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2009 98J 核兵器廃絶実現への日本の具体的行動を呼びかけるアピール

2009年8月7日
アピール WP7 No.98J
2009年8月7日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 今年1月に就任したオバマ米大統領は4月5日にチェコのプラハで行なった演説の中で、米国の歴代大統領の中ではじめて「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、行動する道義的責任」を認め、「核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意」を表明した。これを受け、世界各地で核兵器廃絶の一日も早い実現への期待が高まっている。
 世界平和アピール七人委員会は、それにもかかわらず現実には逆行の動きが相次いでいることを憂慮し、被爆国日本が今こそ世界の政府と市民と手を携えて前向きに具体的行動を行なうべきだと考え、以下のとおり呼びかけます。

1 去る7月18日に外務省で開催された日米の外務・防衛当局の「日米安全保障高級事務レベル会合」において、米国が日本に提供している「核の傘」について定期協議を立ち上げる方向で一致したと、報じられている。
 また “日本が、米議会が設置した「戦略態勢委員会」に対し、米国が「トマホーク」などの戦術核の一方的な削減・廃棄を進めるべきではないと主張し、戦術核戦力の堅持を求めている”ことが、日本政府関係者によって明らかにされたと報道されている。
 さらに、日本政府は、“核兵器の先制不使用を米国が約束することは、日本の安全にとって望ましくない”と、反対しているとも伝えられている。
 もしこれらの動きが事実であれば、核兵器に依存し続ける政策であって、核兵器が役に立つという立場になり、世界の潮流に逆行することになる。

2 日本では、衆議院本会議(6月16日)と参議院本会議(6月17日)で、全会一致で可決された「核兵器廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議」において、オバマ大統領の決意表明を受けて、「わが国は、・・・世界の核兵器廃絶に向けて先頭に立って行動する責務がある」、「政府は、・・・核廃絶・核軍縮・核不拡散に向けた努力を一層強化すべきである」と確認した。これを受けた麻生首相は、「政府としては、採択された決議の趣旨を体し、決意を新たに取り組む」と所信を述べた。
 これは、日本が核兵器と決別する決意の表明であり、核兵器の持ち込みも認められないことになる。日本は、核の傘に依存しない安全保障体制にただちに移行しなければならない。

3 私たち世界平和アピール七人委員会を含め、日本でも海外でも多くの団体と個人が、長年にわたり核兵器廃絶を求め続けてきた。それにもかかわらず、東西冷戦の終結後も核兵器廃絶が実現できなかったのは、既に述べたように、核兵器が役に立つという幻想を持つ人たちがいるためであった。
 オバマ大統領は、同じプラハ演説で、「私の生きているうちには、核廃絶が達成できないだろう」、「核兵器が存在する限り、米国は、同盟諸国に対する防衛を保証するために、安全かつ効果的な兵器を維持する」と述べている。
 日本を含む米国の同盟国は、これまでの核政策を根本的に転換し、核兵器との決別を宣言することによって、米国の核兵器依存の口実を断ち切らせ、米国の核兵器廃絶への歩みを促進させるべきである。

4 現在、米国では2009年末に発表される予定の「核兵器態勢の見直し」(Nuclear Posture Review)の討議が進んでいる。
 2009年10月には広島で、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND、共同議長:川口順子元外相、ギャレス・エバンス元オーストラリア外相)が開催される。
 2010年5月には、オバマ政権発足後はじめての核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議が行なわれる。
 これらの場面で、核兵器廃絶という成果を得るためには、核兵器廃絶を求める世界の世論をさらに強化し、各国が、自らの立場に立って
① 核兵器廃絶の実現を促進するための実効的措置 と、
③ 核兵器廃絶後の世界の秩序についての検討と、それに向けての行動
 を一層強化していかなければならない。

5 日本においては、政府と国民が協力して、
(1) 核兵器の持込み禁止を明確に含めた非核3原則の再確認
(2) 核の傘に依存しない安全保障政策の樹立
(3) 日本を含めた北東アジアの非核兵器地帯の樹立を目指す積極的行動、あるいはモンゴルに倣った1国非核兵器地帯宣言
(4) 非公然核兵器国を含めた全ての核兵器保有国に、核兵器の先制不使用と非核兵器国への核攻撃の否定の要求
(5) パン・ギムン(潘基文)国連事務総長も提案している核兵器禁止条約締結への呼びかけと貢献
などを速やかに実施していかなければならない。

