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世界平和アピール七人委員会2009年講演会「核といのちを考える」開催

2009年11月25日

世界平和アピール七人委員会は2004年から毎年、11月11日の創立記念日前後に講演会を開催しています。来年名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれることを考慮して、今年の講演会は名古屋で開催しました。中日新聞社と名古屋青年会議所が名古屋開催を積極的に支援されたことから、世界平和アピール七人委員会と中日新聞が共同で主催、青年会議所は共催という形で開催しました。

講演会は11月7日(土)午後6時半から9時まで、名古屋の中心にある名古屋商工会議所ビルの大会議室で開かれ、約250人の聴衆が集まりました。今回は体調を崩して不参加となった井上ひさし委員を除く6委員全員が交代で演壇に立ち、それぞれメインスピーチを行いました。各委員の語ったテーマは以下の通りです。

▽土山 秀夫 「日本の核政策への注文と期待」
▽小沼 通二 「七人委員会と核のない世界」
▽武者小路 公秀 「いのちの多様性」
▽池田 香代子 「いのちに敵対するもの」
DVD[Overkilled](橋本公作品)の映写を含む
▽大石 芳野 「いのちを問う~枯れ葉作戦が遺したもの」
▽池内 了  「宇宙・地球・生命」

各委員はそれぞれ持ち味を発揮したスピーチを行い、随所で聴衆の笑い、感嘆のため息、拍手を浴びました。多彩な内容が詰まっていただけに聴衆の受け止め方も多様だったと思われます。6委員のメインスピーチの後、中日新聞編集局長志村清一さんの司会で質疑応答が行われました。時間が不足気味でしたが、会場からの質問やコメントを受けて各委員からの回答や補足発言があり、最後は大きな拍手で閉会となりました。「生物多様性」という一般になじみのない言葉が、ようやく理解されるきっかけになった講演会でした。

名古屋各紙がアピール「いのちを大切にする世界を目指して」発表を報道

2009年11月25日

世界平和アピール七人委員会は11月6日午後名古屋観光ホテルで記者会見を開き、2010年名古屋で開かれる生物多様性条約第10回締約国会合(COP10)に向けたアピール「いのちを大切にする世界を目指して」を発表しました。11月7日の名古屋発行各紙朝刊はこのニュースを掲載しました。各紙の見出しは次の通りです。
▽中日 COP10重要性訴え 世界平和七人委 きょう講演会も
▽朝日 平和七人委がアピール
▽読売 いのち大切に 生物多様性訴え きょう識者ら対話集会
記者会見する武者小路委員、小沼委員の写真付き
▽日経 朝刊コラム「窓」(見出しなし)

なお中日新聞は11月11日付朝刊で同アピール全文を掲載しました。ちなみに世界平和ピール七人委員会は1955年11月11日に発足しましたので、ことしの11月11日は54回目の誕生日ということになります。同アピールは委員会発足以来99番目のアピールとなりました。

世界平和アピール七人委員会名古屋対話集会「いのちを大切にする世界を目指して:生物多様性締約国会議へのアピール」

2009年11月25日

世界平和アピール七人委員会2009年講演会の名古屋開催を機に、名古屋地区の学者、研究者、NGOの方々との対話集会が開催されました。対話集会は世界平和アピール七人委員会が主催、「持続可能な開発教育」中部拠点、生物多様性市民ネットワーク中部の後援で開かれました。11月7日午後2時から4時45分まで、中部大学名古屋キャンパス大ホールで開かれ、七人委員会側は井上委員を除く6委員が出席、地元から数十人の研究者らが参加しました。

集会は小沼通二委員の司会により飯吉厚夫中部大学総長の挨拶で開会、最初のスピーカー武者小路公秀委員が、前日に発表された世界平和アピール七人委員会のアピール「いのちを大切にする世界を目指して」について解説しました。そのポイントは(1)人類の地質圏、生命圏に及ぼす破壊の力(2)すべての生命体の「平和に生きる権利」(3)知識開発・権力行使・市場活動の規制(4)生命圏と相互依存関係にある生命系維持的経済(5)伝統的な知識・工夫・慣習に学ぶ改革実践(6)貧困克服と地域経済の活性化-の6項目にあるというものでした。

