2025 167J ガザの人びとの殺害と飢餓を止めるために

2025年8月29日
アピール WP7 No.167J
2025年8月29日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 髙村薫 島薗進 酒井啓子

イスラエルの攻撃を受けているガザの人々の状況は悲惨きわまりないものだ。ガザ保健省によると、2023年10月にガザでの戦闘が始まって以降のパレスチナ人の死者数は2025年7月末の段階で6万人を超え、うち子どもが1万8千人以上だという。25年1月にかろうじて戦闘停止に持ち込まれたが、3月には戦闘再開され、それ以降も犠牲者は増大し、1日の死者が100人を超える日も増えている。

さらに国際的な援助団体を排除して、イスラエルが米国の支援を受けて2025年2月に創設し、5月末から活動を本格化させた非政府組織「ガザ人道財団(GHF)」が食糧の供給を行っているがその量がまったく足りるものではなく、国連の専門家らは8月5日に連名で深刻な懸念を表す声明を出している。

ガザ人道財団(GHF)」の活動は「人道」の名にも、支援団体の名にも値するものではない。GHFは、これまでパレスチナ難民支援を担うUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)をはじめとする国連の諸機関が行ってきた支援業務を引き継ぐというが、実際にはイスラエル軍および外国の軍事請負業者が、GHFの「配給拠点」で支援を求める人びとに無差別に発砲し続けてきた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の7月末の報告によると、5月末以降、少なくとも約1400人のパレスチナ人が食料を求めて殺害されたという。とりわけ、女性、子ども、障害者、高齢者など、最も脆弱な状況にある人びとにとっては、支援にアクセスすることが著しく困難になっている。

こうした状況のもとで子どもの飢餓は深刻化し、栄養失調は5人に1人になるという。国連事務総長は8月22日の段階で、すでに飢饉(famine)というべき事態だと国際社会に訴えている。国連安全保障理事会のアメリカを除くすべての理事国は27日、パレスチナのガザ地区での飢饉の発生について共同声明を発表し、「人為的な危機だ」と厳しくイスラエルを非難している。

私たちはガザの人びとのいのちに関わる事態をどこまで知っているだろうか。とりわけ子どもたちの肉体と精神に及ぼす環境の劣悪さを知り得ているだろうか。爆撃・銃弾という恐怖と、飢餓という悲哀で子らを追い詰めた劣悪な状況は深刻だ。そして、イスラエル政府とイスラエル国防軍(IDF)は子どもたちを飢餓に落とし込み、死には至らなくても無力な状態を強い、他地域へ追いやろうとしている。そうしてガザ地域全体をわがものにしようとしている。民族浄化作戦と言わざるをえない。

とくに私たちは、イスラエルの攻撃では、救援にあたる人たちや医療関係者のほか、事実を伝えようとしている数多くのジャーナリストが攻撃されていることに注意を促したい。彼らを狙い撃ちして殺し、世界の人々に事実を隠して、飢餓と殺戮が行われていることは、国際法と人道に照らして許しがたいことである。

この地球上で生きる人間同士として、私たちと同時代に起こっているこのジェノサイドを止めるために何ができるだろうか。ガザの子どもたち、そしてかろうじて生き延びようとしている人たちのために私たちは何ができるか。微力でも考えながら声を発することはできる。ひとりひとりの声は小さくても、つながりあって声を強め、世論に訴え、自国の政府に働きかけていくことはできる。

こうした事態をよくよく承知している日本政府や日本の企業家らが、イスラエルの軍事産業やセキュリティー技術を日本に持ち込むことに積極的な姿勢を示し続けていることは理解に苦しむ。9月4日に開かれる「サイバーテック東京2025」がイスラエルの後押しになることを認めなくてはならない。軍事や安全保障で積極的に協力関係をおし進め、経済的利益を提供しようとしている国に対し、ジェノサイドを止めるよう求めることができるだろうか。
パレスチナに平和が訪れることは、ひいてはイスラエルを含む中東全体の安定につながる。戦争による軍事強国の支配の拡大を許さない方向に世界を向けていくことにも寄与できる。国際社会でそのような方向性を支持する国々は多い。日本の政府もその方向に歩を進めることができるはずだ。それは現代世界の平和に向けた大きな方向づけにもつながるだろう。

ガザの子どもを、そして苦しむガザの人びとを護るための国際的な連携に、日本の政府が積極的に加わることを求めたい。日本政府はパレスチナ国家を承認し、イスラエルが停戦を受け入れるよう国際社会に働きかけることができるはずだ。そのようにして日本の国が世界の平和への歩みを押し進めることを求めよう。

PDFアピール文→ 167j.pdf