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「イスラエルによるガザへの攻撃の中止を求める緊急アピール」を発表

2009年1月4日

世界平和アピール7人委員会は、ガザ地区に対するイスラエルの攻撃について、次のような緊急アピールを発表した。委員会は、「今回の事態を傍観することはできない、日本からも声を上げなければ、」という考えで一致、年末年始にかけて委員が相互に連絡を取り合い、文案をやりとりする討議を続けてまとめた。

アピール文→  97J.pdf
またはこちら→ [イスラエルによるガザへの攻撃の中止を求める緊急アピール]

2009 97J イスラエルによるガザへの攻撃の中止を求める緊急アピール

2009年1月4日
アピール WP7 No.97J
2009年1月4日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 世界平和アピール七人委員会は、イスラエルが1967年から2005年まで占領を続け、今日まで18ヵ月にわたり封鎖してきたガザ地区に対して、昨年12月27日から続けている空爆、さらに1月3日に開始した地上戦展開の事態を深く憂慮し、以下のとおり緊急に呼びかけます。

1 私たちは、イスラエルに対し、ガザ攻撃をただちに停止することを求めます。きわめて人口密度の高いガザ地区への攻撃が、150万人の民間人を巻き添えにしていることは明らかです。行政・文化教育・宗教施設や民家の破壊もさることながら、民間病院にも被害を与えていることは、ジュネーヴ条約に違反しています(注1)。
 さらにイスラエルの政府と軍に、国連の「占領地における人権に関する特別報告者」リチャード・フォーク氏のガザ地区への立ち入りを認めること、ジャーナリストが同地区に入ることへの制限を撤廃すること、彼らの安全を保証することを求めます(注2)。
 また、イスラエルの政府と軍に、負傷者の搬出・治療と避難を希望する市民の地区外への安全な脱出をただちに保証することを求めます。

2 私たちは、ハマス地方政府にも報復の悪循環を断つよう求めます。また、ガザ地区の市民に共感を寄せるすべての近隣諸国の政府と市民にも、一刻も早い停戦を可能にするために自制を求めます。

3 私たちは、国連と各国政府が、ガザ地区における市民の窮状を深刻に受け止め、現在の惨状に対し、無条件での停戦を求め、事態の解決に向けてただちに人道的立場に立った紛争解決の仲介の労をとることを求めます。国連をはじめとする国際社会は、これまでもガザ地区における市民生活の支援に努めてきました。このたびの人道危機については、国連人道問題調整事務所や市民団体などが重大な関心を寄せています(注3)。私たちは、国連と各国政府に、目下の壊滅的な市民生活への支援をいっそう強化することを求めます。

4 私たちは、日本がこれまで繰り返しパレスチナに行なってきた緊急人道援助を評価します。日本政府は、これにとどまらず、本年より安全保障理事会非常任理事国に就任したことを重く受け止め、フランス政府が具体的提案を行ったように、日本国憲法にのっとり、和平に向けて積極的かつ具体的な尽力を行なうよう求めます(注4)。さらに、日本の税金によるODAによって建設されたガザ地区の施設が破壊されている可能性が大きいため、日本政府が状況を調査する権利を行使し、結果を公表することを要望します。被害が把握できた場合には、イスラエル政府に対して抗議すべきです。

5 私たちは、世界のすべての市民に、平和への意志をさまざまなかたちで表明するよう呼びかけます。


注1
 「文民病院は、いかなる場合にも、攻撃してはならず、常に紛争当事国の尊重及び保護を受けるものとする。」(第4ジュネーヴ条約第18条 1949年)

注2
 2008年12月15日、ガザ地区を訪問しようとしていた国連特別報告者リチャード・フォーク氏は、空港に20時間留め置かれたうえでジュネーヴに強制送還された。同氏は、ハマスがガザ地区を実効支配して以来、イスラエルが住民の最低の生活条件を無視してガザを封鎖していることは「人類に対する罪」の疑いがあるとして、調査のために立ち入ることを求めていた。

