世界平和アピール七人委員会は、創立52周年記念日の11月11日、新潟県十日町市の市立里山科学館・越後松之山「森の学校・キョロロ」で、講演会を開催した。
平和と地域、農業、環境の関わりにも注目しようと、同科学館の顧問を務める池内了氏が、メンバーに加わった機会に開くことにしたもので、委員会が大都市以外で講演会を開くのは初めて。所用で欠席した武者小路公秀、土山秀夫の両委員を除き、今年白寿を迎えた伏見康治名誉委員をはじめ、井上ひさし、池田香代子、大石芳野、小沼通二(事務局長兼務)、池内了の全員が参加した。
会場は地元の人たちのほか、北海道や神奈川から駆けつけた人も含めて約100人でぎっしり。標本や写真が展示されたホールで、熱のこもった会になった。
講演会では、テーマは「日本の農業、世界の農業」。伏見名誉委員の挨拶、小沼委員・事務局長があいさつ、井上ひさし氏が講演、大石委員が自らが撮影した世界の農村の写真を見せながら講演したあと、池田、池内氏らがコメントを述べた。
井上さんは、「昭和35年、岩手県が日本で最後に食糧の自給自立を達成したとき、大変なお祝いをした。しかし、日本人が米を食べなくなり、自由化されて、農業者は米では生活できなくなった。農水省は13370円だとしているササニシキが実際には11000になってしまっているという。このあたりの魚沼産コシヒカリも、カリフォルニアでも作れるから、魚沼でできるものの20倍くらいあるのではないか」と切り出した。
井上さんは、棚田が水をたたえていた話やマグロが買い付けられなくなっている話、米国の食糧の話などに言及、「日本人が持っているものは何なのだろうか。憲法、原爆体験もそうだが、いまわれわれ日本人が持っていたものを持ちこたえ、再発見することが求められているのではないか」と結んだ。
続いて話したのは大石委員。会場には、ちょうどこの朝、紫綬褒章を受けたこともあってその活動を紹介する番組が当日NHKテレビに登場したばかり。会場には「アジアの農村風景の写真」も展示された。
大石さんは、「ここ数10年世界の人間、戦争、平和ととり続けてきた。戦争は農村を破壊する。しかも、武器と武器の戦いが終わっても傷跡が残っている」と、写真を見せながら話し、聴衆に感銘を与えた。
このあと、池内委員が「キョロロ」の歴史を語りながら、「科学を身近なものにしていかなければならない。学校や家庭を結んだ人間を育てる場として機能したい。楽しみながら、地域の中から平和を作っていこう」と呼び掛けた。
また池田さんは、「もし世界が100人の村だったら」の経験を語り、世界で核実験が続けられてきた事実を現代アートで表現した、映像作家の橋本公さん(箱根ラリック美術館)の作品を紹介。「核実験がこんなに続いているのか!」と衝撃を与えた。
講演会の後、聴衆との話し合いも行われ、井上さん、池内さんなどが質問に丁寧に答えていた。