2016 119J 朝鮮民主主義人民共和国の核兵器実験と衛星打ち上げに際し、緊張緩和へのすべての関係者の努力を求める

2016年2月10日
アピール WP7 No.119J
2016年2月10日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、1月6日に第4回核爆発実験を行い、2月7日に地球観測衛星「光明星(クァンミョンソン)4号」を地球周回軌道に打ち上げたと発表した。
 私たち世界平和アピール七人委員会は、10年前に北朝鮮が行った最初の核兵器実験に際し、2006年10月11日にアピールを発表し、いかなる核兵器実験も行うべきでないと北朝鮮に求めた。それとともに、核兵器保有国と、依存国の根本的政策転換と、速やかな核廃絶を実現させるためのあらゆる努力を要望した。今日この考えにいささかの変更もない。
 北朝鮮の核兵器開発をやめさせようとするこれまでの国際的努力は、ことごとく成功しておらず、その間に核兵器能力が強化されてきた。単に非難決議を繰り返すだけでは、今後も同様の失敗が続くだろう。現在、国際社会においては核兵器の非人道性の認識がますます広がっており、2015年の国連総会で設置が決まった「核軍縮に関する国連作業部会」は今月中にジュネーブで開幕される。設置決議に棄権した日本政府も、最近参加を決めた。日本が自ら核の傘への依存から抜け出す具体的な方策を示すことができれば、国際社会における発言力が格段に増大し、北朝鮮に核兵器を放棄させ、核兵器廃絶に努力する国の一員として核兵器禁止条約に向けてともに歩むよう呼びかける説得力が増すことになる。
 一方人工衛星は、国際宇宙ステーションへの物資運搬と宇宙飛行士の派遣や核弾道ミサイルと同じ技術のロケットによって大気圏外に打ち上げられるものである。逆に国際宇宙ステーションからの帰還と核弾道ミサイルは、同じ大気圏への再突入技術によって実現される。多段式ロケットは、燃料タンクを使用し終われば分離して計画的に落下させるものであり、落下に際して船舶や航空機に被害を与えないよう、「国際海事機関」(IMO)、「国際民間航空機関」(ICAO)などに打ち上げの事前通告することも常時行われている。平和目的の衛星打ち上げはいかなる国も保有する権利である。しかし、たとえ平和目的であっても宇宙の研究・開発・利用は、技術的にみれば軍事利用能力のレベルを示すものであることも事実なのだから、いかなる国も国際理解と協調の下で進めるべきなのである。
 日本では北朝鮮の「衛星」を弾道ミサイルと呼び、防衛大臣が「破壊措置命令」を出し、安倍首相は「容認できない」、「独自の制裁措置をとる」と発表し、官房長官も非難・抗議した。ほとんどのメディアも、一方で恐怖をあおり、その一方で能力を過小評価している。しかし、対立のなかでの過剰反応では、北朝鮮の軍事能力の強化を止めることはできない。また、日本が防衛能力の強化で対抗することも、技術的困難さがあるだけでなく、相手の攻撃能力の増大を引き起こし、ひいては武力衝突の危険性を高めるだけである。国連加盟国、特に日本を含む周辺国は、北朝鮮を孤立させる方向でなく、紛争はすべて話し合いによって解決するという国連の本来の精神に基づいて北朝鮮との対話によって緊張緩和への努力を重ねるべきである。日本は、日本国憲法の戦争放棄の基本理念を堅持するだけでなく、世界に広げ、戦争をしない国を増加させることに貢献すべきなのである。

PDFアピール文→ 119j.pdf