2021年1月20日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進
・核兵器禁止条約は51ヵ国の批准を得て1月22日に発効する。日本では、この条約成立のために、被爆者を中心にして多くの国民が、各国のNGOや核実験被曝者と力を合わせて努力を重ねてきた。それにもかかわらず、日本政府は不参加を表明している。
・国連総会への日本政府提出の核兵器廃絶に向けた決議案を見れば、2017年の条約採択後になっても決議案に核兵器禁止条約について記述することがなく、共同提案国数は年々減少し、2020年12月7日の採決を見れば、共同提案国は前年の半減以下となり、可決されたとはいえ、賛成国が10か国減少という結果になっている1)。核兵器に対する方針の根本的見直しが不可欠である。
・さらに、菅義偉首相と就任後のバイデン新大統領との初の首脳会談で、日本政府が両首脳の共同声明に米国の核兵器で日本の防衛に当たることを明記するよう求める方向で調整に入ったことが1月3日に分かったと報じられている2)。これでは、菅首相が言う「立場の異なる国々の橋渡し」との整合性がとれず、世界の潮流に完全に背をむけることになる。
・米国のバイデン新大統領は、オバマ政権の副大統領退任直前の2017年1月11日に「米国は核兵器のない世界を目指し核兵器の役割を減らす必要がある」と8年間の核政策を総括しているのである3)。これでは日本政府が米国の新政権の足かせになる可能性を否定できない。
・ベルギーは北大西洋条約機構NATOのメンバーであり、国内に米国の核兵器が配備されているが、2020年10月1日に発足した7党連立政権が政策協定の中で、核兵器不拡散体制の強化方法と核兵器禁止条約が多国間核軍縮に如何なる新たな推進力を与える方法を調査することを決め、核・非核軍縮に努力することを確認した4,5)。核の傘のもとにある国の核政策にも変化の兆しが表れ始めている。
・1月12日にノルウェー・ピープルズ・エイドが発表した『核兵器禁止モニター2020』には、世界各国の核兵器禁止条約との関係が列記されている5)。日本については、第1条1e項(禁止活動を援助し、奨励し、又は勧誘すること)に違反しているとしているが、今のままでの締結国会議へのオブザーバー参加は国際的な立場から見ても可能であることが明記されている。
・私たちは、核兵器をいかなる条件のもとでも明白に否定する日本国民の大多数の考えに沿うよう、日本政府が締結国会議へのオブザーバー参加をおこない、核兵器禁止条約の署名・批准に向けて核政策を根本から転換することを求める。
註
1) 東京新聞 2020年12月8日 国連総会 日本提出核廃絶決議
https://www.tokyo-np.co.jp/article/73177
2) 産経新聞 2021年1月3日 《独自》「核の傘」日米共同声明に明記へ 首脳会談に向け、政府調整 – 産経ニュース (sankei.com)
3) 中国新聞 2021年1月8日 核なき世界追求 バイデン氏言及 副大統領時の演説 新政権控え注目 | ヒロシマ平和メディアセンター (hiroshimapeacemedia.jp)
U.S. Vice President Joe Biden on Nuclear Security – Carnegie Endowment for International Peace 2017年1月11日
4) ベルギー連立政権 連立協定「繁栄し、連帯し、持続可能であるベルギーのために」 2020年9月30日 「III 安全な国家」の「2 防衛」の中で、核兵器禁止条約を評価。協定全文 Pour une Belgique prospere, solidaire et durableは以下の報告書にある。
20200930 Rapport des formateurs def (bx1.be)
5) Nuclear Weapon Ban Monitor 2020 2021年1月12日
Nuclear Ban Monitor | Nuclear Weapons Ban Monitor
PDFアピール文→ 144j.pdf