2024 160J これでも原発推進を続けるのか

2024年3月9日
アピール WP7 No.160J
2024年3月9日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進 酒井啓子

福島第一原発事故から13年、節電による電力需要の減少と再生可能エネルギー、特に太陽光発電の大幅な普及により、原発再稼働が進まない現状でも、日本は冷暖房を使わない季節を中心に電気が余るようになった。朝日新聞(2024年2月10日)の集計では、23年度に出力制御(発電量と使用量のバランス調整のために発電を一時的に止めること)により捨てられた電力量は19・2億キロワット時と急増し、これは約45万世帯分の年間消費電力量に相当する。

出力制御は、日本では最初に火力発電を止め、次に太陽光・風力発電を止め、原子力と水力・地熱には手をつけない。そのため電力自由化で全国に誕生した新電力事業者は、出力制御の急増により、せっかく発電した電気が売れなくなっている。また電力会社による再生可能エネルギーの23年度の買取り価格は、化石燃料価格の上昇が影響して22年度の価格の4割に急減している。これらによって経営が圧迫され、事業の存続が危ぶまれる業者が出てきている。これは脱炭素の世界の潮流に逆行する事態である。なお、フランスでは原発も出力制御の対象となっているのだから、日本でも原発の出力調整を行い、再生可能エネルギー育成を強化すべきである。

このように電気が余る時代に、安価になった再エネの普及拡大を犠牲にしてまで高価な原発を優先する合理的な理由はどこにもないが、それ以上に日本の原発はとても推進を掲げられる状況にない。たとえば、未だに廃炉の見通しもたたない福島第一原発では、今年2月にも汚染水浄化装置から高濃度の放射性物質を含む水漏れが発生し、この期に及んで作業手順や安全対策を定めた「実施計画」違反が指摘されている。

また、日本原燃の六ケ所再処理工場は今年1月、27回目となる完成延期を発表し、計画継続の合理性はなく、原発を稼働させても使用済み燃料の行き場がない状況がいつまで続くのか、もはや誰にも分からなくなっている。核燃料サイクルはとうの昔に破綻しているのである。さらに核廃棄物の最終処分場に至っては、名乗りを上げている候補地はあるものの、現時点で知事が受け入れ反対を表明している以上、概要調査にもこぎつけられないだろう。

そしてこの国で、原発の稼働をもっとも非合理なものにしているのが東日本大震災をはじめ各地で続く地震である。今年元旦、震度7を記録した能登半島地震では、土地の烈しい崩落や隆起により、半島のいたるところで道路が寸断され、自衛隊も他府県の消防隊もすぐには救援に入れなかった(中日新聞2024年3月5日)。発生から8日目で、なおも24地区3千人超が孤立状態だったとされる。被害が大きかった珠洲市に原発を設置する計画はかろうじて地元住民の反対で実現しなかったが、僥倖だったと言わざるをえない。

今回の地震のとき停止中だった北陸電力志賀原発で、外部電源5系統のうち2系統が失われるに留まったのも偶然にすぎない。もし放射能漏れ事故が起きていたら、唯一の避難路である県道も通行できず、30キロ圏内に住む15万人の住民の多くが逃げられなかっただろう。また多くの家屋が倒壊していたために屋内退避も出来なかった人たちがいたのだから、放射性物質が拡散するなかで住民はまったく為すすべがなかったことになる。

これは、原子力災害時の住民保護の大前提があっけなく崩れたことを意味する。能登半島と同様に地震で孤立する恐れのある地域は、内閣府(防災担当)の調査(2014年1月22日発表)では中山間地を中心に全国で2万カ所に上る。もしもの場合に避難も退避もできない究極の悪夢を幻視させた能登半島の経験を、地震国に住むわれわれ全員が共有しなければならない。

それでも原発依存・推進を続けるというのであれば、再生可能エネルギーの開発・利用について諸外国との差はますます拡大し、解消できなくなるだろう。原発の再稼働、新増設や40年までだったはずのものを60年超まで運転するなどという政策は直ちに撤回すべきである。

PDFアピール文→ 160j.pdf