注3
 国連人道問題調整事務所被占領パレスチナ地区オフィスは、連日のようにガザの深刻な状況を具体的かつ詳細に発信している。参照:Gaza Humanitarian Situation Report  http://www.ochaopt.org

注4
 「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」(日本国憲法前文より)

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「洞爺湖サミット後の日本と世界」-札幌などで7人委がシリーズ講演会

2008年12月7日

「オバマ政権の分析」も、「宇宙のロマン」も

創立53周年を記念する世界平和アピール七人委員会の講演会が、11月15日(土)の「札幌大学講演会」を中心に、13日から17日まで、札幌、千歳、旭川など北海道各地でシリーズで開かれた。委員会と「七人委員会北海道講演実行委員会」が中心になり、講演会ごとに関連の組織が主催して開かれたもので、洞爺湖サミットで示された世界のうねりと、米大統領選でのオバマ候補の当選を受けて、参加した5人の委員が「平和への思い」と課題を熱く語った。
関連の講演会は、13日(木)から17日(月)まで、別表の通り各地で合計9つ。いわば「世界平和アピール七人委員会2008講演会シリーズ・イン北海道」で、講演会の聴衆は合計約1000人近くに達した。
札幌大学講演会は、利尻島から来た人も含め約400人の聴衆で、会場の同大学プレアホールはほぼ満席。同大学の堀達也理事長があいさつしたあと、山内亮史・旭川大学学長の司会で、武者小路公秀、土山秀夫、小沼通二、池田香代子、池内了の各委員が講演、参加者の質問にも答えた。札幌大学は七人委員会の委員・事務局長だった内山尚三氏がかつて学長を務めた大学。東京からは、故・内山氏の章子夫人も駆けつけた。
講演のテーマは、武者小路委員が「洞爺湖サミットが残したもの-平和に生存できる道を求めて」、土山委員が「『核の傘』と日本の核武装」、小沼委員が「米大統領選後の核廃絶への動きと日本」、池田委員が「食の安全と消費者」、池内委員が「宇宙のロマンと宇宙基本法」。集会の間には、核実験の多さを告発した橋本公氏の映像作品「1945-1998」も上映された。
なお、このシリーズに先立ち、10月5日、札幌・札幌パークホテルで、「医療9条の会」が「7人委員会」と共催の形で、土山秀夫委員と鎌田實・諏訪中央病院名誉院長を講師にプレ講演会を実施した。

▼世界平和アピール七人委員会2008講演会シリーズ・イン北海道

=以下、日時、会場、講演会名、主催者、講演者と「テーマ」、(聴衆)の順=

(1)13日午後 旭川 ロワジール・ホテル旭川 旭川政経文化懇話会講演会
主催:旭川北海道新聞政経文化懇談会
・池田香代子 「100人の村から見えるもの」(40人)

(2)14日正午 千歳 ANAクラウンプラザホテル千歳 千歳恵庭政経文化懇話会講演会
主催:千歳恵庭北海道新聞政経文化懇話会
・武者小路公秀「グローバル情勢と日本の直面する危機」(40人)

(3)14日午後2時 札幌 北海道大学理学部大講堂 「科学者からのメッセージ」講演会
主催:北大大学院理学院、北大科学技術コミュニケーター養成ユニット 日本物理学会北海道支部
・小沼通二「科学者と平和」
・池内了「ダーク成分が支配する宇宙」(80人)

(4)14日午後 札幌 札幌西高 スペシャル授業
主催:北海道立札幌西高校
・池田香代子「100人の村から見えるもの」
・映像作品「Over killed」(橋本公・作品)(50人)

(5)14日午後6時 札幌 北大文系総合棟講堂
世界平和アピール7人委講演会in北大「100人の村から世界を見る-大学の学びは世界とつながっていた」
主催:七人委員会北大講演会実行委員会、九条の会北大、日本ジャーナリスト会議北海道支部
・池田香代子「あなたもこの村に生きています」
・映像作品「Over killed」(橋本公・作品)
・池内了「いま科学と世界を考える」(160人)

