2022 154J 搾取・収奪常習を問われる集団に寄生する政治家の即退場を求める

2022年8月3日
2022年8月9日修正
アピール WP7 No.154J
2022年8月3日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

去る7月8日、奈良市内で参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相が旧統一教会に恨みをもつ暴漢に銃撃されて死亡した事件は、治安の良さを内外に誇ってきた日本国民に大きな衝撃を与えた。
しかしながら凶行以上に国民を困惑させたのは、80年代、90年代に悪名高い霊感商法で社会問題化した搾取・収奪常習の宗教集団、統一教会が、名称を変えて21世紀の日本で営々と生き延びていたこと、そして親の入信で苦難の人生を強いられた子どもたちの実態が事件によって浮かび上がったことである。
逮捕された容疑者は子ども時代に母親の入信で実家が破産して以降、社会の底辺で逼塞しながら旧統一教会への恨みを募らせ続けたとされている。搾取・収奪常習の教団の信者とその家族は、その特異な価値観のせいで一般社会に受け入れられることはない。そのため二世・三世は精神的・経済的に追い詰められていることが多い。
私たち世界平和アピール七人委員会はまず、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)による欺瞞的な勧誘や高額の献金がかくも深刻な社会問題であったにもかかわらず、今日まで等閑にしてきたことに、日本国民として深く恥じ入る。そしてさらに、安倍元首相の祖父である岸信介元首相にまで遡る政治家と旧統一教会の深すぎる関係にあらためて思いをはせ、安倍元首相の国葬を含めて強烈な違和感を新たにするものである。
少なからぬ国民を脅し、騙し、強制し、多額の財産を奪い、家族を崩壊させてきた宗教団体の存在は間違いなく社会の治安をゆるがす問題であり、これを信教の自由で語ることはできない。そのような宗教団体である旧統一教会に、いま現在、元首相や現職閣僚を含む約100人の政治家が関わりをもち、選挙で多大な便宜を図ってもらっており、何が問題だと居直る者もいる。批判の的になっていた「統一協会(世界基督教統一神霊協会)」の名を隠すことになった名称変更が長年認められなかったのに、文化庁によって認められた2015年当時の文部科学大臣は、深い関係がこのたび明らかになった一人だった。選挙で勝つためには国民の苦難を顧みない政治、国民への加害をいとわぬ宗教団体に寄生する政治と言っても過言ではない。
当然ながら、弱い立場に追い込まれる国民の幸せも、公共的な意思決定を目指す民主主義も彼らの目には入っていない。安倍元首相が晩節を汚した森友問題や桜を見る会の公私混同も、またあるいは困窮者の再起を阻む日本社会の冷たさも、公共の正義を等閑視する政治がもたらした帰結である。
人間のあるべき道義として、旧統一教会に寄生する政治家の即退場を求める。

PDFアピール文→ 154j.pdf