2010 102J 核兵器不拡散条約再検討会議を前にして 核兵器禁止条約の採択に向けた早期交渉開始を求める

2010年4月8日
アピール WP7 No.102J
2010年4月8日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議(2010年5月3-28日)と核セキュリティ・サミット(2010年4月12-13日)を目前にして、私たち世界平和アピール七人委員会は、2008年10月24日に国連本部で開催されたシンポジウムにおいて藩基文国連事務総長が行った基調演説「国連と核兵器のない世界の安全保障」を想起し、これを支持します。

ここで事務総長は5項目の提案を行いました。その中に含まれる以下の事項は、今日でも重要な問題として未解決のまま残されています。

(1)  すべてのNPT締約国、とりわけ核兵器国が、国連で長年にわたり提案されてきた核兵器禁止条約の交渉検討を含めて、NPTに基づく軍縮義務を履行すること。
(2)  核兵器国は、非核兵器国に対して、核兵器による攻撃も威嚇もしないことを明確に保証すべきこと。NPT非加盟国は、核兵器製造能力を凍結し、独自の軍縮公約を行うこと。
(3)  包括的核実験禁止条約(CTBT)、核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、非核兵器地帯、国際原子力機関(IAEA)との軍事利用されないための保障措置協定、追加議定書などによって「法の支配」を強化すること。
(4)  核兵器国が具体的情報に基づく説明責任と透明性を強化すること。
(5)

 他の大量破壊兵器の廃絶、通常兵器の制限を含む、核軍縮の補完的措置を必要とすること。

 私たちはこれらいずれの提案にも賛意を表しますが、とりわけ重要かつ緊急を要するものとして、核兵器禁止条約の早期交渉開始を各国、なかでも核兵器国に対して求めます。
その理由は2つあります。

1つは1996年(12月10日)から2009年(12月2日)まで毎年、国連総会で採択されてきた「核兵器による威嚇または使用の合法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見への補足」決議が、「全ての国家は、核兵器の開発、製造、実験、配備、保有、移譲、威嚇、使用を禁止し、廃棄を定める核兵器禁止条約の早期締結に導く多国間交渉を開始する義務を直ちに履行すること」を呼びかけていることが世界中で歓迎されると考えるからです。大量破壊兵器委員会(ハンス・ブリクス委員長)が2006年6月に国連に提出した報告書でも、核兵器非合法化のための準備を開始すべきことが提言されています。

他の1つは現行のNPTに加えて、核兵器の非合法性を明確化する法的規制が不可欠であると判断するからです。「核兵器のない世界」を目指す米国オバマ大統領は、繰り返しNPTの強化の必要性を表明しています。むろん私たちもその点には全面的に賛成します。しかし、それだけでは全ての国を核兵器廃絶に向かわせることはできません。なぜならば従来の経緯からみて、非加盟国、特にインド、パキスタン、イスラエルのNPT加盟を期待するのはきわめて困難だと思えるからです。私たちは、NPTを超えて、コスタリカとマレーシアが推進してきて藩基文国連事務総長も触れている核兵器禁止条約草案(モデル核兵器条約)に基づく誠実な交渉を、核兵器国を含む全国連加盟国が開始することが、より重要と考えます。

 核兵器禁止条約交渉開始を含む「核兵器による威嚇または使用の合法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見への補足」決議には、国連の場においてインド、パキスタン、北朝鮮、イランも1996年以来一貫して賛成票を投じています。この事実は、核兵器禁止条約が、NPTを超えて核兵器を法の支配下に置き、核兵器が国家以外の組織に渡る危険性を防ぐ上でも有効かつ緊急の課題であることを示唆します。

 結論として私たちは、核兵器国ならびにNPT非加盟国を含む全国連加盟国が、核兵器禁止条約の速やかな採択を目指し、直ちに交渉に向けて積極的な取り組みを開始されるよう強く要請します。

連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp
ファクス:045-891-8386

URL:https://worldpeace7.jp

 PDFアピール文→ 102j.pdf