(6)4日午後6時半  札幌 北海道環境サポートセンター
主催:日本平和学会北海道・東北区会、さっぽろ自由学校「遊」、ほっかいどうピースネット
・武者小路公秀「国連先住民族権利宣言の意義-反植民地主義の視点から」(40人)

(7)15日午後 札幌 札幌大学プレアホール 世界平和アピール7人委員会札幌大学講演会
「洞爺湖サミット後の日本と世界」
主催:世界平和アピール七人委員会、札幌大学、7人委員会北海道講演会実行委員会
後援:北海道、北海道教委、札幌市、札幌市教委、旭川市、北海道新聞社、朝日新聞北海道支社、毎日新聞北海道支社、読売新聞北海道支社、HBC、STV、UHB、HTB、TVH、北海道弁護士連合会、日本ジャーナリスト会議北海道支部、九条の会・北大
・武者小路公秀「洞爺湖サミットが残したもの-平和に生存できる道を求めて」
・土山秀夫「『核の傘』と日本の核武装」
・映像作品「1945-1998」(橋本公・作品)上映
・小沼通二「米大統領選後の核廃絶への動きと日本」
・池田香代子「食の安全と消費者」
・池内 了「宇宙のロマンと宇宙基本法」(400人)

(8)16日午後2時半 旭川 旭川建設労働者福祉センター「サンアザレア」 世界平和アピール7人委員会旭川講演会
主催:世界平和アピール七人委員会、7人委員会北海道講演会実行委員会
・武者小路公秀「洞爺湖サミット後の日本と世界」
・池田香代子「食の安全と消費者」
・池内了「宇宙のロマンと宇宙基本法」
・小沼通二「米大統領選後の核廃絶への動きと日本」(100人)

(9)17日正午 札幌 札幌後楽園ホテル 北海道政経懇話会講演会
主催:北海道政経懇話会
・武者小路公秀「グローバル情勢と日本の直面する危機」(50人)

2008 96J インドのシン首相来日にあたり、日本政府に対しインドとの原子力協力に反対する要請

2008年10月20日

(アピール No.96J)

2008年10月20日
内閣総理大臣 麻生太郎  様
外務大臣   中曽根弘文 様

 10月21日から23日にかけて、インドのマンモハン・シン首相が来日され、22日に麻生首相と会談することが予定されています。

 インドは、核拡散防止条約(NPT)体制の外で核実験を行い、核兵器を保有していたことから、国際原子力機関(IAEA)による包括的保障措置を受けない国との原子力取引を禁じた原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインにより、長らく、国際的な原子力取引ができない状況にありました。ところが、アメリカのブッシュ政権が、インドとの原子力協力を行えるよう強く働きかけ、去る9月6日のNSGの臨時総会において、インドを例外扱いとする声明が採択されるに至りました。これを受けて、インド政府は、アメリカ、フランスと同様に、日本政府にもインドに対する原子力協力を要請するものと思われます。
 しかし、日本政府はこれまで繰り返し、インドにNPTへの加盟と包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名を求め、NSGのガイドラインの変更にあたっても、インドに同様の要求をしたと述べております。
 ついては、日本政府のこれまでの立場を踏まえ、NSGのガイドラインの変更にかかわらず、NPT加入とCTBTの署名・批准を行わない限り、インドに対して原子力協力を行わないことを明確にするよう、強く求めます。

賛同団体(50音順):
核兵器廃絶市民連絡会
 連絡責任者 内藤 雅義

核兵器廃絶ナガサキ市民会議
 代表 土山 秀夫

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
 共同代表 岡本 三夫 河合護郎 森瀧春子

原子力資料情報室
 共同代表 伴 英幸

原水爆禁止日本国民会議
 議長 市川 定夫

原水爆禁止日本協議会
 事務局長 高草木 博

世界平和アピール七人委員会
 事務局長 小沼 通二

日本原水爆被害者団体協議会
 事務局長 田中 照巳

日本YWCA
 会長 石井 摩耶子

連絡先:
 フィリップ・ワイト
  原子力資料情報室
   〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B
   電話:03-3357-3800 FAX:03-3357-3801
 内藤雅義
  東神田法律事務所
  〒101-0053 東京都千代田区神田美土代町11-8SKビル2階
  電話:03-5283-7799、FAX:03-5283-7791

