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先進工業国の責任の自覚を  G8各国首脳らにアピール

2008年6月29日

世界平和アピール七人委員会は、来月北海道洞爺湖畔で開かれる「先進国首脳会議」(G8サミット)に向けた「北海道洞爺湖サミット参加国首脳への要望」をまとめ、各国大使館、代表部を通じて首脳に送るとともに、午後6時から、武者小路公秀、井上ひさし、小沼通二の3委員が記者会見し、アピールを発表、記者の質問に答えました。
アピールでは、G8首脳に、グローバル経済の拡大のもとで、「価格高騰や食糧不足が現実化し、国家間でも各国内でも経済的社会的傘が広がり、社会不安や軍事紛争の危機を招いて」いると指摘。「先進工業国の責任を自覚し、問題の根幹を捉えた的確な決定を」と訴え、「地球環境の保護、国際金融の規制ルール、国際的な人権の擁護、核兵器の禁止などについて積極的な決定」について期待を表明するとともに、(1)環境対策は弱者の視点から(2)「反テロ」にな尾を借りた戦争や人権の抑圧に反対する(3)核兵器保有国は削減義務の履行を-の3点をポイントに要望しています。
(アピール全文参照)


記者会見する井上ひさし、武者小路公秀、小沼通二の各委員(左から)

2008 92J 北海道洞爺湖サミット参加国首脳への要望

2008年6月27日
アピール No.92J
2008年6月27日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 世界平和アピール七人委員会は、北海道洞爺湖畔に集まるG8首脳各位に対し、先進工業国の責任を自覚し、問題の根幹を捉えた的確な決定をくだされることを切に望みます。
 いま世界は、拡大するグローバル市場経済のもと、原油などの価格高騰や食糧不足が現実化し、国家間でも各国内でも経済的社会的格差が広がり、社会不安や軍事紛争の危機を招いています。
 世界の不安を取り除くには、民主的で公正な国際関係と市民社会の積極的な関与が必須であり、そこでの先進工業国の責務は重大です。今回の協議において、地球環境の保護、国際金融の規制ルール、国際的な人権の擁護、核兵器の禁止などについて、積極的な決定をされることを期待し、次のように要望します。

1)環境対策は弱者の視点から

 私たちは、今回の協議が地球温暖化に対処しようとしていることを高く評価します。環境においても強者であるG8には、地球上のすべての弱者の視点に立って対策を講じる責務があります。
 しかし、CO2削減などの技術的な施策に力点が置かれ、環境問題の根底にグローバル経済の影響があることへの認識があまり感じられないことに対して、違和感をいだかざるをえません。
 たとえば日本はホスト国として、地球温暖化問題と食糧問題との不可分の関係を主要議題にしようとしています。それは評価しますが、提案の中心は、高収量の品種の開発・普及や農業技術の移転などです。もっぱら技術面を強調することで、原油や穀物価格の高騰を招いている投機マネーや、貧困層の食糧を奪うことになるバイオ燃料の問題から目をそらすことがあってはなりません。
 環境保全と開発の両立をうたい、開発途上国の協力を得ようとしていることは理解します。しかし報道によると、準備会議では、途上国への技術開発援助などが突出して議論されたようです。すでに温暖化の被害を受けている、そして今後ももっとも受けやすいのは、開発途上国の貧困層や、先住民など伝統的な生活を送っている人々、中でも女性や子どもです。脆弱な社会経済状況を克服しようとしている人々や、その支援にあたっている国際的な市民運動が進めている、被害を未然に防ぐことができる国際的な仕組みつくりを支援するために、サミットにおいて真剣に議論されることを希望します。
 CO2排出権取引については、環境保全に一定の効果はあるものと認めますが、国際投機マネーの流入が金融開発途上国への種々の阻害要因になりかねない危険に留意し、この制度が本来の目的を果たすべく配慮されるよう要請します。