次いで竹内恒夫・名古屋大学大学院教授が、地球市民が持続可能な暮らしを行うための行動指針として2000年に制定された「地球憲章」について解説、さらに高山進・三重大学教授が<「生物多様性」と人間の文化・文明>と題してスピーチ、ヒトが地域の生態系を保全しながら賢く利用する知恵を育んできた歴史に学ぶべきであることを訴えました。この後世界平和アピール委員会5委員がそれぞれの分野の問題について発言、また会場からの活発な質問やコメントがありました。来年のCOP10に向けて、中部地区の研究者たちと七人委員会の交流がスタートしました。

世界平和アピール七人委員会名古屋講演会に付随したイベント

2009年11月25日

世界平和アピール七人委員会のメンバーが名古屋に集まった機会に、いくつかのサテライト集会が催され、各委員が参加して講演を行いました。

▽ 武者小路委員 11月6日 午後4時30分―6時 愛知大学車道校舎
「国際環境と個人の生命活動~わたくしたちと国際環境をつなぐもの~」
講演テーマ:『生とし生けるものが平和に生存する世界を創るために』

▽ 大石委員 池内委員、11月6日午後4時30分~8時 三重大学総合研究棟
「写真から見た世界」 大石
「宇宙からみた世界」 池内

▽ 池田委員 11月6日 午後6時 名古屋学院大学白鳥校舎
平和問題研究会シンポジウム
11月8日 10時~午後5時 アスナル金山にて
「地球はひとつ 感謝のこころ溢れる共生のまち名古屋を目指して」(名古屋
青年会議所主催
11月9日午後2時  三重県津市立瀬尻小学校体育館 「授業」

▽ 土山委員 11月8日 午後1時30分~5時
日本平和学会 第19回グローバルヒバクシャ研究会
「被爆地長崎から今伝えたいこと」
(この講演に続き 沢田昭二名古屋大学名誉教授の「被爆の実相をどうとら
えるのか」の講演があった)

2009 100J 戦争なき世界に向けて核兵器廃絶のための具体的行動を呼びかけるアピール

2009年11月13日

アメリカ合衆国大統領 バラク・オバマ殿

アピール WP7 No.100J
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 われわれ世界平和アピール七人委員会はまず、2009年11月13日にあなたが訪日されることを歓迎し、あなたのノーベル賞受賞を心からお祝いいたします。

 2009年9月24日、国連安全保障理事会で決議1887が満場一致で採択されるに当たってのあなたのリーダーシップと、核兵器なき世界を目指し具体的措置を取ることを約束した2009年4月5日のチェコ共和国プラハでのあなたの演説を、世界の大多数の人々が歓迎したことは、われわれの歓びであります。また2008年7月24日のベルリンにおけるあなたのスピーチ、2008年8月25日の民主党大会に於けるあなたの「アメリカを革新する約束」も、われわれのよく記憶するところです。これらの場であなたは核兵器のない世界の平和と安全を求めるとの、アメリカのコミットメントを繰り返されました。

 2日前に、NHKテレビが 前日に行なったあなたの単独インタビューを放映しました。あなたは、今回は時間が取れないが、在任期間中に原爆の経験を持つ広島と長崎を訪問できれば光栄だといわれました。また両市の記憶は全世界の人々の心に刻まれているとも述べられました。これらの言葉は、核兵器のない世界を実現させることをあなたが確信していることを改めて示すものでありました。日本の人たち、特に被爆者、はあなたに共感し、具体的な前向きの行動を期待するものであります。

 国連の全加盟国は、国際紛争を国際の平和と安全と正義が脅かされない形で、平和的手段で解決すべきであるとの国連精神を、全ての人が想起すべき時が来ています。世界のすべての国民が恐怖と欠乏から逃れ、平和のうちに生存する権利を認めていることを明記している日本国憲法は、これと全く同じ考えに立っています。
 生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約、対人地雷禁止条約はすでに発効しています。クラスター爆弾禁止条約も後を追っています。核兵器の役割は、すべての人類のために無条件でただちに否定されるべきであります。核兵器禁止条約は実現させなければならないし、実現させることができるのです

 ここで、われわれの組織について説明させていただきます。
 世界平和アピール七人委員会は1955年、国連創設10周年の機会に、国連の役割強化を訴えるとともに戦争の根絶を追求しようと、七人の影響力ある日本の知識人によって設立されました。それは「人間性を心にとどめ、ほかのことは忘れよ」と述べたラッセル・アインシュタイン宣言が発表されたのと同じ年でした。以来七人委員会は外部から独立した個人の資格で、平和、正義、人間性に立脚した国内・国際アピールを発表し続けてまいりました。われわれは創設の日から核兵器の廃絶を追求し、世界のいかなる紛争も平和的手段で解決されるべきだと信じてきました。核兵器の保有と「核の傘」理論は、いかなる国についても例外なく放棄されるべきだと、われわれは信じています。このメッセージは、われわれの発表した100番目のアピールです。