 PDFアピール文→ 96J.pdf

2008 95J インドを特例扱いするNSGガイドライン変更にあたっての声明

2008年9月9日

(アピール No.95J)
 9月6日まで延長された原子力供給国グループ(NSG)の臨時総会において、最終的に、インドを例外として扱うガイドラインの変更が決定された。すなわち、核拡散防止条約(NPT条約)の枠外で核兵器開発を進めたインドに対し、NPT条約が求めている国際原子力機関(IAEA)による包括的保障措置を受けないで原子力取引を認めるという例外的扱いが認められたのである。今回の決定は、NPT体制の基盤を大きく揺るがす可能性を秘めるものであり、到底容認できない。

 本年7月、洞爺湖サミットにおけるアメリカのブッシュ大統領と、インドのシン首相による米印原子力協定促進の合意以後、急激に事態が進展した。8月1日には、IAEA理事会によるインドとIAEAとの部分的な保障措置協定の承認が行われ、その後、8月21日、22日には、IAEAによる包括的保障措置を受けている国以外との原子力取引を禁じたNSGのガイドラインについて、インドに例外措置を認めるかが議論されるに至った。NSGの臨時総会においては、アイルランド、オーストリア、オランダ、スイス、ニュージーランド、ノルウェーといった各国から強い異論が出された。そのため9月4日、9月5日にも再度議論がなされ、6日まで延期された。しかし、最終的に、アメリカの強い圧力により、インドを例外扱いにするガイドラインの変更が認められてしまったのである。

 日本の政府は、被爆国の政府でありながら、広島、長崎という被爆地の被爆者団体、両市長、両県知事、更には市議会や県議会の決議、その他多くの地方自治体決議、永年にわたって核兵器廃絶運動に携わってきた全国の被爆者団体や反核団体を含む平和市民団体の一致した要求、更に最近では超党派の国会議員の中にも起こりつつあった反対の声を無視して、NPT体制への打撃を最小限にする努力さえせず、インドを例外扱いにする米印原子力協定を容認したのである。われわれは、被爆国の国民としてこのような政府を持ったことに対し、慚愧に絶えない思いである。
 今後われわれは、今回核不拡散と核兵器廃絶のためにともに戦った人々とともに、日本政府が今回のNSG会合でどのような対応をしたのか、納得のいく説明を求めるとともに、米議会内には反対を表明する議員も多いことを踏まえ、今後は米国議会において本協定が承認されないよう引き続き努力をつづけていく。そして、日本政府にはあらためて核兵器を違法として明確に核兵器廃絶をめざし、そのための多国間協議を早急に開始するイニシアティブをとることを強く求めていく所存である。

2008年9月9日
インド・パキスタン青少年と平和交流を進める会
 世話人代表 森瀧春子
核兵器廃絶市民連絡会
 連絡責任者 内藤雅義
核兵器廃絶ナガサキ市民会議
 代表 土山秀夫
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
 共同代表 岡本三夫 河合護郎 森瀧春子
原子力資料情報室
 共同代表 伴英幸
原水爆禁止日本国民会議 (原水禁)
 議長 市川定夫
原水爆禁止日本協議会(日本原水協)
 事務局長 高草木博
原水爆禁止広島県協議会
 筆頭代表 大森正信
世界平和アピール7人委員会
 事務局長 小沼通二
日本原水爆被害者団体協議会
 事務局長 田中煕巳
日本国際法律家協会
 会長 新倉修
日本反核法律家協会
 事務局長 大久保賢一
日本YWCA
 会長 石井摩耶子
NO DU(劣化ウラン兵器禁止)ヒロシマ・プロジェクト
 代表 嘉指信雄
広島県被爆者団体協議会
 理事長 坪井直
広島県被爆者団体協議会
 理事長 金子一士
(財)広島平和文化センター
 理事長 スティーヴン・リーパー
ふぇみん婦人民主クラブ
 共同代表 設楽ヨシ子