2)「反テロ」に名を借りた戦争や人権の抑圧に反対する

 私たちは、今回の協議において、テロをはじめ国際組織犯罪の防止策が協議されることにとくに注目しています。「反テロ」戦争が、問題の文化社会的・政治経済的な根本原因の除去よりも、処罰と排除、監視と抑圧といった対症療法的な軍事的・警察的対策を重視していることに強い危惧を覚えます。
 いまや監視体制は街角から宇宙までひろがり、テロ容疑者の尋問のための秘密収容所や、グローバル格差が生み出す難民・「非合法」移住労働者などの収容所が、南北格差の境界線に乱立して、新たな「鉄格子のカーテン」をつくりだしている観があります。先進工業国の利害を優先するあまり、開発途上国の貧困層の不安と絶望を増大させるこうした対策は、先進工業国内の格差拡大とともに社会不安を助長し、テロと犯罪の温床となっている可能性すら見受けられます。
 今回の協議では、「反テロ」戦争という発想を脱し、世界のすべての人々が平和に生存できる世界を構築する責任を確認されるよう強く希望します。

3)核兵器保有国は削減義務の履行を

 私たちは、核兵器保有国が未だに核兵器使用を否定していないことを大いに危惧しています。いかなる理由であれ、もし核兵器が使用されれば、人類史上最大の環境破壊になることに疑いの余地はありません。その意味で、今回、核兵器の拡散防止が協議されることを全面的に支持します。
 しかし、核の平和利用と軍事利用の境界があいまいになっている今日、核兵器を保有したり、自国内への配備を容認したり、核の傘に依存するなどの安全保障政策を保持する国がある限り、核兵器不拡散を徹底させることは不可能です。
 サミットの全参加国が、核軍備の縮小など核兵器不拡散条約第6条(注1)に明記された約束をあらためて想起し、各国がただちに明確な具体的計画を策定し、速やかに実施に移すことを要望します。その意味からも、最近京都でオーストラリアのケビン・ラッド首相が発表した核不拡散・軍縮国際委員会の設立提案(注2)をサミット参加国が積極的に支持し、協力されるよう要望します。


注1 核兵器不拡散条約 第六条(条文)
 各締結国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。

注2 ラッド首相の提案
 オーストラリアノケビン・ラッド首相は、来日第2日の2008年6月9日に、広島から移動した京都で、核不拡散・軍縮国際委員会の設立を提案した。この委員会は、キャンベラ委員会、東京フォーラムの成果を再吟味し、残された問題を確認し、2010年のNPT再検討会議を視野に入れて将来の行動計画を発展させることを目標としている。
 キャンベラ委員会(正確には「核兵器廃絶についてのキャンベラ委員会」)は、核兵器のない世界への現実的提案を作るため1995年11月にオーストラリア政府が設立した国際的な独立の委員会で、1996年8月に詳細な報告書を発表した。東京フォーラム(「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」)は、1998年に日本政府の呼びかけで発足し、1999年に17項目の提言を含む報告書をまとめた。

宇宙基本法案の再検討を求めるアピールを発表

2007年12月7日

世界平和アピール七人委員会は、11月19日、前国会から継続審議になっている宇宙基本法案について、各政党と衆参両院の内閣委員会委員長などに申し入れるとともに、文部科学省の科学技術記者クラブで記者会見し、基本的な見直しを求めるアピールを発表しました。

記者会見には、池内、池田、小沼の3委員が出席、「法案は軍事利用に道を開くものであり、内容、表現とも明らかに未熟・稚拙です。私たちは初心に立ち返って再検討し、1969年の全会一致の国会決議に基づく宇宙基本法制定を目指していただきたい」と強調しました。(アピール全文参照)

「身近なところから、科学と平和を」七人委員会が新潟・松之山で創立記念日の講演会

2007年11月27日

世界平和アピール七人委員会は、創立52周年記念日の11月11日、新潟県十日町市の市立里山科学館・越後松之山「森の学校・キョロロ」で、講演会を開催した。
平和と地域、農業、環境の関わりにも注目しようと、同科学館の顧問を務める池内了氏が、メンバーに加わった機会に開くことにしたもので、委員会が大都市以外で講演会を開くのは初めて。所用で欠席した武者小路公秀、土山秀夫の両委員を除き、今年白寿を迎えた伏見康治名誉委員をはじめ、井上ひさし、池田香代子、大石芳野、小沼通二(事務局長兼務)、池内了の全員が参加した。
会場は地元の人たちのほか、北海道や神奈川から駆けつけた人も含めて約100人でぎっしり。標本や写真が展示されたホールで、熱のこもった会になった。