 PDFアピール文→ 100J.pdf

2009 101E 米国が生物多様性条約を直ちに批准するようにとのオバマ大統領への要請

2009年11月12日

WP7 No.101E
2009年11月12日
米国が生物多様性条約を直ちに批准するようにとのオバマ大統領への要請
(Request to President B. Obama for USA to ratify immediately the Convention on Biological Diversity)

本文は英文のみ → https://worldpeace7.jp/wp_en/?p=40

「いのちを大切にする世界を目指して」アピール発表のお知らせ

2009年11月6日

世界平和アピール七人委員会は、6日午後、名古屋市中区の名古屋観光ホテルで、武者小路公秀、池田香代子、小沼通二の各委員が記者会見し、2010年秋、生物多様性条約第10回締約国会議が名古屋で開かれるのに先立ち、別紙の通り、「いのちを大切にする世界を目指して」と題する生物多様性条約に関するアピールを発表しました。

世界平和アピール七人委員会は、1955年11月、世界連邦建設同盟理事長・下中弥三郎(平凡社社長)の呼び掛けで、植村環・日本YWCA会長、茅誠司・東京大学教授、平塚らいてう・日本婦人団体連合会会長、湯川秀樹・京都大学教授ら7人によって結成されました。以来、54年の間に委員は入れ替わりましたが、日本の知識人として、人道主義と平和主義、不偏不党の立場で、核廃絶、憲法擁護などについて、98本のアピールを発表してきており、今回のアピールは99本目に当たります。
現在の委員は、武者小路公秀(元国連大副学長)、土山秀夫(元長崎大学長)、大石芳野(写真家)、井上ひさし(作家)、池田香代子(翻訳家)、小沼通二(慶応大名誉教授)、池内了(総合研究大学院大教授)の7人です。
今回、この生物多様性条約については、その重要性をもっと一般に知ってもらおうと、会議が開かれる名古屋で、7日午後、急病で欠席の井上委員をのぞく全委員が参加して、中部ESD(持続可能な開発のための教育)拠点・竹内恒夫運営委員長(名大大学院環境学研究科)、生物多様性市民ネットワーク・高山 進共同代表(三重大大学院生物資源研究科)を交えての対話集会、ならびに、現在の核廃絶問題も含めた「核といのちを考える」と題する講演会を開催します。

▼七人委員会対話集会
(後援:中部ESD=持続可能な開発のための教育=拠点、生物多様性市民ネットワーク)
「いのちを大切にする世界を目指して:生物多様性条約締約国会議へのアピール」
とき:  2009年11月7日(土)午後2時―4時45分
ところ: 中部大学名古屋キャンパス・三浦記念会館6階大ホール
内容:
・世界平和アピール七人委員会のアピール紹介
解説・武者小路公秀委員
・問題提起
「地球憲章について」竹内恒夫・中部ESD拠点運営委員長(名大大学院環境学研究科)
「『生物多様性』と人間の文化・文明」高山 進・生物多様性市民ネットワーク共同代表(三重大大学院生物資源研究科)
・七人委員会各委員のコメント

▼世界平和アピール七人委員会講演会「核といのちを考える」
とき:  2009年11月7日(土)午後6時30分
ところ: 名古屋商工会議所ビル・2階大会議室
講演内容:
・「日本の核政策への注文と期待」土山 秀夫
・「七人委員会と核のない世界」小沼 通二
・「いのちの多様性」武者小路公秀
・「いのちに敵対するもの」池田 香代子
DVD「Overkilled」橋本公作品の映写も含む
・「いのちを問う~枯れ葉作戦が遺したもの」大石 芳野
・「宇宙・地球・生命」池内  了

2009 99J いのちを大切にする世界を目指して:生物多様性条約第10回締約国会議(2010年)に向けてのアピール

2009年11月6日
アピール WP7 No.99J
2009年11月6日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 2010年10月に名古屋で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議を一年後に控えて、世界平和アピール七人委員会は、日本を含む同条約の締約国のみならず全世界のすべての国々とその市民が、生命とその多様性を尊重する責任の重大さについてさらなる理解を深めることを希望し、米国に対しては同条約の速やかな批准を求めて、以下のとおり呼びかける

