2006年10月11日
世界平和アピール七人委員会
伏見康治 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二
私たち世界平和アピール七人委員会は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府が発表した10月9日の核兵器実験実施について、いかなる条件の下であれ、朝鮮半島と日本を含めた周辺、ひいては世界の平和と人間の安全保障の立場から、反対を表明する。核兵器によって、国の安全が保証されると考えるのは幻想に過ぎない。1945年以来、世界各地で発生している被爆の実態を思い起こせば、人類が核兵器と共に存続していくことができないのは明らかである。
私たちは、日本はじめ関係各国が、北朝鮮がこのようなかたちで自国の安全を保障しようと結論した遠因を冷静に分析すること、そして、国連において同国をいっそう孤立させて東北アジアにおける平和の実現を困難にしないことを、切に希望する。
私たちは、10月3日の北朝鮮外務省の声明第3項目に注目する。そこには、北朝鮮の最終目標が、朝鮮半島とその周辺から核の脅威を根源的に取り除く非核化である、と明言されている。北朝鮮政府は、6か国協議の場で、この最終目標に向けて共に努力すべきである。
この目標は、かねてから日本でも民間から提案されている東北アジア非核兵器地帯構想そのものである。私たちは、今年9月8日に調印された中央アジア非核兵器地帯の実現に向けて、日本政府が大いに協力してきたことを評価する。いまや非核兵器地帯は、南極を含む南半球から北半球に広がりつつあり、大気圏外の宇宙、海底もすでに非核兵器地帯になっている。日本政府は、核兵器廃絶に向けて重要な一歩を進めることになる日本を含む非核兵器地帯の実現に向けても、最大限の努力をするべきである。
関係諸国は、国連において国連憲章第7章に訴える措置を講じ、あるいは進める前に、韓国が進めてきた朝鮮半島の南北会談を支え、米朝、日朝の話し合いをすすめていくべきである。国際紛争は、いかなる場合であっても、戦争以外の話し合いで解決を図るべきである。武力によって、安定した繁栄をもたらすことはできない。武力行使につながる動きは、決してとるべきではない。
さらに根本的には 核兵器保有国が核兵器に依存する政策を続ける限り、核兵器を保有したいという誤った幻想を持つ国が続くことは確実である。核兵器保有国は、今回の北朝鮮による核兵器実験が、核拡散防止の国際的な枠組みを弱体化させ、それに拍車をかける動きであることを直視して、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)第6条の精神に立ち戻り、核兵器廃絶に向けて速やかに真摯な行動を起こさなければならない。世界がいつまでも現状のまま続くと考えるのは間違っている。
私たちは、朝鮮民主主義人民共和国政府に対し、初心に帰って、同国声明が言うとおり、朝鮮半島とその周辺の非核化に向けての建設的な話し合いを速やかに開始することを求めるとともに、日本政府をはじめ、関係各国政府が、世界の平和と人類の生存をかけて、朝鮮民主主義人民共和国政府と、前提条件をつけることなく真剣な話し合いを始めるよう求めるものである。