講演会では、テーマは「日本の農業、世界の農業」。伏見名誉委員の挨拶、小沼委員・事務局長があいさつ、井上ひさし氏が講演、大石委員が自らが撮影した世界の農村の写真を見せながら講演したあと、池田、池内氏らがコメントを述べた。
井上さんは、「昭和35年、岩手県が日本で最後に食糧の自給自立を達成したとき、大変なお祝いをした。しかし、日本人が米を食べなくなり、自由化されて、農業者は米では生活できなくなった。農水省は13370円だとしているササニシキが実際には11000になってしまっているという。このあたりの魚沼産コシヒカリも、カリフォルニアでも作れるから、魚沼でできるものの20倍くらいあるのではないか」と切り出した。
井上さんは、棚田が水をたたえていた話やマグロが買い付けられなくなっている話、米国の食糧の話などに言及、「日本人が持っているものは何なのだろうか。憲法、原爆体験もそうだが、いまわれわれ日本人が持っていたものを持ちこたえ、再発見することが求められているのではないか」と結んだ。

続いて話したのは大石委員。会場には、ちょうどこの朝、紫綬褒章を受けたこともあってその活動を紹介する番組が当日NHKテレビに登場したばかり。会場には「アジアの農村風景の写真」も展示された。
大石さんは、「ここ数10年世界の人間、戦争、平和ととり続けてきた。戦争は農村を破壊する。しかも、武器と武器の戦いが終わっても傷跡が残っている」と、写真を見せながら話し、聴衆に感銘を与えた。

このあと、池内委員が「キョロロ」の歴史を語りながら、「科学を身近なものにしていかなければならない。学校や家庭を結んだ人間を育てる場として機能したい。楽しみながら、地域の中から平和を作っていこう」と呼び掛けた。
また池田さんは、「もし世界が100人の村だったら」の経験を語り、世界で核実験が続けられてきた事実を現代アートで表現した、映像作家の橋本公さん(箱根ラリック美術館)の作品を紹介。「核実験がこんなに続いているのか!」と衝撃を与えた。
講演会の後、聴衆との話し合いも行われ、井上さん、池内さんなどが質問に丁寧に答えていた。

2007 91J 宇宙基本法案の再検討を求めるアピール

2007年11月19日
アピール第91号J
2007年11月19日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了
名誉委員 伏見康治

 私たち世界平和アピール七人委員会は、去る6月20日に議員立法によって<国会に上程され、9月10日に召集された国会において継続審議になっている「宇宙基本法案」に対して、宇宙を軍事の場とする道を拓く第一歩となる内容を含んでいるという重大な危惧を抱いており、拙速な基本法制定を行うべきではないと考えます。

 人類は、数々の人工衛星や探査機を通じて宇宙の謎に挑み、逆に宇宙から地球を眺めて私たち自身の生き様を省察してきました。宇宙は限りない憧れと自省の場として人々の夢と思索をかき立ててきたのです。他方、残念なことに、宇宙は、安全保障を口実にして、ミサイルや軍事衛星が飛び交う場ともなっています。人類に残されたロマンの対象が軍事的に利用されているのです。

 このようななかで日本は、1969年に衆議院本会議の全会一致の決議によって、宇宙の開発及び利用は、「平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び社会の福祉をはかり、あわせて産業技術の発展に寄与するとともに、進んで国際協力に資するため」に行うと謳い、参議院においても全会一致で、「平和利用の目的に限りかつ自主・民主・公開・国際協力の原則のもとにこれを行う」と決議し、宇宙を「非軍事」の場としてのみ利用することを誓ってきました。
 これは、「平和的目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であることを認識し、宇宙空間の探査及び利用がすべての人民のために、・・・行なわれなければならないことを信じ、・・・協定した」1967年の宇宙条約の基本的精神を諸外国に先駆けて確認した、世界に誇るべき目的と原則でした。

