2019 136J 自衛隊の海外派遣を常態化してはいけない

2019年12月12日

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アピール WP7 No.136J
2019年12月12日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

年内に自衛隊艦船や哨戒機の中東派遣を閣議決定すると報じられている。この派遣計画は2019年10月18日の安倍晋三首相の検討指示によって明らかになった。7月に米国から呼び掛けられたイラン包囲の有志連合「海洋安全保障イニシアチブ構想」には参加しないが、首相の判断や国会の承認を必要とせず防衛大臣のみの判断で派遣できる「調査・研究」との名目での中東派遣である。米国とイランの緊張が高まっているホルムズ海峡までは行かないので危険はないと説明され、菅義偉官房長官は船舶防護が必要な状況ではないと言う。友好国イランに配慮すると言い訳しつつ、他方では中東問題での日米協力を確認している。
現在の対立は、5月末に米国がイラン産の原油の全面禁輸を開始したことによって引き起こされたものである。6月には日本のタンカーが、9月にはサウジアラビアの石油施設が正体不明の相手から攻撃されるなど、中東の緊張は高まってはいる。11月には7か国のみの参加による米国主導の有志連合も活動を開始した。
しかし、いまなぜ自衛隊艦船や哨戒機を「調査・研究」のために派遣しなければならないかの国民への説明は一切なされず、与党の了解だけで閣議決定を行うというのである。事態が変化すれば派遣区域も派遣目的も変更し、武器使用の制限を緩めて対処するというのだから、けじめなく既成事実が拡大されていくことになる。

このようなあいまいな自衛隊の海外派遣は、軍隊を持たず最小限の自衛に限るべき日本の行うべき活動ではない。中東のあるべき姿に向けて国際的緊張を緩和させ、危険性を除去し、安定した平和を構築するための外交面での積極的貢献と人道的支援について世界の最先端に立って活動すべきである。

PDFアピール文→ 136j.pdf