1967 45J 佐藤首相の南ベトナム訪問計画に関する日本政府への要望書

1967年7月22日

 私たちは、ベトナムでの悲惨な戦争を一日も早く終結させるため、日本政府が公正な調停者として積極的な行動をとることを切に願ってきました。ところが最近にいたり、佐藤首相は、今秋南ベトナムを公式に訪問する意向を表明されました。これは全く私たちの期待に反するものであります。私たちは、次の理由により、佐藤首相の再考を要望いたします。

 第一に、佐藤首相の南ベトナム訪問は、日本が南ベトナムへの派兵国の立場に大きく接近するという意味をもちます。

 佐藤首相は、南ベトナム訪問は和平への道を探るためである、と国会で答弁されました。しかし周知のように、これまでに一国の首脳で南ベトナムを訪れたのは、米国、韓国、オーストラリア、フィリピンの四国であり、これらはいずれも南ベトナムに派兵している戦争当事国であります。このような状況の下で、佐藤首相が南ベトナムに行かれるならば、首相の主観的意図のいかんにかかわらず、それは南ベトナムへの派兵国の立場に日本が同調したものと国際的に受取られても、やむをえないと言わなければなりません。現にソ連、北ベトナムおよび中国では、この南ベトナム訪問計画に対して強く反対する見解が発表されています。私たちは、日本はこの際、結果として南ベトナムへの派兵国とサイゴン政府とに加担するような意味をもつ行動を絶対にとるべきではないと考えます。

 第二に、佐藤首相の南ベトナム訪問は、日本が和平のために積極的役割を果すことを不可能にします。

 三木外相は、首相の南ベトナム訪問の理由を説明して、日本は消極的な中立にとどまらず積極的に和平の可能性を探求すべきである、と国会で述べられました。日本が和平のために積極的に行動すべきであるという見解には、私たちも全面的に賛成であります。しかし、和平促進の積極的役割をになうためにこそ、日本は戦争当事国の一方のみに偏ってはならないの・であります。佐藤首相が、北ベトナムをも近く訪問するなり、あるいは南ベトナム民族解放戦線との接触の道をきりひらくなりされているならばともかく、そのような計画がないままで南ベトナムのみに行かれることは、公正な調停者としての資格を、日本がみずから放棄するのに等しいと言わなければなりません。

 アジアの平和のため、また日本国民の利益のために、日本政府が現在なすべきことは、以上のような意味をもつ首相の南ベトナム訪問ではないと私たちは考えます。私たちが政府に切望したいことは、政府が去る五月十一日のウ・タント国連事務総長の和平提案の線にそって、先ず北ベトナム爆撃の停止を米国に求めること、および北爆停止を基礎に和平交渉を開始するよう戦争の当事者のすべてにはたらきかけることであります。

 以上の理由により、私たちは、佐藤首相が南ベトナム訪問の計画を取りやめられることを強く要望いたします。

1967年7月22日

世界平和アピール七人委員会

内閣総理大臣 佐藤栄作殿