 ところがこのたびの法案提出によって、危機管理・安全保障強調の動きと軌を一にするかのように、「非軍事」をやめて、「宇宙開発は・・・安全保障に資するよう行われなければならない」とする宇宙基本法の制定が進められようとしています。さらに法案では「宇宙開発に関する情報の適切な管理のために必要な施策を講ずる」としております。ここには、公開の原則を捨て去って秘密裏の宇宙開発を進める意図が明白に読み取れます。
これは、自衛隊独自の早期警戒衛星や軍事用通信衛星・電波傍受衛星などの保有・運用を可能とし、自衛の名の下に宇宙開発を「軍事化」に拡大させる危険性をもつものであります。防衛力強化と攻撃力強化は、相互に他方を誘発し合う関係にある表裏一体の軍拡の道であることを忘れてはなりません。
いったんこの動きを認めるなら、さらに、軍事機密を梃子として軍産複合体の成立を促し、国家の動向を誤らせかねない事態へと推移する可能性もあります。
さらに、情報管理の強化は、本基本法案が謳う国際競争力の強化につながる健全な産業の育成に反することになります。

 また、本法案においては、衆議院決議にあった「学術の進歩」の言葉が総則から消え、替わって「我が国の利益の増進」が三度も繰り返し謳われております。これは学術の進歩が開発・利用の基礎であることを忘れ、国家の利益のために宇宙を利用しようとする意図が露わなものであり、日本の品位をおとしめ、諸外国から蔑みをもって見られることは必定です。

 なお本法案は、総則に、「宇宙開発」が23回、「ねばならない」が7回あらわれるなど、内容・表現ともに未熟・稚拙です。

 私たちは、日本が、あくまで「非軍事」の旗を掲げて宇宙の平和利用に徹し、人々に夢とロマンを与え続けることこそが真の平和国家としてとるべき道であると考え、初心に立ち返って1969年の全会一致の国会決議に基づく宇宙基本法制定を目指すことを求めます。

200人超す参加者が白寿を祝う伏見康治先生の白寿の会

2007年8月23日


数え年99歳を迎えた伏見康治先生の白寿を祝う会が、3日午後、東京・神田の学士会館で開かれた。伏見先生は1909年(明治42年6月29日生まれで、今年は数えの99歳。世界平和アピール七人委員会の全委員をふくむ、70人あまりの人たちの呼びかけで開かれたもので、会場には広い分野の200人を超す人々が集まった。
会は伏見先生の愛弟子の大塚益比古・元原子力安全研究協会常務理事の司会で進められ、最初に1961年に伏見先生が名大プラズマ研究所の初代所長に招かれたとき名大にいた山本賢三さんと、1983年から参院議員を務めたとき、後半の3年間を同僚として勤めた広中和歌子さんが祝辞を述べた。続いて、伏見先生のあと日本学術会議会長を務めた元国立公害研究所長の近藤次郎さんが乾杯の音頭をとった。

▼山本賢三さん(名大名誉教授)の祝辞
私は7年制の東京高等高校の同窓で、私が尋常科1年生のとき、伏見先生が高等科の2年生くらいだったと思う。指揮者の朝比奈隆も同窓で、そのころから伏見先生の名前は知っていた。確か科学部の雑誌に論文を書かれたり、記念祭の絵を描かれたりしていたことを覚えている。私は電気屋で専門は少し違うが、親しくしていただいた。
プラズマ研究所に来ていただいたのは、先生が「原子力3原則」を片づけられ、関西原子炉問題で苦労された後だったが、はじめて核融合の本格的な研究が始まった。伏見先生が尽力してできあがった臨界プラズマ試験装置は、いまの国際炉につながっている。
伏見先生は新しい物好きで、しかも関心がはっきりしている方だ。自分の関心がないときは居眠りをしているが、オリジナルの話が出ると食いつくように、耳を傾ける。そして判断も速く、はっきりしている。
そんな先生だから「左翼学者」のレッテルを貼られて英国がビザを出さなかったことがあった。中曽根さんは「オポチュニストだ」と言ったから私は反論した。多くの専門を包含したコミュニティを作り、貢献された。お元気で過ごしてほしい。

