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2020 140J ウイルス禍とのグローバルな闘いを通じて平和を

2020年4月13日
アピール WP7 No.140J
2020年4月13日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

新型コロナウイルスCOVID-19のパンデミックで世界の多くの地域が苦しんでいる。これを戦争にたとえる人も多い。多くの死者があふれ出て埋葬にも困るような状況、ロックダウンや国境封鎖のような市民の自由の束縛、犠牲を覚悟した医療関係者の尽力、そして人々の移動のチェックや大規模消毒等のための軍隊の出動等、確かに戦時期に生じるような事態が多くの国々で生じている。
特に、この新たな疫病は、高齢者や基礎疾患のある人々、国のインフラ、特に医療体制がまだ整っていない国や地域の人々、いわゆる先進国において貧富の格差に苦しめられている人々など、今地球上に生きている人々のうち、とくに弱い者のいのちを襲う病である。まさに、「人間の安全保障」が直接脅かされている。であればこそ、この危機は平和のための新たな自覚と行動の機会でもある。
国連のグテーレス事務総長は3月23日、「グローバル停戦のよびかけ」と題する声明を発表した。この声明の冒頭には、「私たちの世界はCOVID-19という、共通の敵と対峙しています」とあり、「このウイルスには、国籍も民族性も、党派も宗派も関係ありません。すべての人を容赦なく攻撃します。その一方で、全世界では激しい紛争が続いています。女性と子ども、障害をもつ人々、社会から隔絶された人々、避難民など、最も脆弱な立場に置かれた人々が、最も大きな犠牲を払っています」と続けている。従来からの武力行使を続けている段階ではない。
日本国内にも難民に比せられるような境遇にある人々が多数いる。疫病だけでなく経済の悪化によってもいのちの危機に陥る可能性が高い。これらの人々のいのちを守る働きが求められている。「人間の安全保障」として準備されているさまざまな仕組みのなかには、こうしたときに役立つものが少なくない。軍事力拡充の野心を放棄すれば、軍事費をウイルスとの闘いや気候危機の克服に振り向けることができる。諸外国の例では、もろもろの災害と同様、ウイルス禍との闘いで軍隊が力を発揮する場面も多い。軍隊や自衛隊の存在意義を根本から見直すべきときだ。
ウイルスの脅威に直面して、国境が閉ざされて一時的な鎖国状態が具現しているが、これが人々の間に壁を作るものであってはならない。国際的平和主義・国境を越えた協調主義こそ人類が歩んできた歴史の向かう方向ではなかったか。実際、国境を越えた支援の働きが力になっている。コロナウイルスのもたらしたグローバルな災いは、世界の人々がともに平和を願い、力を合わせていく歩みを人類社会に促している。
人類の歴史はウイルスとの共生の歴史とも言いうる。現代世界に生きる者同士が今回の経緯や体験から学び合い、今後も必ずおこる新種ウイルス出現にどう対処していくかの知恵を蓄積することが重要だ。この度の「闘い」と学びを、これからの平和と安全保障のあり方を方向づけるものにしなければならない。

PDFアピール文→ 140j.pdf

今月のことばNo.44

2020年4月8日

知事に任せ、すぐに行動を

小沼通二

 緊急事態宣言が7日に出された。東京都は6日に休止対象施設などの案を都議会にも示していた。「緊急」といわれながら11日からの休止を要請するという。都の案に国が厳しすぎると難色を示したので、都は緩める案に作り直すのだという。
 僅か4日と思うかもしれないが、感染拡大のスピードが理解できていない。感染は倍々と広がる。東京でも、世界全体でも収まる気配がまだ見えていない。2、3日で倍になると1週間か10日ごとに10倍、100倍に広がる。
 遅れれば遅れるだけ対応が難しくなる。具体案が完全でなくても、一刻も早く行動に移し、経過を見て修正していくのでなければならない。
 状況が地域ごとに異なるので地方自治体がそれぞれの対応をとることになっていたはずだ。福島原発事故のときに現場に任せず手遅れになった教訓を忘れたのか。

