2008 95J インドを特例扱いするNSGガイドライン変更にあたっての声明

2008年9月9日

(アピール No.95J)
 9月6日まで延長された原子力供給国グループ(NSG)の臨時総会において、最終的に、インドを例外として扱うガイドラインの変更が決定された。すなわち、核拡散防止条約(NPT条約)の枠外で核兵器開発を進めたインドに対し、NPT条約が求めている国際原子力機関(IAEA)による包括的保障措置を受けないで原子力取引を認めるという例外的扱いが認められたのである。今回の決定は、NPT体制の基盤を大きく揺るがす可能性を秘めるものであり、到底容認できない。

 本年7月、洞爺湖サミットにおけるアメリカのブッシュ大統領と、インドのシン首相による米印原子力協定促進の合意以後、急激に事態が進展した。8月1日には、IAEA理事会によるインドとIAEAとの部分的な保障措置協定の承認が行われ、その後、8月21日、22日には、IAEAによる包括的保障措置を受けている国以外との原子力取引を禁じたNSGのガイドラインについて、インドに例外措置を認めるかが議論されるに至った。NSGの臨時総会においては、アイルランド、オーストリア、オランダ、スイス、ニュージーランド、ノルウェーといった各国から強い異論が出された。そのため9月4日、9月5日にも再度議論がなされ、6日まで延期された。しかし、最終的に、アメリカの強い圧力により、インドを例外扱いにするガイドラインの変更が認められてしまったのである。

 日本の政府は、被爆国の政府でありながら、広島、長崎という被爆地の被爆者団体、両市長、両県知事、更には市議会や県議会の決議、その他多くの地方自治体決議、永年にわたって核兵器廃絶運動に携わってきた全国の被爆者団体や反核団体を含む平和市民団体の一致した要求、更に最近では超党派の国会議員の中にも起こりつつあった反対の声を無視して、NPT体制への打撃を最小限にする努力さえせず、インドを例外扱いにする米印原子力協定を容認したのである。われわれは、被爆国の国民としてこのような政府を持ったことに対し、慚愧に絶えない思いである。
 今後われわれは、今回核不拡散と核兵器廃絶のためにともに戦った人々とともに、日本政府が今回のNSG会合でどのような対応をしたのか、納得のいく説明を求めるとともに、米議会内には反対を表明する議員も多いことを踏まえ、今後は米国議会において本協定が承認されないよう引き続き努力をつづけていく。そして、日本政府にはあらためて核兵器を違法として明確に核兵器廃絶をめざし、そのための多国間協議を早急に開始するイニシアティブをとることを強く求めていく所存である。

2008年9月9日
インド・パキスタン青少年と平和交流を進める会
 世話人代表 森瀧春子
核兵器廃絶市民連絡会
 連絡責任者 内藤雅義
核兵器廃絶ナガサキ市民会議
 代表 土山秀夫
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
 共同代表 岡本三夫 河合護郎 森瀧春子
原子力資料情報室
 共同代表 伴英幸
原水爆禁止日本国民会議 (原水禁)
 議長 市川定夫
原水爆禁止日本協議会(日本原水協)
 事務局長 高草木博
原水爆禁止広島県協議会
 筆頭代表 大森正信
世界平和アピール7人委員会
 事務局長 小沼通二
日本原水爆被害者団体協議会
 事務局長 田中煕巳
日本国際法律家協会
 会長 新倉修
日本反核法律家協会
 事務局長 大久保賢一
日本YWCA
 会長 石井摩耶子
NO DU(劣化ウラン兵器禁止)ヒロシマ・プロジェクト
 代表 嘉指信雄
広島県被爆者団体協議会
 理事長 坪井直
広島県被爆者団体協議会
 理事長 金子一士
(財)広島平和文化センター
 理事長 スティーヴン・リーパー
ふぇみん婦人民主クラブ
 共同代表 設楽ヨシ子

 PDFアピール文→ 95J.pdf