▼広中和歌子さん(参院議員)の祝辞
1986年、公明党の人が来て「選挙制度が変わったから、出たい人より出したい人、でやりたい。出てほしい」と言われた。私は集団疎開を経験し、米国ではケネディ大統領とも会い、公民権運動に感銘を受けていたから、光栄だと思いお受けした。それで短い期間だったが、参議院でご一緒した。林健太郎さん、田英夫さんなどがいた。
私が関心を持ったのは環境問題だった。伏見先生はCO2の問題について、「世界の7割を占める海がどうCO2を吸収しているかのメカニズムはまだ分かっていないんだよ」と話してくれた。林健太郎先生からは脳死の不可逆性についての話を伺った。
白寿というのはすごいことだ。どうか、これからも伏見先生には社会の指標となってほしい。


この後、懇談に続き、会場を飾った多数の折り紙のバラの花の作者であり、国際的に「川崎ローズ」として知られるこの折り方の創作者でもある徳島の数学者の川崎敏和さんが実演つきでお祝いを述べ、小沼通二さんが記念刊行物の紹介をした。続いて、伏見先生の子ども、孫、ひ孫さんたちの紹介があり、息子さんの伏見譲さんの紹介で伏見先生の99年の歩みを示す写真が会場に映し出された。
そして、長崎から駆けつけた土山秀夫さんが「いまの七人委員会のメンバーはしゃべり出したら止まらない人たちばかりだが、伏見先生はいつも頷きながら聞いていらっしゃって、節目節目に的確にコメントしていただいている。ご高齢で退かれると言うことだったが、私たちは何とかの残っていただきたい、とお願いして、名誉委員と言うことでいつでも出席していただくようにしている。私の専門は医学だが、人間の寿命は医学的には110歳、120歳は珍しくなくなっている。どうかお元気で、いつまでもご指導をお願いしたい」と話した。
最後に、登壇した伏見先生は「こんなに長生きするとは思わなかったので、心の準備をしないまま99歳になってしまった。これからどう暮らしていったらいいかわからないが、いろいろやって、平和運動に関連する仕事が最後の仕事になっている。皆さんのお助けで社会奉仕をしてきたが、能力がなくてあまり役に立っていないことが残念だ。お忙しいところを、集まりくださって、こんな楽しい会を開いてくださって、本当にありがとうございました」と挨拶した。
参加者には、折り紙のバラの花と「生い立ちの記」、「『波打つ電子-原子物理学10話』について」がおみやげに配られた。
この日は、ちょうど東京で開かれる原子核物理学国際会議(INPC2007)の一環として「湯川秀樹生誕100年記念講演会」が開かれていたため、小沼さんから紹介があり、そこに向かう人もあり、記念すべき日となった。

(事務局・丸山重威)

2007 90J 国民投票法案に対するアピール

2007年4月12日
アピール第90号J
2007年4月12日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了
名誉委員 伏見康治

 私たち世界平和アピール七人委員会は、現在衆議院で審議中の「日本国憲法の改正手続に関する法律案」(与党案)ならびに「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」(民主党案)について、憲法改正というもっとも根源的かつ基本的な投票を、投票率に関係なく、有効投票数の過半数という決め方をするのは適切でないと考えます。

日本国憲法第九六条によれば、憲法改正における国会の役割は各議院の総議員の三分の二以上の賛成で発議し、国民に提案することとされています。憲法改正における主役は国民です。ここに示されているとおり、衆参両院においては、有効投票数ではなく総議員数が基礎になっています。

国外においても、英国では、全有権者の40パーセント以上の賛成を必要としていますし、韓国では有権者の過半数が投票しなければ改憲が成立しないという最低投票率制度を採用しています。

そこで総議員数を基礎にしている国会の例と、総有権者を基礎にしている諸外国の例にならって、総有権者の過半数の賛成を必要とするという成立条件を加える修正をおこなうことを強く要請します。それによって初めて、主権者としての国民の過半数が支持する改正をおこなうこととなり、主権在民の下での憲法を自らのものととらえることが可能になると考えます。

私たちと同様の主張は、衆議院の日本国憲法に関する調査特別委員会公聴会における公述人も発言しています。国の根幹に関わる憲法改正の手続きは、拙速で進めることなく、決定していただきたいと切に要望いたします。

2006 89J 朝鮮民主主義人民共和国の核実験発表に対するアピール

2006年10月11日
アピール第89号J
2006年10月11日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二

