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島薗進さん新委員に

2017年7月27日

2017年7月20日に、2004年以来委員を務められた土山秀夫さんが辞任され、宗教学がご専門の島薗(しまぞの)進さん(上智大学教授)が委員に就任されました。島薗さんのプロフィールは
https://worldpeace7.jp/?page_id=90
をご覧ください。土山さんは同日名誉委員になられました。

2017 126J 核兵器禁止条約採択を心から歓迎する

2017年7月10日
アピール WP7 No.126J
2017年7月10日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫

 私たち世界平和アピール七人委員会は、核兵器禁止条約交渉会議のホワイト議長をはじめ、今回の条約成立に力を尽くしてきた諸国と国際赤十字、多くのNGO、そして広島・長崎の被爆者、世界各地の核実験の被害者の長年の尽力に心から敬意を表する。

この条約が国連加盟193か国の3分の2に近い賛成122票、反対1票、棄権1票で採択されたことは、核兵器廃絶に向けての大きな一歩であり、長年にわたりその実現を願い、努力を続けてきた被爆者、日本国民にとっても大きな喜びである。

 大量破壊兵器である核兵器の持つ非人道性は議論の余地がなく、放出される放射線の影響は目標にとどまらず地球全体に広がり、長期間にわたって被害を与え続ける。日本国政府が戦争で核兵器を使用された唯一の国として貢献できる機会に自ら背を向けて退席し、国連本部外で行われた核兵器保有国と核の傘に固執する少数国の会合に参加し、さらに「条約には署名しない」と改めて表明したことは、歴史に残る汚点であり、核兵器廃絶を目指す世界の人たちに対して恥ずべき行動だった。

 自らの核兵器保有と核の傘依存を続ける一方で、他国の核兵器開発の糾弾を続けることは、非難の応酬を加速させるばかりか、核兵器使用の危険性を増大させ、国民の安全保障を損なうものであって、核兵器廃絶への道ではない。私たちは、日本国政府を含む不参加国が態度を変えて、現在と将来の世代のために、核兵器のない世界を実現させるこれからの行動に参加することを求める。

PDFアピール文→ 126j.pdf

2017 125J 国会が死にかけている

2017年6月10日
アピール WP7 No.125J
2017年6月10日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫

 かつてここまで国民と国会が軽んじられた時代があっただろうか。
戦後の日本社会を一変させる「共謀罪」法案が上程されている国会では、法案をほとんど理解できていない法務大臣が答弁を二転三転させ、まともな審議にならない。安倍首相も、もっぱら質問をはぐらかすばかりで、真摯に審議に向き合う姿勢はない。聞くに耐えない軽口と強弁と脱線がくりかえされるなかで野党の追及は空回りし、それもこれもすべて審議時間にカウントされて、最後は数に勝る与党が採決を強行する。これは、特定秘密保護法や安全保障関連法でも繰り返された光景である。
 いまや首相も国会議員も官僚も、国会での自身の発言の一言一句が記録されて公の歴史史料になることを歯牙にもかけない。政府も官庁も、都合の悪い資料は公文書であっても平気で破棄し、公開しても多くは黒塗りで、黒を白と言い、有るものを無いと言い、批判や異論を封じ、問題を追及するメディアを恫喝する。

 こんな民主主義国家がどこにあるだろうか。これでは「共謀罪」法案について国内だけでなく、国連関係者や国際ペンクラブから深刻な懸念が表明されるのも無理はない。そして、それらに対しても政府はヒステリックな反応をするだけである。
 しかも、国際組織犯罪防止条約の批准に「共謀罪」法が不可欠とする政府の主張は正しくない上に、そもそも同条約はテロ対策とは関係がない。政府は国会で、あえて不正確な説明をして国民を欺いているのである。

 政府と政権与党のこの現状は、もはや一般国民が許容できる範囲を超えている。安倍政権によって私物化されたこの国の政治状況はファシズムそのものであり、こんな政権が現行憲法の改変をもくろむのは、国民にとって悪夢以外の何ものでもない。
 「共謀罪」法案についての政府の説明が、まさしく嘘と不正確さで固められている事実を通して、この政権が「共謀罪」法で何をしようとしているのかが見えてくる。この政権はまさしく国会を殺し、自由と多様性を殺し、メディアを殺し、民主主義を殺そうとしているのである。

