26日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 宇宙基本法案が今年5月21日に国会で可決され、成立しました。私たち世界平和アピール七人委員会は、昨年11月に、自民・公明両党の議員が提出した法案に対して「宇宙基本法案の再検討を求めるアピール」を発表しましたが、このたびの法律の成立過程および今後の運用について危惧の念を消すことができないので、宇宙開発戦略本部発足の機会に改めて国民の皆様に訴えたいと思います。

 まず、この法案審議の異様さに注目したいと思います。昨年提出された自民・公明案は一度も審議されることなく、5月9日の衆議院内閣委員会において理由の説明がないまま撤回され、ただちに自民・公明・民主の三党案が提出されました。そのまま2時間ほどで委員会審議が終了して可決され、4日後には衆議院本会議で一切の審議がないまま採決されました。続く参議院の内閣委員会でも実質2時間ほどの審議だけで可決され、提出からわずか2週間で、参議院本会議で採決・成立という速さでした。このように急ぐ理由は何も説明されず、私たちの意見を含めた国民の声にこたえ、現在と将来の国民に責任をもって決定する姿勢がまったく見られませんでした。

 この法律は、これまで専ら平和利用に徹して「非軍事」を掲げてきた日本の宇宙開発を、軍事利用を目的としたものに衣替えしようという狙いが明白です。具体的な例を挙げれば、日本の宇宙開発を進めている宇宙航空研究開発機構(JAXA)を規定する法律(宇宙航空研究開発機構法)の第4条には「平和目的に限る」と明記されていて、成立時の国会審議において、これは「非軍事」だと確認されてきました。ところが、今回の参議院での審議の中で、「非侵略」と変更された機会に当然見直しが行なわれると提案者が明言したのです。「非軍事」の研究開発機関の存在自体を許さないという重大発言が、なんら深められることなく国会で認められている怖さを感じます。

 基礎研究を無視した目的研究だけでは健全な開発を実現させることはできません。ましてや、他国並みの防衛力を求めることは、際限ない宇宙の軍事予算拡大を認めることにつながります。防衛目的と攻撃目的は分けられるものでなく、防衛力強化は、攻撃力強化を誘発することは歴史が示しています。宇宙軍拡への道なのです。私たちは、日本の産業の健全な発展を願うものですが、安全保障を軸とした研究開発への動員と軍需産業の拡大強化には同意できません。

 今後、この基本法を基礎にして、具体的な運用のための法律が提案されることになっています。私たちは、私たちを含めた国民が、「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ」と書かれているこの基本法の運用方針をよく検証し、あくまで宇宙利用が平和憲法の原則から名実ともに外れることがないよう厳しく監視していくよう訴えます。

核兵器拡散を招く米印原子力協定に、反対を改めて呼び掛け

2008年8月6日

世界平和アピール七人委員会は、広島の被爆の日にあたる8月6日、93回目のアピールとして、現在進められている米国とインドの原子力協力計画に日本政府が協力すべきでない、とする「日本政府は米印原子力協定に反対を」を発表しました。このアピールは、2006年6月21日のアピールに続くものです。

インドは核兵器不拡散条約(NPT)への参加を拒み続けながら、核兵器を開発し、核爆発実験を行ない、核兵器の放棄を拒み続けています。
ところが、米国は、このインドとの原子力協力を進める協定を締結、具体的な作業を続けています。これは、明らかに、NPT加盟国としての義務に違反するもので、イランや北朝鮮の核開発を阻止しようとしていることとも矛盾しています。日本は、原子力供給グループ(NSG)の一員として承認を求められていますが、これを認めるわけにはいきません。
こうしたことから、改めてアピールを発表することにしたもので、アピールは、国連の場で核廃絶を求め続けている被爆国日本の政府に、明白な反対の姿勢を貫くことを求めています。

この文書は、本日(6日)午前、首相官邸及び外務省に届けると共に、外務省記者クラブで配布。引き続き、米印両国と原子力供給グループ諸国にも直接呼びかけることにしています。

