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2022 155J 核兵器先制不使用をすべての核兵器保有国が直ちに約束するよう求める

2022年10月11日

このアピールには英文版があります。
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アピール WP7 No.155J
2022年10月11日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

現在世界は、荒廃と相互対立の激化から人類の絶滅に向かう危険性か、対立を解消して平和で安全に生きていく可能性かの、重大な岐路に立っている。
国連総会軍縮・国際安全保障委員会(第1委員会)の今期(第77期)の一般討論の初日(2022年10月3日)の会合の冒頭に行われたスピーチのなかで、中満泉国連軍縮担当上級代表(事務次長)は、「核兵器の現実的な危険」が再び世界の焦点になったと指摘し、すべての核兵器保有国に「人類を絶滅の可能性から救うため、あらゆる核兵器の先制不使用を直ちに約束する」ことを求め、ウクライナに荒廃をもたらしている無意味な戦争を終結させるよう訴えた。
これより先8月6日の広島における平和記念式典において、国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、「核兵器保有国は、核兵器の先制不使用を約束しなければならない」と訴えている。
私たち世界平和アピール七人委員会は、グテーレス事務総長と中満代表の核兵器先制不使用約束の訴えを支持し、核兵器保有国であるアメリカ合衆国、ロシア連邦、英国、フランス共和国、イスラエル国、インド、パキスタン・イスラム共和国、朝鮮民主主義人民共和国の指導者が、直ちにそれぞれ核兵器の先制不使用を約束することを求める。
私たちは、中華人民共和国が核兵器保有国のなかで唯一核兵器の先制不使用を宣言してきたことを評価する一方で、核兵器の役割の縮小から廃止、周辺国との緊張緩和・友好に向けて具体的指導力を発揮することを要請する。
さらに私たちは、日本政府が日本国民の大多数の核兵器廃絶の願いに反して核兵器への依存に固執し、米国の核兵器先制不使用方針検討に反対していると繰り返し伝えられていることを許容できない。核兵器への依存や「敵国」への先制攻撃を否定しない政策を持つ国は、他国からの核攻撃、先制攻撃の標的になることもありうる。これでは政府が国民を保護する責任を放棄し、国民を危険にさらすリスクを増大させることになる。私たちは、日本政府が軍備拡大を中心とする安全保障政策から外交努力強化の政策に抜本的に変更することを求める。

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追悼・武者小路公秀さん

2022年9月11日

2004年初めから2021年2月13日まで、委員として世界平和アピール七人委員会の活動に積極的にかかわってこられた武者小路公秀(むしゃこうじきんひで)さんが5月23日92歳で昇天されたことが公表されました。

武者小路さんは、ブリュッセル生まれで、父は後に駐トルコ大使、駐ドイツ大使を務める外交官。作家の武者小路実篤は叔父。学習院大学法学部卒業。国際政治学者になり、学習院大学、上智大学、国連大学、明治学院大学、フェリス女学院大学、中部大学、大阪経済法科大学に勤め、国連大学では副学長でした。

最晩年まで平和と人権を軸にして社会的活動を続けられた生涯でした。
世界平和アピール七人委員会一同は、心からご冥福をお祈りいたします。

2022 154J 搾取・収奪常習を問われる集団に寄生する政治家の即退場を求める

2022年8月3日
2022年8月9日修正
アピール WP7 No.154J
2022年8月3日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

去る7月8日、奈良市内で参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相が旧統一教会に恨みをもつ暴漢に銃撃されて死亡した事件は、治安の良さを内外に誇ってきた日本国民に大きな衝撃を与えた。
しかしながら凶行以上に国民を困惑させたのは、80年代、90年代に悪名高い霊感商法で社会問題化した搾取・収奪常習の宗教集団、統一教会が、名称を変えて21世紀の日本で営々と生き延びていたこと、そして親の入信で苦難の人生を強いられた子どもたちの実態が事件によって浮かび上がったことである。
逮捕された容疑者は子ども時代に母親の入信で実家が破産して以降、社会の底辺で逼塞しながら旧統一教会への恨みを募らせ続けたとされている。搾取・収奪常習の教団の信者とその家族は、その特異な価値観のせいで一般社会に受け入れられることはない。そのため二世・三世は精神的・経済的に追い詰められていることが多い。
私たち世界平和アピール七人委員会はまず、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)による欺瞞的な勧誘や高額の献金がかくも深刻な社会問題であったにもかかわらず、今日まで等閑にしてきたことに、日本国民として深く恥じ入る。そしてさらに、安倍元首相の祖父である岸信介元首相にまで遡る政治家と旧統一教会の深すぎる関係にあらためて思いをはせ、安倍元首相の国葬を含めて強烈な違和感を新たにするものである。
少なからぬ国民を脅し、騙し、強制し、多額の財産を奪い、家族を崩壊させてきた宗教団体の存在は間違いなく社会の治安をゆるがす問題であり、これを信教の自由で語ることはできない。そのような宗教団体である旧統一教会に、いま現在、元首相や現職閣僚を含む約100人の政治家が関わりをもち、選挙で多大な便宜を図ってもらっており、何が問題だと居直る者もいる。批判の的になっていた「統一協会(世界基督教統一神霊協会)」の名を隠すことになった名称変更が長年認められなかったのに、文化庁によって認められた2015年当時の文部科学大臣は、深い関係がこのたび明らかになった一人だった。選挙で勝つためには国民の苦難を顧みない政治、国民への加害をいとわぬ宗教団体に寄生する政治と言っても過言ではない。
当然ながら、弱い立場に追い込まれる国民の幸せも、公共的な意思決定を目指す民主主義も彼らの目には入っていない。安倍元首相が晩節を汚した森友問題や桜を見る会の公私混同も、またあるいは困窮者の再起を阻む日本社会の冷たさも、公共の正義を等閑視する政治がもたらした帰結である。
人間のあるべき道義として、旧統一教会に寄生する政治家の即退場を求める。