 私たち世界平和アピール七人委員会は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府が発表した10月9日の核兵器実験実施について、いかなる条件の下であれ、朝鮮半島と日本を含めた周辺、ひいては世界の平和と人間の安全保障の立場から、反対を表明する。核兵器によって、国の安全が保証されると考えるのは幻想に過ぎない。1945年以来、世界各地で発生している被爆の実態を思い起こせば、人類が核兵器と共に存続していくことができないのは明らかである。

 私たちは、日本はじめ関係各国が、北朝鮮がこのようなかたちで自国の安全を保障しようと結論した遠因を冷静に分析すること、そして、国連において同国をいっそう孤立させて東北アジアにおける平和の実現を困難にしないことを、切に希望する。

 私たちは、10月3日の北朝鮮外務省の声明第3項目に注目する。そこには、北朝鮮の最終目標が、朝鮮半島とその周辺から核の脅威を根源的に取り除く非核化である、と明言されている。北朝鮮政府は、6か国協議の場で、この最終目標に向けて共に努力すべきである。

この目標は、かねてから日本でも民間から提案されている東北アジア非核兵器地帯構想そのものである。私たちは、今年9月8日に調印された中央アジア非核兵器地帯の実現に向けて、日本政府が大いに協力してきたことを評価する。いまや非核兵器地帯は、南極を含む南半球から北半球に広がりつつあり、大気圏外の宇宙、海底もすでに非核兵器地帯になっている。日本政府は、核兵器廃絶に向けて重要な一歩を進めることになる日本を含む非核兵器地帯の実現に向けても、最大限の努力をするべきである。

関係諸国は、国連において国連憲章第7章に訴える措置を講じ、あるいは進める前に、韓国が進めてきた朝鮮半島の南北会談を支え、米朝、日朝の話し合いをすすめていくべきである。国際紛争は、いかなる場合であっても、戦争以外の話し合いで解決を図るべきである。武力によって、安定した繁栄をもたらすことはできない。武力行使につながる動きは、決してとるべきではない。

さらに根本的には 核兵器保有国が核兵器に依存する政策を続ける限り、核兵器を保有したいという誤った幻想を持つ国が続くことは確実である。核兵器保有国は、今回の北朝鮮による核兵器実験が、核拡散防止の国際的な枠組みを弱体化させ、それに拍車をかける動きであることを直視して、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)第6条の精神に立ち戻り、核兵器廃絶に向けて速やかに真摯な行動を起こさなければならない。世界がいつまでも現状のまま続くと考えるのは間違っている。

 私たちは、朝鮮民主主義人民共和国政府に対し、初心に帰って、同国声明が言うとおり、朝鮮半島とその周辺の非核化に向けての建設的な話し合いを速やかに開始することを求めるとともに、日本政府をはじめ、関係各国政府が、世界の平和と人類の生存をかけて、朝鮮民主主義人民共和国政府と、前提条件をつけることなく真剣な話し合いを始めるよう求めるものである。

2006 88J 米国とインドの原子力協力推進についての要望書

2006年6月21日
アピール第88号J
2006年6月21日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二

内閣総理大臣 小泉純一郎殿

総理は今月末に米国を訪問し、ブッシュ大統領と会談されようとしています。

私たちは、総理のご健闘を期待するとともに、この機会にぜひ次のことを要望したいと思います。それは、今年三月にブッシュ大統領とインドのシン首相との間で出された原子力協力を推進するための共同声明に関し、このたびの会談において、日本も賛同するようにとの要請が米国からあるとの報道がなされているからです。

米印間の原子力協力の内容そのものについてもいくつかの疑義が出されておりますが、ここではそれには触れません。

私たちが問題にするのは、インドが核不拡散条約(NPT)の発足当初から不平等を理由にしてこれに加盟せず、国際世論を無視して核兵器実験をおこない、公然と第六の核兵器保有国になった事実です。

これは、加盟した世界の百八十八か国に対し、忠実に条約の遵守を求めているNPT体制に対する明白な挑戦行為です。それにもかかわらず、NPT加盟国である米国が、インドを対中・対イスラムの同盟国とみなし、有力な原子力市場であるともみなして、インドに対してNPTへの加盟を促すのでなく、核兵器保有国であることを黙認したことは、結果としてNPTの基本的理念に違反する行為といわざるを得ません。