アピール文→  wp7-93j.pdf    七人委員会とは→  wp7-prof.pdf

2008 93J 日本政府は米印原子力協定に反対を

2008年8月6日
アピール WP7 No.93J


2008年8月6日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 私たち世界平和アピール七人委員会は2006年6月21日、当時の小泉総理あて、ブッシュ大統領との会談において「米印間の原子力協定について日本も賛同するように」との要請があっても、受け入れることのないよう要望書を提出しました。
 その後、インド国内の政治的事情によって協定は実現を見ないまま、経過していました。ところが最近になって、インドの国会で協定調印への環境が整えられたことにより、実現の可能性がにわかに高まってきたことが伝えられています。

 私たちが前回の要望書でも指摘した、インドが核兵器不拡散条約(NPT)の発足当初から不平等を理由に加盟せず、国際世論を無視して核実験を行い、公然と核兵器保有国になった事実はその後何一つ変わっていません。このような状況の中で、NPT加盟国である米国がインドを有力な原子力市場であるとみなし、また対中・対イスラムの同盟国ともみなして、インドに対してNPTの加盟を促さず、例外扱いとして認めようとすることは、NPTの基本理念に反する行為であることは明白です。それと同時に、イランや北朝鮮の核開発を阻止しようとすることとも矛盾します。しかも日本など45カ国からなる原子力供給グループ(NSG)の全会一致の承認が得られにくいとみなすや、米国はその規定の変更を試みようとさえしています。

 私たちは、広島への原爆投下の日に当たり、被爆国である日本の政府がこうしたNPT体制の崩壊につながりかねない米印原子力協定に対して、インドがNPTと包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟することを前提条件としない限り、賛同できないむね、米国政府とインド政府に強く訴えることを要望します。

先進工業国の責任の自覚を  G8各国首脳らにアピール

2008年6月29日

世界平和アピール七人委員会は、来月北海道洞爺湖畔で開かれる「先進国首脳会議」(G8サミット)に向けた「北海道洞爺湖サミット参加国首脳への要望」をまとめ、各国大使館、代表部を通じて首脳に送るとともに、午後6時から、武者小路公秀、井上ひさし、小沼通二の3委員が記者会見し、アピールを発表、記者の質問に答えました。
アピールでは、G8首脳に、グローバル経済の拡大のもとで、「価格高騰や食糧不足が現実化し、国家間でも各国内でも経済的社会的傘が広がり、社会不安や軍事紛争の危機を招いて」いると指摘。「先進工業国の責任を自覚し、問題の根幹を捉えた的確な決定を」と訴え、「地球環境の保護、国際金融の規制ルール、国際的な人権の擁護、核兵器の禁止などについて積極的な決定」について期待を表明するとともに、(1)環境対策は弱者の視点から(2)「反テロ」にな尾を借りた戦争や人権の抑圧に反対する(3)核兵器保有国は削減義務の履行を-の3点をポイントに要望しています。
(アピール全文参照)


記者会見する井上ひさし、武者小路公秀、小沼通二の各委員(左から)

2008 92J 北海道洞爺湖サミット参加国首脳への要望

2008年6月27日
アピール No.92J
2008年6月27日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 世界平和アピール七人委員会は、北海道洞爺湖畔に集まるG8首脳各位に対し、先進工業国の責任を自覚し、問題の根幹を捉えた的確な決定をくだされることを切に望みます。
 いま世界は、拡大するグローバル市場経済のもと、原油などの価格高騰や食糧不足が現実化し、国家間でも各国内でも経済的社会的格差が広がり、社会不安や軍事紛争の危機を招いています。
 世界の不安を取り除くには、民主的で公正な国際関係と市民社会の積極的な関与が必須であり、そこでの先進工業国の責務は重大です。今回の協議において、地球環境の保護、国際金融の規制ルール、国際的な人権の擁護、核兵器の禁止などについて、積極的な決定をされることを期待し、次のように要望します。