(1) 人類の地質圏・生命圏に及ぼす破壊力の自覚の必要性:
人間は、生物の進化の到達点として、地質圏・生命圏の上に知識圏を形成し、科学技術を駆使して自然を改変してきた。核エネルギーから遺伝情報までを自由にあやつる力を手にした現代の社会は、人類にとって有益なサービスを自然から大きく引き出す能力を備えるに至った。しかもその能力は、悪用すれば、地球上に生息する生命の多様な種を絶滅させることができるレベルに達したのである。
1955年に核兵器と戦争の廃絶を訴えて、世界の科学者の運動の端緒を切り開いたラッセル・アインシュタイン宣言注は、生物の種の一員である人類の絶滅の現実的危機に対する警告であった。
生物多様性条約第10回締約国会議が開かれるに際して、われわれは、人類が、いまや生命圏と地質圏を破壊する能力をもつにいたったことを、改めて自覚する必要がある。

(2) すべての生命体の「平和に生存する権利」に基づく倫理的・規範的基準を確立する必要性:
今日、幸いにして核兵器に関しては、その廃絶を求める国際世論が高まっている。しかし、多様な種を絶滅に追い込みかねない人類による脅威は、グローバル化する新自由主義経済の圧力のもとで依然増大の一途をたどっている。いまわれわれは、「地球憲章」注(2000年)にのっとり、かつ日本国憲法前文にある「平和に生存する権利」をすべての生命とともに人類が共有すべき大原則として再確認し、人類のすべての活動を律する倫理的・規範的な基準を確立すべき時に至っている。

(3) 知識開発・権力行使・市場活動の規制の必要性:
いま求められているのは、グローバル・ガバナンスにおいて決定権を握っている者たち、すなわち知識開発を担う科学技術専門家や技術官僚、政治権力保持者、市場や金融を動かす企業家たちの倫理的自己規制であり、それを不可避にする国内・国際を通じての法規制である。地球憲章は問題提起として重要であり、生物多様性条約は必要な要件を法的に表現しているが、それだけでは十分でない。たとえば、遺伝子組み換えなど、悪用されれば生命圏破壊の原因となる可能性のあるバイオテクノロジーの研究開発は、人類の良識ある倫理意識によって自己抑制されるとともに、予防原則に則った法的規制の可能性が検討されるべきである。

(4) 生命の多様性を持続可能にする新しい循環型の市場経済を構築する必要性:
人類は、産業革命がおこるまでの数千年間、農耕によって多様な生命体間のサービスの循環的な相互補完・共同利用を再生産することで、生態系資源からのサービスを受けつつ、「里山」などの二次的自然を造るなど、生命圏へ「お返し」をする循環型の生命系維持的経済を営んできた。
しかし、欧米中心に築かれた資本主義市場経済は、生態系からのサービスを可能な限り活用して、今日のグローバル金融資本主義にまで成長した。工業化と都市化によって生態系を徹底的に利用する文明は、大量生産・大量消費・大量廃棄を重ねるとともに、商品としての価値のみから多様な生命を選別してきた結果、資源のグローバルな商品価値に起因する貧富の格差が拡大し、生物種の生存そのものが脅かされるに至っている。
今日の世界的金融危機は、この市場経済の成長路線が持続不能なものであることを明らかにしているが、持続不能性はそれにとどまらず、生物資源の減少と温暖化などの生命圏・生態圏の異変に深刻に表れている。このような中で、人類の3分の2はいまだに生命系維持的経済のなかで経済成長を待つ状態に置かれている。生物多様性条約は、この不均等な遺伝資源をはじめとする生態系資源の公正な配分を目的の一つにかかげている。必要なことは、人間生活の豊かさを犠牲にして市場経済以前の生命系維持的経済に戻ることではなく、生態系サービスの商品としての配当を単に人間の間で再配分することでもない。むしろ、人々の暮らしと多様な生命体の暮らしとが相互に豊かになる方向に向かうべきである。つまり、生命の多様性を持続可能にする新しい循環型の市場経済を構築していくことが必要なのである。
生物多様性を保障するために使う指標は、生物種の減少を示すものだけでは十分ではない。グローバル市場金融経済による生態系全体の破壊傾向の規制と、この破壊傾向に抗したライフスタイルを採用する市民と地域経済の形成に関するものも含めなければならない。