PDFアピール文→ 125j.pdf

今月のことばNo.35

2017年6月8日

JASON機関

池内 了

 アメリカの軍事顧問団であるJASON機関をご存知だろうか?著名な科学者が何人も参加して軍事戦略や戦術について議論し、秘密報告という形で政府や軍(国防省)に提言してきた集団である。決して自らJASONのメンバーであることを名乗らないことになっていて、誰にも知られていないはずなのだが、本人が思う以上に知れ渡っているようである。
 JASONは1960年頃、米政府が設立したARPA(高等研究計画局、現在は国防省所属で国防高等研究計画局DARPAとなっている)がスポンサーとなり、マンハッタン計画に参加した「国を憂うる」物理学者たちが組織した集団である。政府や軍に自分たちの秘密報告を高く買わせるため、会員はノーベル賞受賞者、あるいはそれに匹敵するくらい著名な科学者でなければならず、会員推薦は自分たちのみで決定できるという特別の権利を保有してきた。「政府公認秘密会員制特権諮問機関」と言えるだろうか。
 JASONという呼び名は、この機関を作った物理学者マーフ・ゴールドバーガーの妻のミルドレッドが名付けたとされている。金の羊毛を求めてアルゴー船で地中海を遠征したイアソンのことで、首尾よく金の羊毛を手に入れるや、内妻であった王女メディアを捨ててコリントスの王女と結婚し、そのためメディアに復讐され、ついに命を落としたという有名なギリシャ悲劇の主人公の名前である。「アメリカを裏切るなんてことをしないでしょうね」という意味を込めて、ミルドレッドは印象に残る名前をつけたようだ。夏休みに入った7月(July)から集まり、8月(August)、9月(September)、10月(October)と議論を重ね、ようやく11月(November)になって報告書が出るためJASONさ、と煙にまく説もある。
 ベトナム戦争時にクラスター爆弾(蝶々爆弾とか親子爆弾とも呼ばれた)や電子バリア(ジャングルに通信装置をばら撒いてベトコンの通路を探る)を提案し、ケサンの戦いで小型戦術核を採用すべきとの提言を行なった(採用されなかった)。他にも(秘密報告が主なので真偽が確かめられないのだが)劣化ウラン弾の利用や農薬散布もJASONが言い出したのではないかと疑われている。
 彼らは自らを愛国者と位置づけ、おぞましい兵器や作戦を提案しながらも、「自分たちは犠牲者の数を減らした」と嘯き、「国家が困っているときに助け舟を出すのは科学者としての社会的責任」と居直る。他方、市民から非難された場合には「自分たちは単に提案しただけで、その責任は実施した軍にある」として責任逃れをする。私は、「彼らの言う社会的責任は全く的外れであり、科学に名を借りた自ら手を汚さない殺人集団」だと思っている。今もなおJASONが米軍の背後で活躍していることを時々耳にするのがおぞましい。
 軍学共同がどんどん進んでいけば、このような科学者が日本でも輩出するようになりかねない。今のうちに科学者の軍事研究の芽をつぶしておかねば、と思っている。

(注)JASONに関しての参考文献が以下にあります。ご参照ください。
    雑誌「素粒子論研究」48巻3号312〜317ページ 1973年11月20日発行
    http://ci.nii.ac.jp/els/contents110006468947.pdf?id=ART0008488615

今月のことばNo.34

2017年5月3日

朝鮮の核開発と日本の選択

武者小路公秀

 核・ミサイル開発を進める朝鮮の政策は、残念ながら間違った前提に立ったものです。
 そもそも核兵器開発は、米ソの「核競争時代」には、全面戦争以外では使えないが、より強化することで外交交渉を有利に進める「戦略兵器」として考えられてきました。その時代、核兵器は、いわば「戦略」的利用に限定され、その「戦術」的利用は抑えるという軍備管理の下で進められてきたといえます。「相互確実破壊」(Mutual Assured Destruction=MAD)と呼ばれるこの理論は、最初に核攻撃をしても、攻撃された側は、核反撃できる能力を持つため、攻撃側も破滅的な反撃を受けることになり、結局、核を使えない、という状態が出来てしまうと考えた「理論」でした。
 朝鮮が核兵器開発を始めた下敷きは、実はこの戦略でした。朝鮮は、「核を持たなければ、核大国に対抗できない。だから核開発を」と、米国との交渉を有利にしようと核開発をすすめたのです。国際政治の場で見ると、このことだけ捉えれば、朝鮮の核開発も、米国の核攻撃への反撃を準備しているわけで、すぐケシカランということにはなりません。
 しかしその後、大国間では、戦術核と戦略核との区別をしない傾向が強まり、戦略核だけでなく、戦場で使える小型の戦術核兵器の開発が進みました。いまでは、簡便で小型な核兵器が製造されてきています。オバマ大統領は退任直前「核の先行不使用」宣言をしましたが、核兵器を専ら戦場で使う戦術兵器とみなす傾向は、今日の米国を支配しています。
 ところが、朝鮮はその点を計算に入れず、米国の核と互角の能力を持つことを考えた核開発を進めています。つまり、朝鮮の政策は、全く今日の国際社会では通用しない、大変な誤算に基づいた政策です。大国の核のバランスで平和を保つとされた時代は終わり、核を持つ国も増えてきています。第一、米朝間には、相互確実破壊戦略の下で戦争を避けようという了解は存在しません。むしろ、小国であれ、大国であれ、核兵器が使用されれば、事態は関係国だけでなく、人類全体を巻き込むことになってしまいます。
 トランプ大統領は、核兵器を平和交渉の基盤にする知恵は持っていないようで、むしろ、核を「戦術兵器」のひとつと考えているようです。ですから、トランプと同じ立場に立つ、という安倍首相は、とんでもない物騒な考え方だと言えるでしょう。
 日本は今、4つの核武装国家に囲まれています。その中で、トランプの米国の「核の傘」の下にいることは、見当違いで危険な政策です。それは結局、危険な核戦争を朝鮮にけしかける、米国の危険な「賭け」を支持することにもなりかねないのです。
 日本はいま、中国とロシアとともに.近い将来、韓国も選ぶ対話・交流の太陽政策で、米国と朝鮮との対話の準備をすべきです。反テロ戦争や朝米軍事対決で私腹を肥やす軍・産・官グローバル勢力がたきつける「武装のもとでの積極平和」を否定しましょう。
 日本は、武力を前提にした「殺人国家」に代わり、武力を否定する「活人国家」になるほか、生き残ることが出来ません。それが日本の「世界的な使命」を全うする道です。
 世界終末時計の針が2分30秒前になっているいま、人類の希望を担う近代国家の非軍事化の先鞭をつけるのは、かつて植民地主義侵略国であった日本の反省を生かす「和解の道」でもあります。
 沖縄の同胞は、すでにこの道を選び、辺野古で闘っています。同じ道を歩みましょう。