2020 139J 米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備に反対する

2020年2月10日

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アピール WP7 No.139J
2020年2月10日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

私たち世界平和アピール七人委員会は、米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備が核兵器使用の危険性を高めることを危惧するので、配備に反対し、米国を含むすべての核保有国が核兵器の削減と廃棄への道を進むことを求める。
米国防総省は、低出力の核弾頭W76-2を潜水艦発射弾道ミサイルに装備していることを2月4日に初めて発表した。これはトランプ政権の2018年の「核態勢見直し」の方針に沿うものであって、アメリカ科学者連盟のサイトに1月29日に掲載された論文「米国が新たに低出力潜水艦用核ミサイルを配備」と符合するものである。
この論文などによれば、米国が保有する14隻の戦略原子力潜水艦はそれぞれ20基の弾道ミサイルを搭載してきたが、この弾頭は爆発力が90キロトンの水爆W76-1、あるいは455キロトンの水爆W88だった。これらの原子力潜水艦の一つであり大西洋岸の基地に所属するテネシーに、昨年5キロトンといわれる低出力核弾頭W76-2を1、2基初めて装備した。W76-2は、W76-1を改造して水爆の起爆装置としての原爆部分だけを爆発させるものだとされる。そして昨年末から「テネシー」が隠密裏の哨戒任務につき、1月11日に帰港したというのである。
米国防総省は、米国と同盟国がいかなる攻撃を受けても速やかに応じられる態勢が整ったので、抑止力が高まったという。
しかし、潜水艦の隠密性は地上発射ミサイルより、また戦略爆撃機よりはるかに高い。いかなる場合にも速やかに対応できるということは、先制攻撃にも使えることを意味する。これまでも判断の誤りがあったこと、さらに米国が非核兵器攻撃に対して核兵器を使うことがあるとの政策を持ち、核兵器の第一撃も否定していないことを考えれば、今回の措置は明らかに核兵器使用の危険性を増大させるものである。そして広島・長崎を攻撃した原爆より爆発力が小さいといっても、いったん使用されれば放射性物質は全世界を覆うことになり、爆発力のより大きい核兵器の使用への道をひらくことにもなる。
核兵器は非人道的であり、いかなる場合の使用と威嚇も禁止すべきであることは、被爆者をはじめとする日本国民大多数の考えであり、世界各地の核実験の被害者や核兵器禁止条約の賛同国をはじめとするグローバル市民社会の世論でもある。昨年日本を訪問したローマ教皇フランシスコの訴えもこれと軌を一にするものであったことは記憶に新しい。米原子力潜水艦への新たな配備は、今年発効から50年を迎える核不拡散条約の核兵器保有国の義務にも明白に違反するものであり、決して見過ごすことができるものではない。

PDFアピール文→ 139j.pdf

註:アピール139Jの発表文の8行目に誤りがありましたので訂正しました。 2020/2/14
誤 24隻の戦略原子力潜水艦
正 14隻の戦略原子力潜水艦