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2022 153J 平和国家として歩む――軍事力増強とは異なる道を――

2022年6月24日
アピール WP7 No.153J
2022年6月24日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

連日のロシアによるウクライナ侵攻の報道に接し、それに中国の軍事大国化の動きを重ね合わせて、日本はこれらの軍事大国に侵略されてはならない、それを阻止するためには軍事力をいっそう強化しなければならない、との声が強まっている。さらには、専守防衛では心許ない、敵の基地や指揮系統までをも攻撃できる反撃能力を保持すべきで、必要ならば先制攻撃も否定しないとの論まで打ち出されている状況である。
このような軍事力強化の動向は、これまで築き上げてきた日本の平和路線の否定にとどまらず、かえって戦争を招きかねないことを強く銘記すべきである。他方、軍事力の増強は、際限のない軍備拡張競争に陥るだけであり、国民の福祉や医療や教育予算を切り捨てての軍事予算の拡大につながることも明らかである。国民生活の基本的権利を制限しての国権優先の軍拡は国民の幸福につながらない。
日本は日本国憲法の前文と第九条のおかげで世界平和を希求する国として国際社会の信頼を得てきた。国連の安全保障理事会の非常任理事国として12回も選出されたことは、多くの国々に世界平和を牽引する役割を期待されてのことであった。私たちは日本国憲法が定めている平和を求める国という国のあり方を堅持し、国際社会における独自の地位を示し続けていくことが望ましい。
戦争は殺戮と破壊を引き起こすのみであり、いったん戦争状態に入れば理性の声は吹き飛んでしまい止めようがなくなりかねない。これを思えば、戦争に巻き込まれない日本とすることこそが最も肝要であるのは論を俟たない。そのためには、いかなる覇権主義にもくみせず、またいかなる侵略の口実も与えないことであり、粘り強く対話と相互理解を積み重ねて平和的共存を追求し続けるべきである。

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2022 152J 今こそ核戦争回避に向けて結束した行動を

2022年5月2日
アピール WP7 No.152J
2022年5月2日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナ東部に兵力を集中させたロシア軍と、NATO(北太西洋条約機構)諸国の武器援助を背景としたウクライナ軍の間の総力戦の様相を呈しており、この「戦争」が簡単には終結しないことは明らかである。
プーチン大統領が戦局を一変させることを目的として、大量破壊兵器、なかでも核兵器を使用する危険性が生じている。実際、4月27日にプーチン大統領は「外部の者がウクライナに介入し、ロシアに戦略的脅威を与えようとするなら、我々は電光石火の対応を取る」と述べ、さらに、「我々には対応手段があり、必要に応じて使用する」と付け加えており、いざとなれば核ミサイルの使用も辞さないとのプーチン大統領の威嚇・脅迫と受け取られている。
この威嚇は単なる憶測や危惧ではなく、今始まったことでもない。プーチン大統領はウクライナ侵攻開始の2月24日に、「ロシアは最強の核保有国の一つである」と言明し、3月27日にはロシア軍の核運用部隊に対して「任務遂行のための高度な警戒態勢」を命令している。プーチン大統領が、核兵器の使用を仄めかすことによって相手の反撃を抑制させ、戦況を有利に進めたいとの意向を持っていることは明らかである。そして、これらは口先だけの恫喝に留まらず、追い詰められれば核の実戦使用に手を付ける可能性がある。そうなれば世界規模の核戦争へと発展し、人類絶滅の危機と核の冬の到来に至る危険性が一気に高まる。
今、全世界が成すべきことは、プーチン大統領に核のボタンを押させないため、あらゆる手段を用いて停戦協議の場を設定することである。その場の実現には、国連を構成する大小諸国の代表が結束してモスクワへ、そしてキーウへ出かけ、プーチン、ゼレンスキーの両大統領を交渉の場につかせ、停戦協定が妥結するまで粘り強く説得し続けることである。
今こそ、誰もが核兵器の廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言の精神を改めて思い起こし、現在の事態が人類存続・地球存続の危機であるとの認識をもち、人道的立場のもとに結束して核戦争の回避に向けて行動すべきである。

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2022 151J ロシアによるウクライナへの軍事侵攻即時中止を求める

2022年2月28日

このアピールには英文版があります。
英文アピールはこちら

アピール WP7 No.151J
2022年2月28日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

私たちは、ロシアがウクライナに対する軍事侵攻を直ちに中止し、ウクライナ全土から撤退することを求める。武力によって一方的に秩序の変更を求めるのでなく、立場と見解の違いは、多様性と人権を尊重する関係者間の平和的な話し合いによって解決しなければならない。
私たちは、ロシア国内での軍事侵攻反対の人たちを含めて、世界各地からの軍事侵攻反対の声に連帯する。

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2021 150J 2022年を日本政府が核兵器廃絶に踏み出す年に!