今月のことばNo.43

2020年3月18日

新型コロナウィルスと戦争

大石芳野

 新型コロナウウィルスに世界中が侵されている。連日、このニュースが押し寄せてくるから否応なく緊張する。この状態は大勢の死者を出したスペイン風邪の時と似ていると言われるものの、百年も前だから実感はない。大勢が集まる所は避けるようにと言われるが、真夜中以外の都会は何処へ行っても人は多い。花粉症や単なる軽い風邪などでも咳やくしゃみ、鼻水は容赦ない。側に居る人が見返す眼には敵意が色濃く漂っているなど、脅威の気持ちを露にする様子が通勤電車や店内でもよく目にする。
 まるでこれは戦争だ。特に内戦といった誰が敵か分からない状況に似ている。どこで見張られているのか分からない。敵は物陰から銃をこちらに向けてタイミングを狙っているのだろうが、その姿は見えない。こうした状況は戦時下ばかりか権力闘争下の現代社会にも繋がっている。権力者ばかりか平凡な市民も対象になり兼ねないから、不用意な言動で身に危険が及ばないとも限らない。
 これは妄想かもしれないが、戦禍を取材して40年間ほどの私の経験が俄かに湧き上がって、世界大戦を潜り抜けた人たちへと思いは馳せる。新型コロナウウィルスが蔓延し始めた冬から春の季節、75年前の欧州では戦火が止んで砲弾や虐殺から解放された。けれど、人びとの内側では戦争は終わらなかった。アジアの人びとにも進軍した日本兵にも、そして沖縄の人びとにもそこで闘った日本兵にも、みな夫々の内なる傷が残った。原爆を投下された広島、長崎の被爆者もその家族も戦争がいまだに終わらない闇を抱えている。
 さらに、日本と同盟国のドイツがポーランドに侵攻してユダヤ人をゲットーに隔離し強制収容所で何百万人も惨殺した負の遺産にも、このウィルスの事態は重なってくる。強制収容所などから生還した人たちを取材して私が痛感したことは、誰もが今なお深い悩みの淵にいることだった。そうしたポーランド人にとってドイツは敵以外の何者でもない。けれど思い出すのは、中には人間性を重んじて「できるだけ助けたい」と何十人ものユダヤ人やポーランド人を助けたドイツ軍将校もいたことだ。彼はソ連軍の捕虜となって助けた事実を訴えたが無視され、ソ連の収容所で7年後に亡くなった。これはW・シュピルマン著「戦場のピアニスト」に登場するドイツ人国防軍将校のW・ホーゼンフェルトの実話である。
 ソ連当局にはポーランド人は下等な人間だから助けるには値しないという根強い考えがあったようだ。そう言えば、カチンの森事件のようにポーランド人にとっての敵はドイツばかりではなく、救援者だと思っていたソ連もまた厳しい存在になった。
 話はそれたが、新型コロナウィルスがどのような状態で私たちを襲ってくるかわからないと言うことだ。昨今の社会は一見平和そうだが、とんでもない複雑な事態を抱え込み、状況はまさにあの戦禍の時代を彷彿とさせる。それだけに私たちは見えない相手を見つけ出して、何とか殲滅しなければならない。
 こうした切迫感に組み込まれつつある隙に、為政者が指導力の真髄を忘れて自分らの延命を図る策に邁進したらどうなるか。油断はできない。味方だと思っていたら敵になっている、その逆もまたあることを負の遺産に学びながら私たちは新型コロナウィルスと戦う。そのうちに、ワクチンと対処法が見つかり感染者の増加が世界中で止まる日は必ずくる。それまで細心の注意を怠らずに対処していくしかないだろう。

