伝えられるところによると政府が近くアメリカ原子力潜水艦の寄港を受諾するという。この問題については昨年一月から各方面で一年八ヵ月にわたり論議されており、とくに潜水艦の廃棄汚染物が安全かどうか論議されてきた。
昨夜(二十六日)権威ある原子力委員会では受諾しても差しつかえないという結論をだしたときくが、その内容についてまだ見ていないし検討もしていないので批判は避けたい。こんどの原子力委の決定は、まだどんな根拠、経過で行なったかわからないし、多くの専門学者にとって批判の余地があるものと思う。
こうした問題は専門学者が十分論議し国民が納得したうえで決定すべきで、国民の大部分が納得してないもとで受諾することは適当ではないし、無益な対立を生ずる。それにインドシナなどで国際情勢が緊張しているおり、日本が原子力潜水艦の寄港を受諾することは国際的にも誤解を招き時期としても適当でない。
政府は正式受諾決定まで慎重な行動をとるよう心から要望してやまない。
(1964年8月28日付読売新聞)