世界平和アピール七人委員会は11月17日(土)、高知市の県民文化ホールで「改憲をさせないために何ができるか」 をテーマとする2018年講演会を開いた。こうち九条の会、女性「九条の会」高知との共催になったことから、講演会には「憲法公布72周年県民のつどい」の名称がかぶせられた。会場は、こうち九条の会、女性「九条の会」高知の会員ら約400人の参加者で埋まった。
講演会は、こうち九条の会共同代表の青木宏治氏の開会あいさつで始まり、次いで、池内了委員が七人委員会の歴史と活動を紹介。その後、大石芳野委員が「踏みにじられる人々の思い」、髙村薫委員が「誰も騙されてはならぬ」、武者小路公秀委員が「新冷戦 二つの積極的平和主義を否定するトランプ『アメリカ第一主義』」、小沼通二委員・事務局長が「過去に戻らず、未来を拓くために」との演題でそれぞれ講演した。
大石委員は、戦地や紛争地で負傷した子どもたちや難民となった人たちの写真を紹介し、「戦火に見舞われた国々に、もし日本国憲法の第9条のようなものがあったならば、この子たちは親や愛しい人を失うとか、武器で怪我をするなどの心身の傷を受けずに済んだだろうに……との思いを繰り返しながら付き合ってきました」「ところが今や、憲法をめぐる論議に揺れています。これまで当たり前のようにあった、戦争をしない、人権を守るといった生きることに必要な最低限の保障が変えられようとしているのです。こうした日本の現状をアジア諸国の人びとも強い関心を持って見守りつつも、また戦前のような状態になりはしないかと心配しています」と訴えた。
髙村委員は「改憲を阻止するにはどうしたらいいか」と切り出し、「それには、二通りの道があり、一つは安倍内閣を打倒すること、もう一つは改憲をめぐる国民投票で自民党の改憲案を否決することだ」と述べた。その上で「安倍内閣を倒すには、支持率を下落させればよい。が、これは容易なことではない。なぜなら、安倍内閣がどんなにウソをついても、これを支持する人がいまなお4割もいるからだ。これは、多くの人が安倍内閣のウソと不実にいまだに気がつかないためである」「改憲問題でも、安倍首相は9条の2項(戦力不保持と交戦権否認)を残して自衛隊を明記するだけ、と言っている。しかし、これは、子どもでも分かる矛盾」「安倍内閣を支持する人たちに、今こそ、安倍内閣に騙されぬな、と働きかけなくては」と話した。
武者小路委員は「トランプ大統領のもとで米国が打ち出した戦略は、核兵器を実戦に適するようにするために、その小型化を進めて潜水艦に搭載することだ」と指摘し、これにより、太平洋・インド洋と地中海・大西洋で米対中ロの海洋核軍拡競争を中心とする「新しい冷戦」が始まるだろうとの見方を示した。そして「米国と西欧と日本の市民は、一致・協力して、地球上の生命を全滅させかねない新冷戦に抵抗すべき時がきている」と述べた。また、「『アメリカ第一主義』のもとで、世界各地域でのマイノリティや先住民族や、移住労働者や難民を差別主義や憎悪扇動の対象とする世界規模の新しいファシズムが台頭していることを確認しよう」と話した。
小沼委員・事務局長は、第1次世界大戦終結以来の戦争廃絶への流れとヒロシマ・ナガサキ以来の核兵器廃絶への流れを紹介した後、「今、われわれは何ができるか」と問いかけ、①相手の立場に立って考える②現政権のもとでの憲法改定への動きと憲法空洞化が日本を弱体化していることを直視する③少子高齢化・慢性財政悪化・国土狭溢の日本の軍事化の現実性を確かめる④被占領国意識を脱却し、安保条約と行政協定の不合理を直視する⑤世界の潮流を見据えて、他国が脅威を感じない国にするために抜本的な路線見直しを行う⑥すべての変革は少数派が支持を広げた結果であり、あきらめることなく、自信を持って着実に進む、などの諸点の実践を呼びかけた。
休憩後、池内委員の司会で、大石、髙村、武者小路、小沼の4委員によるパネル討論が行われたが、冒頭、池内委員の発言があり、その中で、池内委員は、安倍政権になってから世界の趨勢に逆らって防衛予算(軍事費)が年々大幅に増えていること、防衛省と企業による共同の軍事研究が拡大しつつあることを明らかにし、「こうした事実に警戒心を強め、反対の世論を盛り上げよう」と呼びかけた。
閉会あいさつは、こうち九条の会事務局長の谷脇和仁氏。同氏はその中で「私たちは、きょう、さまざまなことを学んだ。きょうを新たなスタート点にして、現在全国で取り組んでいる“安倍9条改憲NO! 憲法を生かす3000万人署名”をなんとしてもやり抜こう」と訴えた。