2020 139J 米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備に反対する

2020年2月10日

このアピールには英文版があります。
英文アピールはこちら

アピール WP7 No.139J
2020年2月10日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

私たち世界平和アピール七人委員会は、米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備が核兵器使用の危険性を高めることを危惧するので、配備に反対し、米国を含むすべての核保有国が核兵器の削減と廃棄への道を進むことを求める。
米国防総省は、低出力の核弾頭W76-2を潜水艦発射弾道ミサイルに装備していることを2月4日に初めて発表した。これはトランプ政権の2018年の「核態勢見直し」の方針に沿うものであって、アメリカ科学者連盟のサイトに1月29日に掲載された論文「米国が新たに低出力潜水艦用核ミサイルを配備」と符合するものである。
この論文などによれば、米国が保有する14隻の戦略原子力潜水艦はそれぞれ20基の弾道ミサイルを搭載してきたが、この弾頭は爆発力が90キロトンの水爆W76-1、あるいは455キロトンの水爆W88だった。これらの原子力潜水艦の一つであり大西洋岸の基地に所属するテネシーに、昨年5キロトンといわれる低出力核弾頭W76-2を1、2基初めて装備した。W76-2は、W76-1を改造して水爆の起爆装置としての原爆部分だけを爆発させるものだとされる。そして昨年末から「テネシー」が隠密裏の哨戒任務につき、1月11日に帰港したというのである。
米国防総省は、米国と同盟国がいかなる攻撃を受けても速やかに応じられる態勢が整ったので、抑止力が高まったという。
しかし、潜水艦の隠密性は地上発射ミサイルより、また戦略爆撃機よりはるかに高い。いかなる場合にも速やかに対応できるということは、先制攻撃にも使えることを意味する。これまでも判断の誤りがあったこと、さらに米国が非核兵器攻撃に対して核兵器を使うことがあるとの政策を持ち、核兵器の第一撃も否定していないことを考えれば、今回の措置は明らかに核兵器使用の危険性を増大させるものである。そして広島・長崎を攻撃した原爆より爆発力が小さいといっても、いったん使用されれば放射性物質は全世界を覆うことになり、爆発力のより大きい核兵器の使用への道をひらくことにもなる。
核兵器は非人道的であり、いかなる場合の使用と威嚇も禁止すべきであることは、被爆者をはじめとする日本国民大多数の考えであり、世界各地の核実験の被害者や核兵器禁止条約の賛同国をはじめとするグローバル市民社会の世論でもある。昨年日本を訪問したローマ教皇フランシスコの訴えもこれと軌を一にするものであったことは記憶に新しい。米原子力潜水艦への新たな配備は、今年発効から50年を迎える核不拡散条約の核兵器保有国の義務にも明白に違反するものであり、決して見過ごすことができるものではない。

PDFアピール文→ 139j.pdf

註:アピール139Jの発表文の8行目に誤りがありましたので訂正しました。 2020/2/14
誤 24隻の戦略原子力潜水艦
正 14隻の戦略原子力潜水艦

2020 138J 米国によるイラン革命防衛隊司令官殺害を非難し、すべての関係者がこの危機を悪化させないよう求める

2020年1月6日

このアピールには英文版があります。
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アピール WP7 No.138J
2020年1月6日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

米国政府は、イラクでイラン革命防衛隊の司令官を1月3日にドローンで殺害したと発表した。これに対してイランは報復を予告している。イラク首相は主権侵害だとしている。
「米国」と「イラン」の立場を置き換えたとき、米国政府と米国民は自国軍の司令官の殺害という事態を受け入れられるだろうか。

私たち世界平和アピール七人委員会は、米国によるこの殺害を非難し、この危険な事態をさらに悪化させないよう関係するすべての国に求める。
国連安全保障理事会のメンバー諸国は 直ちに自国の立場を明示すべきであり、国連は速やかに総会を開いて対話による解決のためのあらゆる努力を行っていただきたい。
米国とイラン双方と友好関係にあると自任する日本政府は、直ちに米国に完全な自制を促すべきである。

日本政府は、米国が2019年6月に提案した有志連合には参加せず、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機を、通行する船舶の護衛を含まない「調査・研究」のために中東に派遣すると、国会にも国民にも説明しないまま2019年12月27日に決定した。
しかし得られる情報を有志連合と共有するため、バーレーンにある米中央海軍司令部に連絡員を派遣することが明らかになり、事態が変われば派遣目的を変更するとされている。これでは米国に与するものとみなされてもしかたがない。我々が12月12日に発表したアピール『自衛隊の海外派遣を常態化してはいけない』の内容をあらためて強く求める。日本国憲法によって法的に制限された軍事組織である自衛隊を危険地域の周辺に派遣させるべきでない。日本は非軍事的手段による平和構築に積極的に取り組むべきである。

PDFアピール文→ 138j.pdf

アピール「米国によるイラン革命防衛隊司令官殺害を非難し、すべての関係者がこの危機を悪化させないよう求める」を発表

2020年1月6日

「米国によるイラン革命防衛隊司令官殺害を非難し、すべての関係者がこの危機を悪化させないよう求める」と題するアピールを発表しました。

米国によるイラン革命防衛隊司令官殺害を非難し、すべての関係者がこの危機を悪化させないよう求める