2021年12月27日
アピール WP7 No.150J
2021年12月27日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

2022年に入るとすぐ、1月4~28日に核兵器不拡散条約(NPT)の第10回運用検討会議が予定されており、続いて核兵器禁止条約の第1回締結国会議が3月22~24日に開催されることになっている。

核兵器不拡散条約は、国連加盟国193カ国のうち、189カ国が参加している普遍的な条約である註。これまで核兵器保有国は、第6条の「各締結国は、核軍備競争の早期停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、・・・誠実に交渉を行うことを約束する」との規定の交渉を全く実施してこなかった。2015年の第9回会議では、議長の最終文書案を、中東非大量破壊兵器地帯構想に反対する米国ほか数カ国が拒否して、採決できないまま終了した。

核兵器使用が非人道的であることは、日本政府も含めて、世界で認められている。核兵器の使用を確実に防ぐ唯一の方法は核兵器の廃絶である。日本政府は 核兵器の廃絶を目指し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しの役を果たすと繰り返し言明してきた。岸田文雄首相は、『核兵器のない世界へ』と題する著書まで出して、「核兵器のない世界」に向けて国際的な取り組みを主導していくという固い決意を表明している。
そうであれば、現実がむずかしいといって何もしないのではなく、自らが核兵器に依存して安全を求める政策と決別し、双方と積極的な対話を行い、解決への糸口を探し、解きほぐしていくことから進めるべきである。

私たちは、今回の会議においては、「締結国が次回の運用検討会議までに誠実にかつ積極的にこの第6条の約束に従った交渉を行い、成果報告を行う」ための具体的な合意が得られるよう、日本政府が主導することを求め、会議が必ず最終合意に達することを求める。

 また、3月の核兵器禁止条約締結国会議にはNATO加盟国であるノルウェーとドイツがすでにオブザーバー参加を表明しており、対話が始まることは明らかなのだから、橋渡し役を自認する以上、日本もオブザーバーとして参加しなければならない。

私たち世界平和アピール七人委員会は、新しく迎える年を、核兵器廃絶を確実に進める節目の年とするよう呼びかける。

註 イスラエル、インド、パキスタンは、NPTに加盟していない。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、2003年1月に脱退の自動的且即時発効を通告した。

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2021 149J 「民主主義の危機」を克服するために

2021年10月18日
アピール WP7 No.149J
2021年10月18日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

岸田文雄首相は9月29日の自民党総裁選挙で勝利が決まった直後の記者会見において、「今まさにわが国の民主主義そのものが危機にある」と述べた。果たして、この発言は彼の真意からのものであろうか。

2012年以来の安倍政権、菅政権では、首相が不正に関わっていても疑惑をはらすことができず、公共的な組織に対する不当な抑圧や、公私をわきまえない利益誘導をおこなう暴挙が相次いだ。そして、それらに対する説明は拒否し、批判には応答しないということが繰り返された。何より、国会においてその都度論議すべきであったのに、開催自体を拒否し続けた。このように政治の最高責任者が、意思決定の根拠を説明して国民に理解を求めることを拒否するのは民主主義の基本的条件を否定するものである。「国民の声が政治に届かない」事態が繰り返されたのである。

岸田新首相の10月8日の所信表明演説では、これまでの政権に問われてきた問題・疑惑に一切触れなかった。「丁寧な対話」といいながら、総選挙を前にして、国会においては代表質問だけにとどめ、与野党間の論議を行う姿勢を見せなかった。これでは「民主主義の危機」にまともに向き合っていく意思があるとは思えない。9年間に及んだ安倍政権、菅政権が繰り返し強権を振りかざし、異論を無視してきたことに対する国民の批判に、首相は正面から応えて、名目だけにとどまらない「民主主義の危機」の克服に努めるべきである。

国民の国政参加の重要な機会である総選挙における投票率の低迷とその背後にある無関心は、民主主義の危機をもたらしている重要な要因の一つである。国民一人一人が、現在問われている国政のあり方に思いをいたし、投票を通して積極的に意思表示されることをわたくしたちは願っている。

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