 PDFアピール文→ 95J.pdf

「宇宙軍拡」「軍需産業拡大強化」を許すな

2008年8月26日

「宇宙基本法の監視を」とアピール
「宇宙開発戦略本部」発足に当たって国民に訴え

世界平和アピール七人委員会は、26日午後、池田香代子、小沼通二両委員が記者会見し、27日に内閣府の「宇宙開発戦略本部」が発足するのを前に、「『宇宙基本法の監視を』-国民に訴える」とのアピール(全文参照)を発表した。
七人委員会は昨年11月、「宇宙基本法案の再検討を」と題するアピール(参照)を発表、各方面に訴えかけてきた。ところが、同法案は、当初、与党案として提出されたものが突然撤回され、与党、民主党のプロジェクトチームによる協議による民主党を含めた形の議員立法として提出され、わずか2週間、短時間の審議でほとんど国会での論議がないまま、両院を通過し成立した。これに基づき、戦略本部発足へと進んできたため、「宇宙空間を平和利用に限る原則を改めて国民に訴えたい」とアピールを発表することになった。

 記者会見で、池田委員は衆院の審議記録を手に、「たとえば衆院ではわずか2時間の審議で、可決されている。与党案と変わったのは『日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ』という言葉が入っただけといっていい。審議はプロジェクトチーム同士が話し、まるで『おしゃべりの場』のようで、印刷しても25枚にしかならない程度のひどいものだ。産業が軍事に傾けば必ず衰退する。産業界にとってもプラスではない。本質的な問題を捉えて踏みとどまってほしい、と本当に思う」などと述べた。

 

 また、小沼委員・事務局長も「提案理由の説明はわずか909字しかなかった。そこで言われているのは、安全保障情勢が変化しており、宇宙の開発は国家戦略にしなければならず、安保に貢献する、といったことだけだった。現在の宇宙航空研究開発機構についても『平和利用に限る。平和利用とは非軍事だ』という原則は、当然見直すとされ、議論の中では『安全保障は何より大事だ』と強調されている。『日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ』といいながら、『平和利用』と『公開』を崩していくような道を許してはならない。国会の議事録は短いものだから、直接皆さんも当たってほしい」と強調した。

アピール文→  wp7-94j.pdf
またはこちら→ [アピール「宇宙基本法の監視を」―国民に訴える]

2008 94J 「宇宙基本法の監視を」―国民に訴える

2008年8月26日
アピール WP7 No.94J
2008年8月26日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 宇宙基本法案が今年5月21日に国会で可決され、成立しました。私たち世界平和アピール七人委員会は、昨年11月に、自民・公明両党の議員が提出した法案に対して「宇宙基本法案の再検討を求めるアピール」を発表しましたが、このたびの法律の成立過程および今後の運用について危惧の念を消すことができないので、宇宙開発戦略本部発足の機会に改めて国民の皆様に訴えたいと思います。

 まず、この法案審議の異様さに注目したいと思います。昨年提出された自民・公明案は一度も審議されることなく、5月9日の衆議院内閣委員会において理由の説明がないまま撤回され、ただちに自民・公明・民主の三党案が提出されました。そのまま2時間ほどで委員会審議が終了して可決され、4日後には衆議院本会議で一切の審議がないまま採決されました。続く参議院の内閣委員会でも実質2時間ほどの審議だけで可決され、提出からわずか2週間で、参議院本会議で採決・成立という速さでした。このように急ぐ理由は何も説明されず、私たちの意見を含めた国民の声にこたえ、現在と将来の国民に責任をもって決定する姿勢がまったく見られませんでした。

 この法律は、これまで専ら平和利用に徹して「非軍事」を掲げてきた日本の宇宙開発を、軍事利用を目的としたものに衣替えしようという狙いが明白です。具体的な例を挙げれば、日本の宇宙開発を進めている宇宙航空研究開発機構(JAXA)を規定する法律(宇宙航空研究開発機構法)の第4条には「平和目的に限る」と明記されていて、成立時の国会審議において、これは「非軍事」だと確認されてきました。ところが、今回の参議院での審議の中で、「非侵略」と変更された機会に当然見直しが行なわれると提案者が明言したのです。「非軍事」の研究開発機関の存在自体を許さないという重大発言が、なんら深められることなく国会で認められている怖さを感じます。