(5) 伝統的な知識・工夫・慣習に学ぶ教育に基づく改革実践の必要性:
グローバル市場経済を生命系維持的経済のなかに埋め込んで、新しい多様な生命に開かれたものにするためには、生物多様性条約(第8条j項注)にあるように、生命系維持的経済を今日も維持している先住民族共同体や伝統的な「むら」共同体の知識・工夫・慣習に学び、人類と他の生命体との間のサービスの相互交換に根ざした持続可能で自立的な地域経済を形成すべきである。
そのためには、外からグローバル・スタンダードを押し付けるのでなく、ローカルな市民のライフスタイルの改革を基盤にして、国連が進めている「持続可能な開発教育」を一層重視して意識改革を図り、地域共同体の経済改革を着実に積み上げていく必要がある。

(6) 貧困の克服と地域経済の活性化に努める必要性:
先住民族の共同体や、伝統的な地域の共同体は、グローバル経済にさらされながら長年にわたり自然に身につけて来た知恵を依然として持ち続けている。アジアをはじめ、アフリカ・ラテンアメリカの農村・山村・漁村では、里山との共生などの生命系維持的経済の伝統を守り続けている。これらの経済は、自立的に再生させ、生命の多様性を損なっている均質化やグローバル化から解放しなければならない。
生命系維持的経済の再活性化を進めるにあたっては、生態系の資源がより公正に配分されなくてはならない。こうした原則は、先進工業諸国のみならず開発途上諸国においても尊重され、開発計画の中で重要な役割を果たせるよう考慮されなくてはならない。これらの地域では、住民参加により、生命系維持的経済を否定しない形での開発によって、貧困の克服と地域経済の活性化に努める必要がある。

私たち世界平和アピール七人委員会は、全ての生物種の「平和に生存する権利」に基づく倫理的・規範的基準を確立し、市場経済を生命系維持的経済に融合させる方向で、ポスト2010年に設定される行動計画・ロードマップの最終年にあたる2020年に向けて、多様な生命体の絶滅を食い止めるグローバルな経済改革を推進するよう世界各国の政府と市民に訴える。



生物多様性条約とその締約国会議
 生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)は1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択された条約の一つであり、翌1993年に発効した。日本は1992年に署名し翌年加盟した。米国は1993年に署名したが加盟していない。
この条約は、生物の多様性を「生態系」、「種」、「遺伝子」の3つのレベルで捉え、生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正な配分を目的としている。
締約国会議は、この条約の実施状況を検討するために、2年ごとに定期的に開かれている。

ラッセル・アインシュタイン宣言
 1954年の水爆実験による第五福竜丸などの被曝の意味を直視したバートランド・ラッセル、アルバート・アインシュタイン、湯川秀樹たち11人が、1955年に、人類という種の一員としての立場にたって、核兵器の発展が人類絶滅の危機をもたらしていることを説いて、核兵器と戦争の廃絶を世界、特に科学者、に訴えた宣言。1995年にノーベル平和賞を受賞した世界の科学者のパグウォッシュ会議は、この宣言を受けて誕生した。

地球憲章
 1984年に国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会)の呼びかけによって、地球規模の環境問題の解決のためには、人々の考え方、行動を変えるような哲学、倫理観、行動規範が必要だとの考えに立って、持続可能かつ平和で公正な社会を築くための価値や原則を謳い、行動指針を提示した文書。2000年に完成、発表された。

生物多様性条約 第8条(j)
「自国の国内法令に従い、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関連する伝統的な生活様式を有する原住民の社会及び地域社会の知識、工夫及び慣行を尊重し、保存し及び維持すること、そのような知識、工夫及び慣行を有する者の承認及び参加を得てそれらの一層広い適用を促進すること並びにそれらの利用がもたらす利益の衡平な配分を奨励すること。」(全文)

 PDFアピール文→ 99J.pdf

「事務局通信」 No.2 2009/10/17

2009年10月17日

▼名古屋講演会の内容固まる

恒例になった「世界平和アピール七人委員会・11月講演会」の内容が固まりました。

この委員会は1955年11月、下中彌三郎、湯川秀樹、平塚らいてうの各氏らによって設立されましたが、2004年以来、毎年、各地で講演会を開いてきました。2009年には、米国のオバマ政権発足後、大きな動きになっている核廃絶の動きを踏まえ、2010年の生物多様性条約締結国会議の名古屋開催を前に、これらのテーマを中心にして、中日新聞社、名古屋青年会議所などの協力で、名古屋で開催することになりました。

