今月のことばNo.50

2020年4月22日

借金の前に防衛予算も含めた節減と繰り延べの財源による経費捻出を

小沼通二

韓国の中央日報の日本語版の記事を知人が教えてくれた。題は「韓国政府、借金せずに7兆ウォンの災害支援金どこから引っ張ってきたか」(2020年4月19日)となっている。全文が次のサイトに公開されている。

韓国政府、借金せずに7兆ウォンの災害支援金どこから引っ張ってきたか(中央日報)

韓国政府の「国の財政がぎりぎりなので借金をこれ以上増やさない」という当初の方針の下で、緊急災害支援金支給を政府(82%)と自治体(18%)が分担し、政府分担の7兆6000億ウォン(約6711億円)をどのように調達したかが説明されている。
韓国政府は、公務員の経費削減、鉄道投資事業の削減や先送りなどとともに、国防予算を9000億ウォン削減するというのである。対象には、F-35Aステルス戦闘機、海上作戦ヘリコプター、広開土3イージス艦事業などが含まれた。F-35購入費などの執行の先送りもある。戦力低下の懸念が出ているが、国防部は「海外導入事業予算が削減されても兵器戦力化スケジュールに支障はない」と説明したと書かれている。
私たち、世界平和アピール七人委員会は、4月13日に「ウイルス禍とのグローバルな闘いを通じて平和を」を発表した。そこに「軍事力拡充の野心を放棄すれば、軍事費をウイルスとの闘いや気候危機の克服に振り向けることができる」と書いたのは、防衛予算を年々増やしてきた政府とそれを認めてきた国会、さらにそれを支持してきた国民に、経費が不足すれば国債発行でという方針を根本的に考え直してもらいたいと考えたからだった。意見を言うことのできない将来世代からの借金である国債が既に異常な多額になっている日本である。削減、延期できる項目は全て新型コロナウイルス感染症対策に速やかに回して、全力を挙げて収束させるのでなければ、将来の国力、経済力への打撃も大きくなる。 小出しの遅れる対策の繰り返しは、収束を遅らせるだけである。
世界的な感染症の広がりであるパンデミックは、すぐに頭に浮かぶだけでも、黒死病といわれた14世紀のペスト、スペイン風邪といわれた米国起源の100年前のインフルエンザ、2002~03年のSARS(重症急性呼吸器症候群、severe acute respiratory syndrome)、2012年にロンドンで発見され、中東で猛威を振るい、2015年には韓国で感染・死亡が広がったMERS(中東呼吸器症候群 、Middle East respiratory syndrome )など、繰り返されてきた。
変種を繰り返すウイルスにはヒトの体内で増殖するものがあるので、人類はウイルス感染症と付き合い続けなければならない運命にある。七人委員会のアピールで触れた気候危機も人類全体として対処していなければならない。これらに比べて戦争は人が起こすものである。それならば、外交力を強化して、軍事費を削減することができるはずである。これがアピールの元になる考えだったのだが、実際に行動に移す国が既に出ているのだから、日本も世界の進展から遅れてはならない。
(2020年4月22日記)