1)環境対策は弱者の視点から

 私たちは、今回の協議が地球温暖化に対処しようとしていることを高く評価します。環境においても強者であるG8には、地球上のすべての弱者の視点に立って対策を講じる責務があります。
 しかし、CO2削減などの技術的な施策に力点が置かれ、環境問題の根底にグローバル経済の影響があることへの認識があまり感じられないことに対して、違和感をいだかざるをえません。
 たとえば日本はホスト国として、地球温暖化問題と食糧問題との不可分の関係を主要議題にしようとしています。それは評価しますが、提案の中心は、高収量の品種の開発・普及や農業技術の移転などです。もっぱら技術面を強調することで、原油や穀物価格の高騰を招いている投機マネーや、貧困層の食糧を奪うことになるバイオ燃料の問題から目をそらすことがあってはなりません。
 環境保全と開発の両立をうたい、開発途上国の協力を得ようとしていることは理解します。しかし報道によると、準備会議では、途上国への技術開発援助などが突出して議論されたようです。すでに温暖化の被害を受けている、そして今後ももっとも受けやすいのは、開発途上国の貧困層や、先住民など伝統的な生活を送っている人々、中でも女性や子どもです。脆弱な社会経済状況を克服しようとしている人々や、その支援にあたっている国際的な市民運動が進めている、被害を未然に防ぐことができる国際的な仕組みつくりを支援するために、サミットにおいて真剣に議論されることを希望します。
 CO2排出権取引については、環境保全に一定の効果はあるものと認めますが、国際投機マネーの流入が金融開発途上国への種々の阻害要因になりかねない危険に留意し、この制度が本来の目的を果たすべく配慮されるよう要請します。

2)「反テロ」に名を借りた戦争や人権の抑圧に反対する

 私たちは、今回の協議において、テロをはじめ国際組織犯罪の防止策が協議されることにとくに注目しています。「反テロ」戦争が、問題の文化社会的・政治経済的な根本原因の除去よりも、処罰と排除、監視と抑圧といった対症療法的な軍事的・警察的対策を重視していることに強い危惧を覚えます。
 いまや監視体制は街角から宇宙までひろがり、テロ容疑者の尋問のための秘密収容所や、グローバル格差が生み出す難民・「非合法」移住労働者などの収容所が、南北格差の境界線に乱立して、新たな「鉄格子のカーテン」をつくりだしている観があります。先進工業国の利害を優先するあまり、開発途上国の貧困層の不安と絶望を増大させるこうした対策は、先進工業国内の格差拡大とともに社会不安を助長し、テロと犯罪の温床となっている可能性すら見受けられます。
 今回の協議では、「反テロ」戦争という発想を脱し、世界のすべての人々が平和に生存できる世界を構築する責任を確認されるよう強く希望します。

3)核兵器保有国は削減義務の履行を

 私たちは、核兵器保有国が未だに核兵器使用を否定していないことを大いに危惧しています。いかなる理由であれ、もし核兵器が使用されれば、人類史上最大の環境破壊になることに疑いの余地はありません。その意味で、今回、核兵器の拡散防止が協議されることを全面的に支持します。
 しかし、核の平和利用と軍事利用の境界があいまいになっている今日、核兵器を保有したり、自国内への配備を容認したり、核の傘に依存するなどの安全保障政策を保持する国がある限り、核兵器不拡散を徹底させることは不可能です。
 サミットの全参加国が、核軍備の縮小など核兵器不拡散条約第6条(注1)に明記された約束をあらためて想起し、各国がただちに明確な具体的計画を策定し、速やかに実施に移すことを要望します。その意味からも、最近京都でオーストラリアのケビン・ラッド首相が発表した核不拡散・軍縮国際委員会の設立提案(注2)をサミット参加国が積極的に支持し、協力されるよう要望します。