そしてこれは、イランや北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核開発に口実を与えることにもつながりかねません。

被爆国である日本の政府が事あるごとに核兵器の廃絶と不拡散を求めてきたことは私たちもよく承知しています。また例年、日本政府は、国連総会に対して「核兵器完全廃棄への道程」決議を提案し、NPT体制の強化を訴え続けて多くの国々の賛同を得てもいます。

総理は、こうした日本政府の努力に対して国民が大いなる期待を抱いていることを重く受け止められ、たとえ賛同の要請があっても受け入れることなく、米国とインドの原子力協力は、インドのNPTと包括的核実験禁止条約(CTBT)への参加を前提条件とするよう、友好国として米国政府に強く働きかけることを要望致します。

2005 87J 平和に生きる世界のために

2005年11月11日
アピール第87号J
2005年11月11日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小柴昌俊
事務局長 小沼通二

-創立50周年に当たり、核時代に生きる者の責任として、いまと未来に生きる世界の人々に訴えるー

 「世界平和アピール七人委員会」は、50年前、全世界に衝撃を与えた太平洋ビキニ環礁における水爆実験の翌年、核兵器と戦争の廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言が発表された1955年の本日、発足しました。以来、七人委員会は、日本国憲法の平和主義に依拠し、国連の強化と武力によらない紛争解決を基盤とする新しい世界秩序と、核兵器の速やかな廃絶を求めて、86件のアピールを発してきました。

今日、世界は七人委員会発足当時とは大きく変化し、超大国支配による新たな危機とそれを許さない人々の運動の、大きなうねりの中にあります。この状況に対して、私たちは、これまで以上に発言の必要性と緊急性が増していると考え、それを大変残念に思いながら、国連とそのすべての加盟諸国政府にアピールします。それとともに私たちは、日本の、そして世界の市民のみなさんが、同様な訴えを起こしてくださるよう希望します。

1.私たちは、核兵器の速やかな廃絶を求めます。

核兵器は、人類を滅亡に追いやる兵器です。それにもかかわらず、核兵器保有国は核兵器への依存を続けてきました。これに対して人類は度重なる危機に直面しながらも、この60年間、大国の手を縛り、核兵器を使わせませんでした。これは人類の叡智であり、その危険性を指摘し続け、行動した人々の努力のたまものです。

 冷戦の終結により、超大国同士の核戦争による人類滅亡の危険は去りましたが、国家のみならず非国家集団への核拡散の懸念も高まっています。その中で核超大国が進める新型戦術核兵器の開発は、核兵器を「使えない兵器」から「使える兵器」に変え、核戦争の危険性を増大させ、核拡散を加速させる動きとなっています。

 こうした情勢の中で、私たちは改めて核兵器拡散防止条約の完全実施をめざし、核保有諸国が同条約第六条に決められた通り、核軍備競争を直ちに停止し、核軍縮にむけて、誠実な交渉を開始することを呼びかけます。その上で、2000年の核兵器拡散防止条約再検討会議で約束された核兵器の完全撤廃を、すみやかに実現させるよう求めます。

2.私たちは、世界諸国が、戦力および交戦権を否認し、あらゆる紛争を平和的に解決するよう訴えます。

 この50年の間、七人委員会の訴えは、残念ながら、一部の例外を除いていまだに国際社会から受け入れられていません。その上、冷戦後の世界では、諸国内の武力紛争が多発する中で、世界的な規模での国家と非国家のテロリズムの応酬が、世界の人びとの平和に生きる権利を奪っています。

 これらの諸紛争においては、圧倒的な軍事力による平和の強制や、「ならず者の処罰」が、紛争の解決に役立つどころか、もっとも弱い立場に置かれている人々の犠牲を強いる結果を生み、不安を恒常化しています。

 私たちは、国連とその加盟諸国が、国家間ならびに国内紛争のための、一切の戦争ならびに軍事力の行使の放棄を宣言し、国内紛争当事者を含む違反者に対しては、国際刑事裁判所における法の裁きをうけさせることを勧告します。

