2022 156J 軍事力拡大でなく外交力こそ真の安全保障である ―防衛政策の根本的転換は認められないー

2022年12月9日
アピール WP7 No.156J
2022年12月9日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

岸田文雄首相は、安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画)の改定に向けて、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を認め、2027年度の防衛予算をGDPの2%(約11兆円)とすること、そのため2023~27年度の防衛費を過去最高であった2019~23年度実績の27兆4700億円の1.5倍以上の総額約43兆円とすることを閣議決定する予定で、防衛相や財務相に指示した。
これらは、周辺国の軍備増強への対処の名のもとに、これまで国是としてきた専守防衛方針を大転換させて、攻撃兵器を装備するという軍事力拡大路線である。攻撃をうけての反撃にとどまらず、相手が攻撃準備に着手したと判断すれば、その基地も司令部も攻撃するというもので、周辺国を刺激して軍備拡大を誘発することは間違いない。これにより際限のない軍備拡充の悪循環を招く恐れがあり、戦争のリスクを増大させるものである。
現在の日本は、国家財政の巨額の赤字が累積し、少子高齢化のひずみが広がっている。エネルギー・食料の自給率も低く、国土も狭隘である。このような国が、軍事力を強化することによって安全を求め、いざとなれば戦争に訴えるという途は、国民の安全を真に保障することにはならない。
かつての日本は、国家のためとして国民と諸外国に大きな犠牲を強いてきた。敗戦を経ての反省の上に立って、日本国憲法のもとで平和主義を掲げ、対立や齟齬があった場合には外交交渉で粘り強く解決を図る路線を歩んできた。その結果として、諸外国から戦争をしない国と見られてきたのである。
今回の防衛政策の根本的転換を推進するにおいて、これが国民に対して安全・安心を強化する方策だという丁寧な説明は一切なく、諸外国の理解を得る努力をした気配もない。
私たち世界平和アピール七人委員会は、いかなる状況にあろうとも、日本として外交力によって解決を図る国であり続けることを強く求めたい。

PDFアピール文→ 156j.pdf