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2022 153J 平和国家として歩む――軍事力増強とは異なる道を――

2022年6月24日
アピール WP7 No.153J
2022年6月24日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

連日のロシアによるウクライナ侵攻の報道に接し、それに中国の軍事大国化の動きを重ね合わせて、日本はこれらの軍事大国に侵略されてはならない、それを阻止するためには軍事力をいっそう強化しなければならない、との声が強まっている。さらには、専守防衛では心許ない、敵の基地や指揮系統までをも攻撃できる反撃能力を保持すべきで、必要ならば先制攻撃も否定しないとの論まで打ち出されている状況である。
このような軍事力強化の動向は、これまで築き上げてきた日本の平和路線の否定にとどまらず、かえって戦争を招きかねないことを強く銘記すべきである。他方、軍事力の増強は、際限のない軍備拡張競争に陥るだけであり、国民の福祉や医療や教育予算を切り捨てての軍事予算の拡大につながることも明らかである。国民生活の基本的権利を制限しての国権優先の軍拡は国民の幸福につながらない。
日本は日本国憲法の前文と第九条のおかげで世界平和を希求する国として国際社会の信頼を得てきた。国連の安全保障理事会の非常任理事国として12回も選出されたことは、多くの国々に世界平和を牽引する役割を期待されてのことであった。私たちは日本国憲法が定めている平和を求める国という国のあり方を堅持し、国際社会における独自の地位を示し続けていくことが望ましい。
戦争は殺戮と破壊を引き起こすのみであり、いったん戦争状態に入れば理性の声は吹き飛んでしまい止めようがなくなりかねない。これを思えば、戦争に巻き込まれない日本とすることこそが最も肝要であるのは論を俟たない。そのためには、いかなる覇権主義にもくみせず、またいかなる侵略の口実も与えないことであり、粘り強く対話と相互理解を積み重ねて平和的共存を追求し続けるべきである。

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2022 152J 今こそ核戦争回避に向けて結束した行動を

2022年5月2日
アピール WP7 No.152J
2022年5月2日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナ東部に兵力を集中させたロシア軍と、NATO(北太西洋条約機構)諸国の武器援助を背景としたウクライナ軍の間の総力戦の様相を呈しており、この「戦争」が簡単には終結しないことは明らかである。
プーチン大統領が戦局を一変させることを目的として、大量破壊兵器、なかでも核兵器を使用する危険性が生じている。実際、4月27日にプーチン大統領は「外部の者がウクライナに介入し、ロシアに戦略的脅威を与えようとするなら、我々は電光石火の対応を取る」と述べ、さらに、「我々には対応手段があり、必要に応じて使用する」と付け加えており、いざとなれば核ミサイルの使用も辞さないとのプーチン大統領の威嚇・脅迫と受け取られている。
この威嚇は単なる憶測や危惧ではなく、今始まったことでもない。プーチン大統領はウクライナ侵攻開始の2月24日に、「ロシアは最強の核保有国の一つである」と言明し、3月27日にはロシア軍の核運用部隊に対して「任務遂行のための高度な警戒態勢」を命令している。プーチン大統領が、核兵器の使用を仄めかすことによって相手の反撃を抑制させ、戦況を有利に進めたいとの意向を持っていることは明らかである。そして、これらは口先だけの恫喝に留まらず、追い詰められれば核の実戦使用に手を付ける可能性がある。そうなれば世界規模の核戦争へと発展し、人類絶滅の危機と核の冬の到来に至る危険性が一気に高まる。
今、全世界が成すべきことは、プーチン大統領に核のボタンを押させないため、あらゆる手段を用いて停戦協議の場を設定することである。その場の実現には、国連を構成する大小諸国の代表が結束してモスクワへ、そしてキーウへ出かけ、プーチン、ゼレンスキーの両大統領を交渉の場につかせ、停戦協定が妥結するまで粘り強く説得し続けることである。
今こそ、誰もが核兵器の廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言の精神を改めて思い起こし、現在の事態が人類存続・地球存続の危機であるとの認識をもち、人道的立場のもとに結束して核戦争の回避に向けて行動すべきである。

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2022 151J ロシアによるウクライナへの軍事侵攻即時中止を求める

2022年2月28日

このアピールには英文版があります。
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アピール WP7 No.151J
2022年2月28日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

私たちは、ロシアがウクライナに対する軍事侵攻を直ちに中止し、ウクライナ全土から撤退することを求める。武力によって一方的に秩序の変更を求めるのでなく、立場と見解の違いは、多様性と人権を尊重する関係者間の平和的な話し合いによって解決しなければならない。
私たちは、ロシア国内での軍事侵攻反対の人たちを含めて、世界各地からの軍事侵攻反対の声に連帯する。

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