3.私たちは、国連とあらゆる国際機関が、市民の運動に敬意を払い、すべての人々が安全を保障され、平和に生きることができるよう、「平和共存」と「平等互恵」を原則にした「多文化共生世界」を目指す改革を進めることを求めます。

 七人委員会における私たちの先輩は、世界連邦の理念にもとづく世界秩序の構築を訴えてきました。国際関係において国家が唯一の実力を備えていた当時から、世界は大きく進歩し、いまや国家をもしのぐ市民パワーが成長しました。世界の市民は、ジェンダー、世代、宗教、階級・階層、また各種アイデンティティ集団の平等のもとに、世界各国で活躍しています。

 国連が、超大国の主導による一方的なグローバル・ガヴァナンスではなく、市民の平和への努力を根底に据えた、連邦主義の原則にもとづくグローバル・ガヴァナンスの体制を打ち立てるよう訴えます。

以上の三つの訴えを日本から世界に向けて発信するに際し、「世界平和アピール七人委員会」は、この訴えを日本自体が率先して推進することを求めます。そのために、とくに次の三点について、日本国政府に訴えます。

4.私たちは、いま日本が改めて日本国憲法の理念と原則を守り、活かしていくことを強く求めます。

 今日、日本国憲法についての論議が盛んになっています。しかしながら、アジアを始め、世界全体を巻き込んだ戦争の反省を踏まえ、再びそうした戦争を起こさせないと誓う日本国憲法は、人類の歴史の到達点であり、世界の人々の願いの結晶です。

 私たちはこの世界史的意義を確認し、安易な憲法改定に反対し、いかなる改定が行われる場合でも、「平和的生存権」と「国際紛争の平和的解決」、「戦力不保持と交戦権の否認」の三点については、現行憲法の理念と原則を守り、活かしていくことを求めます。

 日本国憲法前文は、日本が「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持することを決意し」、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免ぬかれ、平和に生存する権利を有することを確認」しました。

私たちは、日本国政府が、この「平和的生存権」を「人間の安全保障」という形で国際的に唱導し、外交政策の一つの柱にしていることを歓迎する一方で、その根拠である現在の憲法を無視する改憲論が推し進められていることに憂慮の念を禁じえません。

5.私たちは、日本を含めた東北アジア非核兵器地帯の設置を求めます。

日本は平和憲法の原則にもかかわらず、日米安保条約によって、米国のいわゆる「核の傘」を中心とした武力に依存してきました。その中で、日本自身も過大な軍備を抱え、経済のひずみを拡大し、アジア諸国からの批判を受けています。

 私たちは、核兵器が役に立つという幻想を棄て、「核の傘」依存の体制を改め、核兵器を持たないことによる安全保障の地域的な取り決めを作っていく原動力となっていかなくてはなりません。私たちは、東北アジア非核兵器地帯の設置により、地域の内発努力と、「平和共存」と「平等互恵」の原則に基き、地域の人々の不安を除去するための政治・経済の協力を進めることが可能になると信じます。

6.私たちは、日本が真にアジアの人々と共に生きるアジア外交を推進していくことを求めます。

日本政府は、外交の機軸を、「対米依存一辺倒」ではなく、「アジア外交重視」を基礎に据えて米国に友好国としての立場を求める外交へと、大きく転換する必要があります。

 日本国内の米軍基地は、わが国の国家予算を用いて、遠く中東にまで至るいわゆる「不安定の弧」を視野に入れたアメリカの世界戦略にそって整備されています。横須賀への原子力空母の配備計画も、その一環として強行されようとしています。それは、世界、とくにアジアにおける新たな軍事的脅威となると同時に、テロを誘発しかねません。

私たちは、日本政府が、沖縄、鹿屋、岩国、横須賀、座間など、基地周辺の人々の増大する不安と高まる反対の声をなによりも尊重し、この国の人々と国土の安全にこそ留意した統治を行うことを求めます。私たちは、それがひいてはアジア・太平洋地域に新たな安定の時代を築くことにつながると信じます。

以上、「世界平和アピール七人委員会」は、その50年間のアピールをふまえ、世界平和実現の一助となることを切望して、本日ここに、国連・その加盟諸国・市民に対する三つの訴えと、日本国政府ならびに市民に対する三つの訴えを発表いたします。