 基礎研究を無視した目的研究だけでは健全な開発を実現させることはできません。ましてや、他国並みの防衛力を求めることは、際限ない宇宙の軍事予算拡大を認めることにつながります。防衛目的と攻撃目的は分けられるものでなく、防衛力強化は、攻撃力強化を誘発することは歴史が示しています。宇宙軍拡への道なのです。私たちは、日本の産業の健全な発展を願うものですが、安全保障を軸とした研究開発への動員と軍需産業の拡大強化には同意できません。

 今後、この基本法を基礎にして、具体的な運用のための法律が提案されることになっています。私たちは、私たちを含めた国民が、「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ」と書かれているこの基本法の運用方針をよく検証し、あくまで宇宙利用が平和憲法の原則から名実ともに外れることがないよう厳しく監視していくよう訴えます。

核兵器拡散を招く米印原子力協定に、反対を改めて呼び掛け

2008年8月6日

世界平和アピール七人委員会は、広島の被爆の日にあたる8月6日、93回目のアピールとして、現在進められている米国とインドの原子力協力計画に日本政府が協力すべきでない、とする「日本政府は米印原子力協定に反対を」を発表しました。このアピールは、2006年6月21日のアピールに続くものです。

インドは核兵器不拡散条約(NPT)への参加を拒み続けながら、核兵器を開発し、核爆発実験を行ない、核兵器の放棄を拒み続けています。
ところが、米国は、このインドとの原子力協力を進める協定を締結、具体的な作業を続けています。これは、明らかに、NPT加盟国としての義務に違反するもので、イランや北朝鮮の核開発を阻止しようとしていることとも矛盾しています。日本は、原子力供給グループ(NSG)の一員として承認を求められていますが、これを認めるわけにはいきません。
こうしたことから、改めてアピールを発表することにしたもので、アピールは、国連の場で核廃絶を求め続けている被爆国日本の政府に、明白な反対の姿勢を貫くことを求めています。

この文書は、本日(6日)午前、首相官邸及び外務省に届けると共に、外務省記者クラブで配布。引き続き、米印両国と原子力供給グループ諸国にも直接呼びかけることにしています。

アピール文→  wp7-93j.pdf    七人委員会とは→  wp7-prof.pdf

2008 93J 日本政府は米印原子力協定に反対を

2008年8月6日
アピール WP7 No.93J


2008年8月6日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 私たち世界平和アピール七人委員会は2006年6月21日、当時の小泉総理あて、ブッシュ大統領との会談において「米印間の原子力協定について日本も賛同するように」との要請があっても、受け入れることのないよう要望書を提出しました。
 その後、インド国内の政治的事情によって協定は実現を見ないまま、経過していました。ところが最近になって、インドの国会で協定調印への環境が整えられたことにより、実現の可能性がにわかに高まってきたことが伝えられています。

 私たちが前回の要望書でも指摘した、インドが核兵器不拡散条約(NPT)の発足当初から不平等を理由に加盟せず、国際世論を無視して核実験を行い、公然と核兵器保有国になった事実はその後何一つ変わっていません。このような状況の中で、NPT加盟国である米国がインドを有力な原子力市場であるとみなし、また対中・対イスラムの同盟国ともみなして、インドに対してNPTの加盟を促さず、例外扱いとして認めようとすることは、NPTの基本理念に反する行為であることは明白です。それと同時に、イランや北朝鮮の核開発を阻止しようとすることとも矛盾します。しかも日本など45カ国からなる原子力供給グループ(NSG)の全会一致の承認が得られにくいとみなすや、米国はその規定の変更を試みようとさえしています。

 私たちは、広島への原爆投下の日に当たり、被爆国である日本の政府がこうしたNPT体制の崩壊につながりかねない米印原子力協定に対して、インドがNPTと包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟することを前提条件としない限り、賛同できないむね、米国政府とインド政府に強く訴えることを要望します。