注1 核兵器不拡散条約 第六条(条文)
 各締結国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。

注2 ラッド首相の提案
 オーストラリアノケビン・ラッド首相は、来日第2日の2008年6月9日に、広島から移動した京都で、核不拡散・軍縮国際委員会の設立を提案した。この委員会は、キャンベラ委員会、東京フォーラムの成果を再吟味し、残された問題を確認し、2010年のNPT再検討会議を視野に入れて将来の行動計画を発展させることを目標としている。
 キャンベラ委員会(正確には「核兵器廃絶についてのキャンベラ委員会」)は、核兵器のない世界への現実的提案を作るため1995年11月にオーストラリア政府が設立した国際的な独立の委員会で、1996年8月に詳細な報告書を発表した。東京フォーラム(「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」)は、1998年に日本政府の呼びかけで発足し、1999年に17項目の提言を含む報告書をまとめた。

宇宙基本法案の再検討を求めるアピールを発表

2007年12月7日

世界平和アピール七人委員会は、11月19日、前国会から継続審議になっている宇宙基本法案について、各政党と衆参両院の内閣委員会委員長などに申し入れるとともに、文部科学省の科学技術記者クラブで記者会見し、基本的な見直しを求めるアピールを発表しました。

記者会見には、池内、池田、小沼の3委員が出席、「法案は軍事利用に道を開くものであり、内容、表現とも明らかに未熟・稚拙です。私たちは初心に立ち返って再検討し、1969年の全会一致の国会決議に基づく宇宙基本法制定を目指していただきたい」と強調しました。(アピール全文参照)

「身近なところから、科学と平和を」七人委員会が新潟・松之山で創立記念日の講演会

2007年11月27日

世界平和アピール七人委員会は、創立52周年記念日の11月11日、新潟県十日町市の市立里山科学館・越後松之山「森の学校・キョロロ」で、講演会を開催した。
平和と地域、農業、環境の関わりにも注目しようと、同科学館の顧問を務める池内了氏が、メンバーに加わった機会に開くことにしたもので、委員会が大都市以外で講演会を開くのは初めて。所用で欠席した武者小路公秀、土山秀夫の両委員を除き、今年白寿を迎えた伏見康治名誉委員をはじめ、井上ひさし、池田香代子、大石芳野、小沼通二(事務局長兼務)、池内了の全員が参加した。
会場は地元の人たちのほか、北海道や神奈川から駆けつけた人も含めて約100人でぎっしり。標本や写真が展示されたホールで、熱のこもった会になった。

講演会では、テーマは「日本の農業、世界の農業」。伏見名誉委員の挨拶、小沼委員・事務局長があいさつ、井上ひさし氏が講演、大石委員が自らが撮影した世界の農村の写真を見せながら講演したあと、池田、池内氏らがコメントを述べた。
井上さんは、「昭和35年、岩手県が日本で最後に食糧の自給自立を達成したとき、大変なお祝いをした。しかし、日本人が米を食べなくなり、自由化されて、農業者は米では生活できなくなった。農水省は13370円だとしているササニシキが実際には11000になってしまっているという。このあたりの魚沼産コシヒカリも、カリフォルニアでも作れるから、魚沼でできるものの20倍くらいあるのではないか」と切り出した。
井上さんは、棚田が水をたたえていた話やマグロが買い付けられなくなっている話、米国の食糧の話などに言及、「日本人が持っているものは何なのだろうか。憲法、原爆体験もそうだが、いまわれわれ日本人が持っていたものを持ちこたえ、再発見することが求められているのではないか」と結んだ。

続いて話したのは大石委員。会場には、ちょうどこの朝、紫綬褒章を受けたこともあってその活動を紹介する番組が当日NHKテレビに登場したばかり。会場には「アジアの農村風景の写真」も展示された。
大石さんは、「ここ数10年世界の人間、戦争、平和ととり続けてきた。戦争は農村を破壊する。しかも、武器と武器の戦いが終わっても傷跡が残っている」と、写真を見せながら話し、聴衆に感銘を与えた。