テーマは「核と命を考える」。2009年11月7日(土)18時30分―21時。会場は、名古屋市中区栄の名古屋商工会議所大会議室(500人収容)。委員全員が出席して、「平和」と「いのち」を訴えます。入場は無料。聴講希望者は往復はがきで、〒460-0008名古屋市中区栄1-15-24名古屋JC会館「世界平和アピール七人委員会講演会」係あて、10月20日までに申し込んでください。

各委員の講演は次の通りです。

・もし核武装したら(仮) 井上 ひさし
・日本の核政策への注文と期待 土山 秀夫
・七人委員会と核のない世界 小沼 通二
・いのちの多様性 武者小路 公秀
・いのちに敵対するもの 池田 香代子
 DVD「Overkilled」橋本公作品の映写も含む
・いのちを問う~枯れ葉作戦が遺したもの 大石 芳野
・宇宙・地球・生命 池内 了

なお、これに各委員が出席する関連企画計画されており、講演会前後に名古屋周辺で開かれます。

チラシ→20091107.pdf

「事務局通信」 No.1 2009/9/14

2009年9月14日

事務局通信を始めます
50年余の歴史を数える「世界平和アピール七人委員会」ですが、世の中のテンポが速くなり、委員の皆さんの活動も多彩で、みんな忙しくなりました。
なかなか見えないその活動を、広く知っていただくために、事務局がお手伝いし、ご案内をお送りすることにしました。事務局も手弁当での活動で、十分なご案内はできませんが、七人委員会と委員の活動を生かすために、参考にしてください。

・2009年を核廃絶の年に
アピールへの共感広がる
世界平和アピール七人委員会は、8月7日、通算98本目になるアピール「核兵器廃絶実現への日本の具体的行動を呼びかけるアピール」を発表しました。
この4月、オバマ米大統領は米国の最高指導者として初めて「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、行動する道義的責任」を認め、「核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意」を表明しました。

そこで求められているのは、被爆国・日本の積極姿勢です。
アピールでは、今年秋に予定されている米国政府の「核兵器態勢の見直し」(Nuclear Posture Review)に向けて、日本政府が「戦術核の一方的な削減・廃棄を進めるべきではない」とか「核兵器の先制不使用を米国が約束することは、日本の安全にとって望ましくない」とか主張していることへの異論を表明しました。
「核廃絶」は「核の傘」と「核抑止」を前提にしては成り立ちません。ぜひアピールをお読み下さい。
→ https://worldpeace7.jp/modules/pico/index.php?content_id=28

・「土山インタビュー」をお読み下さい
今年の8月、広島と長崎の原爆忌では、オバマ演説を受けながら、「核廃絶」を求める平和宣言が読み上げられました。
七人委員会の委員の一人、土山秀夫さんは、医学生として原爆を体験しました。その貴重な証言がインターネットの「日経ビジネス」に掲載されました。作曲家で指揮者の伊東乾さんの「常識の源流探訪」というコラムに掲載されたもので、伊東さんによるインタビューです。
ぜひ、ご覧下さい。
「医学生として原子野で見た長崎」
→ http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090810/202138/?P=1

「『東アジア非核圏』のEUにも勝る経済可能性」
→ http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090817/202599/?P=1

「緩やかに弧を描いて並んだ医学生たちの遺骨」
→ http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090820/202961/

・池田さんがすてきなブログを始めました
七人委員会の委員、池田香代子さんが「感じた、動いた、考えた 池田香代子のブログ」を開設しました。
→ http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/
池田さんはご存じ、「ソフィーの世界」、ケストナー、グリム兄弟などの翻訳、「世界がもし100人の村だったら」シリーズで知られる翻訳家。「できるだけ毎日更新」とのことで、7月始めに開設、時事問題はもちろん、マイケルジャクソンから、酒井法子さんの話、タヒチの「友人」(?)の話まで、幅広い楽しいブログになっています。
ぜひ「お気に入り」に登録を!

・2009年の11月講演会は名古屋を中心に…
世界平和アピール七人委員会は、1955年11月11日の発足を記念して、新体制で活動を再開した2004年以来、毎年11月に講演会を開催してきました。
今年は、11月7日(土)の午後6時30分から名古屋商工会議所大会議室で、七人委員会・名古屋青年会議所・中日新聞社主催の講演会を開きます。併せて、それぞれの委員が出席する関連講演会が6日(金)から9日(月)にかけて開かれる予定です。詳細が決まりましたらまたお知らせします。ぜひご参加ください。