このあと、池内委員が「キョロロ」の歴史を語りながら、「科学を身近なものにしていかなければならない。学校や家庭を結んだ人間を育てる場として機能したい。楽しみながら、地域の中から平和を作っていこう」と呼び掛けた。
また池田さんは、「もし世界が100人の村だったら」の経験を語り、世界で核実験が続けられてきた事実を現代アートで表現した、映像作家の橋本公さん(箱根ラリック美術館)の作品を紹介。「核実験がこんなに続いているのか!」と衝撃を与えた。
講演会の後、聴衆との話し合いも行われ、井上さん、池内さんなどが質問に丁寧に答えていた。

2007 91J 宇宙基本法案の再検討を求めるアピール

2007年11月19日
アピール第91号J
2007年11月19日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了
名誉委員 伏見康治

 私たち世界平和アピール七人委員会は、去る6月20日に議員立法によって<国会に上程され、9月10日に召集された国会において継続審議になっている「宇宙基本法案」に対して、宇宙を軍事の場とする道を拓く第一歩となる内容を含んでいるという重大な危惧を抱いており、拙速な基本法制定を行うべきではないと考えます。

 人類は、数々の人工衛星や探査機を通じて宇宙の謎に挑み、逆に宇宙から地球を眺めて私たち自身の生き様を省察してきました。宇宙は限りない憧れと自省の場として人々の夢と思索をかき立ててきたのです。他方、残念なことに、宇宙は、安全保障を口実にして、ミサイルや軍事衛星が飛び交う場ともなっています。人類に残されたロマンの対象が軍事的に利用されているのです。

 このようななかで日本は、1969年に衆議院本会議の全会一致の決議によって、宇宙の開発及び利用は、「平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び社会の福祉をはかり、あわせて産業技術の発展に寄与するとともに、進んで国際協力に資するため」に行うと謳い、参議院においても全会一致で、「平和利用の目的に限りかつ自主・民主・公開・国際協力の原則のもとにこれを行う」と決議し、宇宙を「非軍事」の場としてのみ利用することを誓ってきました。
 これは、「平和的目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であることを認識し、宇宙空間の探査及び利用がすべての人民のために、・・・行なわれなければならないことを信じ、・・・協定した」1967年の宇宙条約の基本的精神を諸外国に先駆けて確認した、世界に誇るべき目的と原則でした。

 ところがこのたびの法案提出によって、危機管理・安全保障強調の動きと軌を一にするかのように、「非軍事」をやめて、「宇宙開発は・・・安全保障に資するよう行われなければならない」とする宇宙基本法の制定が進められようとしています。さらに法案では「宇宙開発に関する情報の適切な管理のために必要な施策を講ずる」としております。ここには、公開の原則を捨て去って秘密裏の宇宙開発を進める意図が明白に読み取れます。
これは、自衛隊独自の早期警戒衛星や軍事用通信衛星・電波傍受衛星などの保有・運用を可能とし、自衛の名の下に宇宙開発を「軍事化」に拡大させる危険性をもつものであります。防衛力強化と攻撃力強化は、相互に他方を誘発し合う関係にある表裏一体の軍拡の道であることを忘れてはなりません。
いったんこの動きを認めるなら、さらに、軍事機密を梃子として軍産複合体の成立を促し、国家の動向を誤らせかねない事態へと推移する可能性もあります。
さらに、情報管理の強化は、本基本法案が謳う国際競争力の強化につながる健全な産業の育成に反することになります。

 また、本法案においては、衆議院決議にあった「学術の進歩」の言葉が総則から消え、替わって「我が国の利益の増進」が三度も繰り返し謳われております。これは学術の進歩が開発・利用の基礎であることを忘れ、国家の利益のために宇宙を利用しようとする意図が露わなものであり、日本の品位をおとしめ、諸外国から蔑みをもって見られることは必定です。

 なお本法案は、総則に、「宇宙開発」が23回、「ねばならない」が7回あらわれるなど、内容・表現ともに未熟・稚拙です。

 私たちは、日本が、あくまで「非軍事」の旗を掲げて宇宙の平和利用に徹し、人々に夢とロマンを与え続けることこそが真の平和国家としてとるべき道であると考え、初心に立ち返って1969年の全会一致の国会決議に基づく宇宙基本法制定を目指すことを求めます。